スペースシャトル・ディスカバリー号が10月25日深夜(日本時間)、ドッキングした。今回のミッションの注目は、スペースシャトルの船長も、宇宙ステーション(ISS)滞在チームの船長もどちらも女性だということ。ドッキングシーンは、宇宙で待つ女将ペギー・ウィットソンが、地上からやってきたパメラ・メルロイ船長ら訪問客を一人ずつ優しく抱擁。ハイテク機器が並ぶハードなISS空間に、まるで地上の知人宅を訪れた家族同士のような、アットホームな雰囲気が漂い、笑い声が弾む。
ペギー・ウィットソンは1960年、アメリカ・アイオワ州生まれの47歳で生化学博士。1989年からNASAで様々なシャトルミッションの生医学実験プロジェクトに携わり、1996年に宇宙飛行士に。そして初飛行は2002年のISS第5次長期滞在。シャトルの飛行経験もない彼女が、いきなり184日間もの長期ミッションを成功させた。そして今回が2回目の飛行で第16次長期クルーの船長。趣味はウェイトリフティング、バスケットボール、水上スキー。結婚している。
そしてスペースシャトル・ディスカバリー号のパメラ・メルロイ船長は1961年、アメリカ・カリフォルニア州生まれの46歳。地球惑星学博士で米空軍大佐。2000年、2002年にパイロットとしてシャトル飛行。今回が3回目の飛行で船長となる。スペースシャトルの女性船長は、アイリーン・コリンズ(2005年に野口飛行士が飛行したときの船長)についで二人目。趣味はタップ、ジャズダンス。読書や料理も大好き。結婚している。
女性初の宇宙飛行士は、ソ連のワレンチナ・テレシコワさんで1963年6月16日に宇宙に飛び立った。片や、NASAが初めて宇宙飛行士を送り出したのは20年後の1983年6月18日。スペースシャトルに乗り込んだ、サリー・ライド飛行士だ。しかし最近では、ロシアの女性飛行士はほとんど宇宙飛行をしていない。NASAでは現在、92名の現役飛行士の中で女性は約2割を占めているという。
NASA女性飛行士の活躍といえば印象深い人物が二人。まずは1996年、NASA飛行士で初めてロシアの宇宙ステーション・ミールに188日間長期間滞在したシャノン・ルシッド飛行士だ。当時彼女は53歳。3人のお子さんを地上に残し、アメリカ人初の偉業にチャレンジした肝っ玉母さん。今もシャトルの宇宙飛行のたび、ヒューストンの管制センターから交信担当として「グッドモーニング、ディスカバリー」などと呼びかける。経験豊富な彼女の声は「何が起こっても大丈夫。私がついてるわ」と飛行士たちを安心させる。 守り神のような存在だ。
そして、美貌と腕、颯爽としたカッコよさで右に出るものはいない女性船長のパイオニアがアイリーン・コリンズだ。1999年7月に女性初の船長として飛行。1男1女の母。野口飛行士に言わせると「とにかく面倒見がいい。飛行士本人だけでなく家族のこともよく把握してくれる。ニックネームはMOM(お母さん)」とのこと。2003年のコロンビア号事故から2年半後、全世界が注目したシャトルの飛行再開ミッションで船長を完璧に務めたあと、飛行士を引退した。
今、NASAには女性船長はパメラ・メルロイ一人しかいない。コリンズ氏はその状況を嘆いてNASAのウェブサイトでこう呼びかける。「能力があってこの仕事を愛する人がきっとたくさんいると思う。私はNASAで16年間仕事をする間に子どもを二人生んで、4回宇宙飛行をした。それも大した頭痛を起こすことなしにね(笑)」
宇宙での仕事に男女差はないというけれど、女性のメリットは体格が小さく、食べる量も出す量も少なくてすむこと。船外活動のような力仕事は男性のほうが向いているかもしれないけれど、細かな気配りや、いくつもの仕事を同時に進める能力は家事や育児をこなしてきた女性に結構向いていると思うのだ。
さて、今回のパメラ・メルロイ船長率いるシャトルミッション中、ドッキングポート「ハーモニー」の設置など大仕事が続く。成功しないと日本実験棟「きぼう」をISSに取り付けられない重要なミッションだ。シャトルとステーションの協調作業が成功の鍵。女性船長二人の采配ぶりに注目だ。
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