10月上旬、東京都三鷹市にある国立天文台の世界天文年2009日本委員会事務局の電話はなりっ放しだった。直前に出た新聞記事で、「小型望遠鏡を10ドル」で「世界天文年2009日本委員会」が提供と紹介され、問い合わせが殺到したのだ。高価なイメージのある望遠鏡が手軽な値段で、しかも国立天文台が主催団体の一つである委員会の認定望遠鏡とあっての大反響。事務局の大川拓也さんは「望遠鏡が売れないこのご時勢に『ありえない』事態。星を見たいという潜在的な需要は予想以上に大きいと再認識しました」と驚く。
実は、この望遠鏡は「世界天文年2009」の「君もガリレオ」プロジェクトのために用意されたもの。20人以上で参加することが条件で、書類で申し込みをしないと10ドルで購入できない(下のリンク先参照)。ではそもそも「世界天文年2009」とは? イタリアのガリレオ・ガリレイが自作の望遠鏡を宇宙に向け、初めて天体を観測した1609年から400年目にあたることを記念し行われる、世界的な「星のお祭り」だ。国際天文学連合が呼びかけ、国連総会で2009年を世界天文年とすることが決議され、約130か国で様々な催しが行われる。
日本では国立天文台などで組織されている日本委員会が主催となり、ユニークな企画が目白押し。その中の一つに、ガリレオが見たのと同じ口径4センチの望遠鏡を自分で組み立て、「ガリレオが初めて望遠鏡で宇宙を見たときの驚きを体験しよう」という子供たち向けの「君もガリレオ」プロジェクトがある。望遠鏡は何種類か用意されているが、10ドル望遠鏡は口径4cm長さ約30cm倍率が15倍。月のクレーターや木星のガリレオ衛星が見られる。「天体を見る入り口としては非常に質がいい。まず楽しんで、ステップアップして」と大川さん。ガリレオが、月を見てその凹凸やクレーターに驚いた感動を味わってみたい。ウエブサイトでは指導者向けに観察のコツ、見ごろの天体などを紹介している。
世界天文年の日本の目玉は7月22日の皆既日食だが、この日食も含め「めざせ1000万人!みんなで星を見よう」キャンペーンが大きな目標の一つ。日本人の約10人に一人に星を見てもらおうというのだ。さっそく2009年の年明け早々に全国で連携してオープニングイベントを開こうと、事務局のメンバーは大忙しだ。「星を見るのは高尚なことじゃない。老若男女みんなが『お祭り』と思って楽しんでもらえるようにこれから盛り上げたい」(大川さん)。これから空気が澄んで星を見るのに絶好の季節。この10ドル望遠鏡、みんなで見るのももちろんいいけど、かばんに入れて持ち歩き、見たいときにさっと見るっていう楽しみ方も、イイですね。
世界天文年2009
http://www.astronomy2009.jp/
「君もガリレオ」プロジェクト
http://www-irc.mtk.nao.ac.jp/~webadm/Galileo/
※個人で購入する場合は、価格や入手方法が異なるので注意してください。
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