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2007年 3月分 vol.1
長期滞在飛行士の資質とは。若田宇宙飛行士の場合。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 日本人が初めて国際宇宙ステーションに長期滞在することが決まった。若田光一宇宙飛行士だ。早ければ2008年秋以降、3ヶ月間。日本実験棟「きぼう」の組み立て、立ち上げ作業を行う。若田飛行士にとっては96年、2000年のシャトルでの宇宙飛行に加えて3回目の宇宙。5才の頃にアポロ飛行士の月面着陸を見て宇宙に「手の届かない憧れ」を感じた男の子が、努力の末に「憧れ」を「現実に」変えた。

2000年の宇宙飛行の時の若田光一宇宙飛行士。まだ人が住んでいない頃の宇宙ステーション。野口飛行士曰く「宇宙ステーションの最初と最後を見る飛行士も珍しい」。(NASA)  若田さんの印象と言えば、いつもニコニコして「こんにちは!」と明るく挨拶をしてくれる人。一緒にいて楽しくて、常に前向きな人。もの凄い努力家。NASAでロボットアームで一番の腕を誇り技術的にもピカイチなのに加えて、このキャラが大抜擢された理由じゃないだろうか。記者会見でも、長期滞在クルーに求められる資質を聞かれて「閉鎖空間で数ヶ月くらすにはチームワークが非常に重要。リーダーシップとフォロワーシップ(従っていく能力)が求められます」と若田さんは話していた。

 長期滞在に備えてNASAは山で重い荷物を背負って縦走するなど、ストレス環境下での訓練を行っている。2006年夏にはフロリダ州沖の海底研究室で1週間生活する訓練(NEEMO)に若田さんはコマンダー(機長)として6人のチームを率いた。「このNEEMO訓練を通して、セルフケアとバディケア(自分と相手の面倒を見る)の能力が培われたのでは」と若田飛行士のバックアップに選ばれた野口飛行士は言った。フォロワーシップ、バディケア。新しい言葉ですね。つまり「自分が!」って自己主張ばかりしても駄目。時に相手に従うのも能力。自分の面倒は見て当たり前、人の事まで気遣って一人前。

 では若田さんってどんな人なんでしょうか。1963年埼玉県大宮市生まれ。ご両親が九州出身で里帰りなどで飛行機に乗ることが多く、大の飛行機好き。小学校からリトルリーグに入り野球に熱中。中学2年生の時にアメリカに約1ヶ月ホームステイし、英語が話せずショックで帰ってすぐにNHKの英語会話を開始。大学1年まで継続!(このあたりが普通じゃない)。大学は航空工学を勉強したいと九州大学に。鳥人間やハングライダーに熱中。卒業後は、日本航空に入社。そして1992年に372人の中から宇宙飛行士候補者に選ばれる。宇宙飛行士に選ばれた時「自分のどんなところが他の人より評価されたと思いますか?」と聞いたら「どこでも寝られること」と答えてくれたのが、印象に残っている。

 さて、国際宇宙ステーションの建設もいよいよ大詰めを迎える。「きぼう」の組み立て後、2009年ごろから滞在できる飛行士は現在の3人から6人に増える。となると日本人宇宙飛行士が滞在できる日数も増えるわけで、今のところ「年間162日」の滞在権があるらしい。また宇宙飛行士の募集が行われるかもしれないですね。

 記者会見で若田さんが語った言葉が今も耳に残る。「がんばれば、どんな仕事にだってつけるんだということを子ども達に伝えたい」。宇宙飛行士に限らない話だなぁ。がんばろっと。