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vol.6
ストロベリームーン ー地平線に近い満月ー |
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夜空で最も明るくて、変化に富む天体、月。皆さんも、そんな月の姿をゆったりと眺めたことがあるのではないでしょうか。月を眺めるのは中秋の名月や三日月だけではありません。同じ満月でも、その季節ごとに微妙な異なる色合いや表情を味わうのも星空散歩の楽しみのひとつです。凍えそうな寒空に煌々と輝く寒月。今にも降り出しそうな空に浮かぶ雪待月。春霞のなかでぼんやりと輝くおぼろ月。とりわけ日本人は様々な月の名称を編み出して、愛でてきたように思います。
そんななかでも、私はこの季節の、やや赤みがかった満月が好きです。春から夏の時期の満月は大気中の湿度の影響とともに、地平線からそれほど高く上がらないため、大気の影響で赤みがかることが多く、英語圏ではストロベリームーンとも呼ばれています。
日本のような北半球中緯度では、太陽の高さは冬に低く、夏に高くなります。満月は地球を挟んでちょうど太陽と反対側にあり、またおおまかにいえば、月は太陽の通り道である黄道にほぼ沿って動いていきますから、満月の高さは太陽とは逆の関係となります。つまり、日がもっとも高く上がる夏至の頃の満月は高度が低く、日が最も低くなる冬至の頃の満月は高く上がるわけです。
たとえば、東京での6月の満月の高さは、真南にきて最も高く上ったとしても、地平線からせいぜい30度程度。これは、まだ地平線に近い、まるで上ったばかりではないか、と見間違えるような高さといえるでしょう。一方、12月の冬の満月の場合には、高さは80度を超え、ほぼ頭の真上にまで上ります。まさに「月天心」ですね。同じ気象条件でも高度が低い方が大気の影響を受けやすいので、低い月では、夕日と同じように赤みを帯びるのです。しかも6月前後は湿度が高くなる季節で、夜中でも真っ赤な月になってしまうのです。
これに加えて、2006年はまた少し特別な年です。さきほど月は太陽の通り道である黄道にほぼ沿って動くと言いましたが、厳密に言えば月の通り道は黄道に対して約5度ほど傾いています。ですから、月は黄道から5度ほど北に行ったり、南に行ったりします。この月の通り道を白道と呼びます。
ところで、白道は黄道に対して傾きを保ったまま、18.6年の周期でぐるっと一周します。つまり、月が黄道から北に最も離れる場所、あるいは南に離れる場所は、18.6年ごとに黄道をぐるっと回るわけです。ところで、黄道そのものも天の赤道に対して約23度ほど傾いています。ですから、例えば月が黄道から最も北に離れる場所が、黄道が最も北寄りになる場所と同じ方向になるタイミングでは、地球からみた月の位置は最も北寄りとなります。赤道からの角度は、黄道が離れる角度23度+白道が黄道から離れる角度5度の合計となり、天の赤道から28度も北になります。このときには、同じく月が黄道から南に離れる場所は、黄道が最も南よりになる場所と同じ方角になりますので、そこでは月は赤道から28度も南よりに位置します。
実は、今年2006年は、ちょうどこの状況になっていて、この6月には前後10年の期間では、少なくとも東京などでは最も南の地平線に近い満月の条件となります。今年の6月11日の夜中、月はへびつかい座で赤道から29度ほど南にありますが、9年前の1997年6月20日の満月は、いて座で赤道から南に19度しかずれていません。例えば、1997年6月の満月と比べると、今年の満月が真南に来たときの地平線からの高さは、10度も低いのです。たとえば北緯35度の東京で眺めた場合、1997年には高度が36度もあったのが、今年はその高さが26度しかない、ということになります。この差は、かなり大きく感じることでしょう。地平線に低く輝くストロベリームーン。あなたはどこで眺めますか?
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