コラム
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2008年 3月分 vol.1
土井飛行士打ち上げ目前。「宇宙は身近で、やさしい」
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 いよいよ土井飛行士の打ち上げが迫ってきた。3月11日午前2時31分(現地時間)、スペースシャトル・エンデバー号で宇宙に飛び立つ。約16日間に及ぶ宇宙飛行の「ヤマ場」と、打ち上げ一週間前に行われた記者会見での土井さんの「意気込み」を紹介します。

打ち上げ前にガッツポーズ。「健康に気をつけて、技能を訓練で常に高いレベルに維持すれば宇宙飛行と年齢は関係ない。」きっぱりとした意志と余裕がその表情にみなぎる。(提供:NASA)  まず「ヤマ場その1」は、打ち上げ。今回は打ち上げの中でも一際美しいと言われる「ナイトローンチ」(夜間打ち上げ)。現地時間では午前2時31分、日本時間では午後3時31分。仕事の合間(?)にこっそりNASAテレビをチェックしましょうね。間違っても「おぉー」なんて声をあげないように気をつけて。

 さて、打ち上げ後の「ヤマ場その2」は、飛行4日目。土井飛行士がシャトルのロボットアームを操作して、日本の実験モジュール「きぼう」の保管室を国際宇宙ステーション(ISS)にとりつけるのだ。このシミュレーション映像を見せてもらったのだが、シャトルの貨物室から出した保管室をぐるぐると何度も複雑に回転させて、ISSに設置する。アームや保管室をISSにぶつけないように、常に距離を確認するのだが、カメラで十分に見えないところもある。秒速6cmぐらいでゆっくりと慎重に進める。土井さん自身も今回の飛行中、この作業がもっとも難しいと言う。「船外活動チームとの協調作業や地上との連携も大事。ステーションのロボットアームが動いているときに、シャトルアームを動かしてはいけないというルールもある。丸一日かかる複雑な仕事です。」

 この大仕事を終えると、翌日の飛行5日目に「ヤマ場その3」がやってくる。「きぼう」に土井さんが入室する場面だ。JAXAつくば宇宙センターで管制チームが見守る中、「きぼう」に入った土井さんが、どんな表情でどんな「決めぜりふ」が出るのか、管制チームで交信担当(J-COM)の山崎直子飛行士がどう答えるのか、感動の名場面を期待したい。

 この名場面で気になることが。「きぼう」に入る土井さんが、マスクとゴーグルをしている可能性があるのだ。地上で機器内に入り込んでいた小さなゴミが無重力で浮遊する可能性があるためだとか。表情が見にくくなるかも・・・と余計な心配をしたりして。

 さて、くらしの部分での注目は、「食」と「衣服」。土井さんは、うどんとそばを持っていく。土井さんは「こだわりの男」。第一回目の飛行でもカレーライスの食べ方にこだわった。「カレーとライスを別々に食べるのはカレーライスじゃない!」とちゃんとごはんにカレーをかけて「正統派」の食べ方を見せてくれた。今回も期待大。さらに「やきとり」が飛行士仲間に好評につき持ってくとのこと。「ちゃんとくしも通ってますよ。」(土井さん)

 前回のコラムで紹介した、宇宙のふだん着については「地上で着たときは少し派手かなと思ったけど着心地はよかった。宇宙でどんな着心地か楽しみ。汚れにくいので地上でも応用できる」と期待も大きい様子。土井さんのふだん着も要チェックだ。

 ところで、53歳という年齢は現役日本人飛行士で最年長、今回のチームでも最年長だ。土井さんを駆り立てる宇宙の魅力は? とたずねると「宇宙は子ども時代からの憧れの対象。宇宙は身近で、宇宙で仕事をすることは自分にとって一番やさしいことだったと思う。だからこそ長い間続けてこれた。」好きで没頭してきて「これ以外に道はない」という人の言葉だなぁ。と同時に、第一回目の宇宙飛行で土井さんが「宇宙が私たちを呼んでいると感じた」と語った言葉を思い出す。その宇宙へ再び。きっと宇宙で仕事をすることは、土井さんにとってもっとも自分らしく、居心地がいいことなのでしょうね。

JAXA 土井飛行士のミッション(STS-123)のページ
http://kibo.jaxa.jp/mission/1ja/

NASAテレビ
http://www.nasa.gov/multimedia/nasatv/