尿から飲料水を作る。究極のリサイクルへの第一歩が国際宇宙ステーション(ISS)でスタートした。11月中旬に打ち上げられたスペースシャトル・エンデバー号が運んだ水再生システムは、ISSのトイレで回収した尿を蒸留して水に換え、ろ過、蒸留して飲料水を作る。米国実験棟デスティニーに取りつけられ、運転を開始した。
ちょうど11月20日に建設10周年を迎えたISS。14か国の167人が既に訪れており、19000食の宇宙食を食べている。人間が暮らすための水はほとんど、スペースシャトルの燃料電池で作ったり、ロシアの補給船プログレスが水タンク・ロドニックで運んでいた。この水再生システムが機能し始めれば、運搬していた補給水を年間約6800kgも削減することができる。得られた水は飲料水だけでなく、酸素生成システムを通して酸素の供給にも役立てられる。つまり、「ミニ地球」・ISSの生命維持システムの要となる装置なのだ。
さて、NASAが10年以上の歳月と2億5千万ドルをかけて開発した水再生システム。尿処理装置が何度も停止したものの、コマンダーのマイケル・フィンク宇宙飛行士と、ドナルド・ペティ飛行士が修理に成功。(ペティ飛行士はISS第6次クルーとして161日滞在した化学博士。実験・工作の腕は突出)。複数の尿処理工程を行い、サンプルを地上に持ち帰ることになった。今後、このサンプルを検査して飲料に耐えるかどうか分析。また連続試運転も行っていくことになる。
JAXAで宇宙の水再生を研究している小口美津夫主任研究員は「今回NASAが開発した蒸気圧縮法は、水とアンモニアを分離させるための圧力と温度の設定が難しい。最初の初期サンプルは問題ないかもしれないが、連続運転するにつれて、飲料水にアンモニア臭や成分が入ってくる可能性がある。回収された水の成分分析がどうだったか、また宇宙飛行士が飲んだときの味がどうだったか、率直なところをぜひオープンにしてほしい」と注目している。
実は、今回エンデバー号は2つ目のトイレもISSに運んでいる。米国実験棟での運転開始はこれからだ。目標は米国実験棟内でトイレと水再生システムをつないで、水のリサイクルシステムを完結させること。若田光一飛行士は2009年2月からISSに長期滞在を始める予定だから、その間には、この「究極の水」の感想が聞けるだろう。
|