コラム
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2009年12月分 vol.2
野口飛行士 進化する宇宙ステーションに滞在スタート
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


ソユーズロケットに乗り込む野口飛行士(一番上)。打ち上げ前には、宇宙飛行士が必ず見る映画を見たり、ガガーリンが発射台に向かうバスをおりて立ち小便した場所でバスをおりたり、様々な「げんかつぎ」を行ったらしい。((C)S.P.Korolev RSC Energia)  3人のサンタが宇宙に到着した! 12月21日(日本時間)にカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたソユーズロケットが12月23日に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキング。野口聡一宇宙飛行士を含むロシア、NASA飛行士3人がサンタの格好をしてクリスマスツリーを抱えISSに笑顔で入室したのだ。野口飛行士は「今回のミッションでは皆さんを楽しませる隠し球をたくさん用意しているので楽しみにしていて」と打ち上げ前から語っていたが、「さっそく来たか~」とうれしくなった。

 野口飛行士は根っからのエンターテイナーであるために、仕事をさくさく驚異的な早さで片づけてしまい、私たち一般人が喜ぶ演出をしてくれるがために、ともすると「寿司を握りに宇宙に行ってる?」と思われがちで「もう少し仕事を大変そうにやってもよいのに・・」などと余計な心配をしてしまうほどである。しかし、大変な時も大変そうには決して見せないのが宇宙飛行士たちの矜持。自分の仕事を片づけて相手を気遣ってこそ一人前で、そうできる人しか宇宙長期滞在の資格はないのかもしれない。

 さて、日本実験棟きぼうは2009年に完成したが、ISSは今も完成に向けて進化を続けている。野口さんの滞在中にも、かなり大きな変化がありそうだ。たとえば2010年2月にはNASAの居住モジュールがドッキングして、現在アメリカ実験棟などに点在しているトイレや個室、水処理システムなどが配置される。また大きな6枚の窓がついた「キューポラ」(天窓)がついて地球や天体観測などに使われる。ロシアの新しいドッキングポートもつく予定で、ソユーズ宇宙船や補給船プログレス、ヨーロッパ補給船ATVなどが地上―宇宙間を頻繁に行き来しても、事故なく安全に行えるように改良されつつあるのだ。そんな進化していくISSをきっと野口さんは楽しくレポートしてくれることだろう。

 野口さんが行う実験には今後の産業への応用が期待される注目の実験がある。たとえば「ナノスケルトン」の実験。チタン化合物をナノレベルでチューブ状の構造(ナノスケルトン)に綺麗に並べて、重油を高い効率で精製する触媒を作る。もし宇宙でうまく作ることができれば、作り方をシミュレーションで解析して地上での生産を目指す。

 宇宙での野口さんの初仕事は「宇宙庭」。ナデシコやレモンバーム、タンポポなど12種類の種子が入った4つの栽培キットで約2ヶ月間箱庭を作っていく。ハイビジョンカメラで撮影し、映像作品は帰還後ヨーロッパの美術館で展示予定だとか。宇宙からの年越しも楽しみですね。