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2009年 1月分 vol.1
ビッグスマイルで宇宙へ 古川聡宇宙飛行士
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 明けましておめでとうございます! 2009年の仕事始めは、古川聡宇宙飛行士のビッグスマイルから始まった。古川聡宇宙飛行士は2011年春から約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在することが決定し、1月5日に記者会見が開かれたのだ。初飛行で約半年間もの宇宙滞在をするのは日本人で初めてだが、「不安はない」とにっこり。

2011年から国際宇宙ステーションに半年間滞在することが決まった古川聡宇宙飛行士。見る人を和ませる笑顔。今の時代に貴重な存在です。(提供:JAXA) 
 古川さんがISSを訪れる2011年は国際宇宙ステーションは既に完成していて、6人の宇宙飛行士が滞在しているはず。古川さんは元々は外科のお医者さん。建設が終わり、本格的な宇宙利用段階になったISSで「生命科学の実験」をぜひやりたいという。

 古川さんと言えば「いつも笑っている」という印象だ。本人も「地顔が笑顔。雰囲気が明るくなると言われるけど、深刻な顔がしづらい」というが、先輩宇宙飛行士の毛利衛さんは「あの笑顔の裏で自分のやるべきことを見極め、貫くのが彼のすごさ」と評価する。

 古川さんってどんな人だろう? 1964年横浜生まれの44歳。こどもの頃は本気でウルトラセブンになりたかった。幼稚園の時、アポロ11号の月着陸を見て宇宙に興味を持つ。実はその日、家族で海へ旅行に行く予定だったが両親が突然、「人類の記念すべき瞬間を見よう」と旅行を中止して月着陸の中継を見る。ご両親はパンアメリカン航空に勤務し社内結婚。特にお母様は未知なものへの好奇心が強く、古川さんは影響を受けた。宇宙工学を学ぼうと思っていたが、高校2年の夏に医師である叔父の話を聞いて医者になろうと決心。東京大学医学部を1989年に卒業、医師として約10年働いていたある日、当直中のテレビでISS宇宙飛行士募集のニュースを見る。「脳天に稲妻が落ちたような衝撃を受け」て、応募したのだという。

 医師から宇宙飛行士への転身。1999年2月に選ばれたときには「5年後にはISSが完成、飛行予定」と言われていたが、数年訓練を続けても常に予定は5年後。宇宙開発は予定通りに動くと思っていたのに、ベストを尽くしてもコントロールできないことがあるのだと驚き、悩んだ時期も。さらに2003年にはコロンビア号事故。だが、ロシアで訓練中、ISSから帰還したNASA飛行士に「先が見えなくて大変だろうけど、訓練自体を楽しんだら」とアドバイスを受けて、何事もポジティブに考えるようにした。「成せば成る」と。

 数々の訓練を経て2007年8月、宇宙飛行に最も近いといわれる訓練「NEEMO(ニーモ)」に参加。これは海底20mの研究施設(ISSのロシアモジュールとほぼ同じ大きさ)で約10日間過ごすもの。NASAはこの訓練でISS長期滞在クルーとしての能力があるかどうかを見極めるとも言われている。その後、2008年末からISSに長期滞在する野口飛行士のバックアップクルーに任命され、今回ようやく、自分が宇宙に行く切符を手にした。

 宇宙では「おすしを食べてみたい」。古川さんがISSに滞在する頃には、種子島宇宙センターから日本の輸送機HTVがISSに荷物を届けるから「お寿司の出前」も可能になるかもしれない。