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今年の冬は、ずいぶんと赤い星が東の空にあるなぁ、と思った読者の方が多いのではないだろうか。そう、赤いのはいま地球に接近中の火星である。火星の表面を覆っている砂には鉄分が多く、褐鉄鉱と呼ばれる、赤さびのような色をしているために、赤く輝いているのである。この火星は12月19日には地球に8817万kmまで接近し、その明るさもマイナス1.6等となる。恒星の中で最も明るいおおいぬ座の一等星シリウスの明るさがマイナス1.5等だから、それをわずかに上回る明るさ。よく目立つはずだ。
火星と言えば、この連載の第一回目にも登場してもらった天体だ。その時には秋から冬の空に輝いており、地球への接近も2005年10月末だった。あれから2年と少し経過したところで、接近の場所が少し東へ動いたことになる。今回は、冬の星座であるふたご座で輝いている。
火星は地球のすぐ外側を回る惑星で、平均すると2年2ヶ月ごとに地球に近づく。火星の軌道はずいぶんと歪んでいるために、接近のタイミングによって、その接近距離は大きく違ってくる。夏に近づくときには接近距離が6000万kmを割り込み、非常に明るくなって、一般の人の目を引くため、大接近と呼ばれる。とりわけ、2003年8月の大接近は話題になった。というのも、接近距離がそれまでになく小さく、ある研究者の計算によれば、実に6万年ぶりの大接近ということで、ニュースにも取り上げられたからである。大接近は8月末だったが、その後、9月の半ばに開催された国立天文台三鷹キャンパスの定例観望会には、推定で2500名のお客さんが押しかけるという大騒ぎになった。
一方、冬から春にかけての接近は、火星の軌道が大きく外側へ膨らんだ部分で起きるために、接近距離は大きくなり、小接近とも呼ばれる。このときの地球との接近距離は、大接近のほぼ倍となってしまう。距離が遠いという事は、それだけ暗くなるということなのだが、そこはさすが火星で、小接近でもそこそこ明るくなり、よく目立つのである。しかも、日本のような北半球では、大接近よりもこのあたりの接近の方が観察するには都合がいい。というのも、大接近での場合、火星は夏の星座の南に低いところにあるので、大気の影響を受けやすい。今回のように深夜にほぼ頭の上を通過するような条件であれば、ずっと大気の影響をうけにくく、火星の表面の観察もしやすい。(ただ、大接近に比べればさすがに遠いので、望遠鏡で見た大きさも小さくなってしまうのだが。) 慣れれば天体望遠鏡で、表面の明暗模様を見ることができるだろう。各地の天文台でも、この冬は火星の観望会が企画されているので、お近くの公開天文台などへ問い合わせてみるとよいだろう。
ところで、望遠鏡で見なくても火星では探査機が様々な画像を撮影している。そういった画像を見ていると、なんだか自分が火星に立って、写真を撮ったような錯覚さえ覚えるほどだ。これらの探査機、特に着陸して火星表面を走り回っているアメリカの火星ローバー、スピリットとオポチュニティは、まだまだ活躍している。当初は、ローバーの駆動に必要な電源を供給する太陽電池が火星の砂で覆われてしまって、すぐに寿命が来るだろうと思われていた。しかし、時々起きる火星の砂嵐で、逆に積もってしまった砂が吹き払われるため、どうやら低下した発電能力が回復しているらしい。そして、これらのローバーが撮影する火星の地形は、確かに赤い。だが、かつては水がたっぷりとあって地球のような気象だったと考えられているので、探すと地球に似たような地形もあるようで、とてもおもしろい。
火星は最接近の頃には、日が沈むと同時に東の地平線に現れて、真夜中にほぼ頭の真上に輝き、明け方にはようやく西の空に沈むので、一晩中眺めることができる。冬は明るい一等星も多いことで有名だが、それらの星々と共に輝く火星をぜひ眺めて頂きたい。
ところで、火星が輝くふたご座は流星群でも有名だ。年間の三大流星群のひとつで、一時間に数十個は見ることができる。今年の極大は14日から15日の夜だが、その前後は月明かりもないので、赤い火星を目印に、流星もながめてみよう。いつものように国立天文台では、「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーンも行うので、火星と一緒に楽しんで欲しい。詳しくは下記、国立天文台ホームページで。
「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーン ―国立天文台―
http://www.nao.ac.jp/phenomena/20071212/index.html
携帯電話用ページ
http://www.nao.ac.jp/i/phenomena/20071212/index.html
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