日本人宇宙飛行士・星出彰彦さんが乗り込んだスペースシャトル・ディスカバリー号が、予定通りに去る6月1日打ち上げられ、宇宙ステーションでの日本の実験棟「きぼう」の建設も順調に進んでいる。完成すれば、ステーションでの実験棟としては、かなり大型のものとなるだけでなく、日本としては初めて恒久的な宇宙の建造物となり、いろいろな意味で期待も高まっている。
ちなみに私は、その前の3月には、土井隆雄宇宙飛行士を応援するために、フロリダのケネディ・スペースセンターに行き、打ち上げも見てきた。豪快な打ち上げシーンは、それはそれで感激するものだったのだが、実はスペースシャトルにしろ、宇宙ステーションにしろ、わざわざ打ち上げや帰還を見に行かなくても、日本に居ながらにして誰でも、直接見ることができることは、案外知られていない。宇宙ステーションも通常のスペースシャトルも、よく日本上空を通過しているからである。そして、その通過する時間帯が真夜中でなく、夕刻か明け方であれば、うまく太陽の光を反射して星空を動いていく、輝くシャトルや宇宙ステーションを見ることができる。
この6月上旬には、夕方の暗くなりかけの時間帯に、日本上空を飛んでいた。全国的に梅雨入りしてしまった地域も多かったのだが、ドッキングした宇宙ステーションを、日本各地で雲の隙間から眺めることができた。6月7日20時30分前後には、さいたま市や新潟などでも薄雲を通して、はっきりと見えたという。さいたまでは途中、1分間ほどとても明るくなり、その間は金星並であったらしい。おそらく、太陽電池パネルの角度がちょうどよかったのだろう。新潟県立自然科学館では、ちょうど天体観望会の最中で、160名あまりの市民の方々が、雲間を通して、ほんの少し眺めることができたという。うらやましいなぁ、と思っていたら、10日には関東地方も梅雨の晴れ間に恵まれ、国立天文台天文情報センターのある建物の屋上で、みんなで見ることができた。いや、本当に明るかった。あそこに、星出さんがのっているんだなぁ、と思うと、なんとなく不思議な気持ちであった。この日は全国的にあちこちで見えたようで、高校生天体観測ネットワークの一貫で行われている「ISSを見よう(東京工業大学付属高校主催)」にも多くの報告が寄せられている。
星空を眺めていると、夕刻や明け方近くだと、しばしば通常の人工衛星でも、明るく光りながら、音もなくゆっくりと動いていくのを見ることがある。流れ星よりもずっとゆっくりなので、誰でも見ることができる。なかには点滅しながら、というのもあれば、ほとんど明るさを変えないものもある。人工衛星の形状や太陽電池パネルの大きさ、衛星そのもののスピンなどによって、見え方はいろいろである。明るいものは、なにしろ大きい衛星であることが多い。特に太陽電池パネルが大きなイリジウムなどの衛星携帯用の人工衛星は明るく輝く。きわめて明るく輝くため、一般の人からの目撃情報も多く寄せられ、イリジウム・フラッシュとも呼ばれているほどだ。これらの人工衛星に比べても、国際宇宙ステーションは特別に大きい。なにしろ人類が宇宙で作り出した構造物でも最大のものである。場合によっては、天体望遠鏡で眺めると、その形がわかるほどだ。富山市天文台や、北海道陸別町にある銀河の森天文台などでは、はっきりと形を捉えている画像が公開されている(下記参照)。したがって、誰が見てもわかるほど明るく輝くのは当然なのである。
宇宙ステーションが、いつ頃、どのあたりに見えるか、というのは時期によって全く違う。そのあたりは、倉敷科学センターなどのホームページやJAXAのホームページでチェックできる。ぜひ調べて、チャンスがあれば自分の目で眺めて見てみてほしい。今後、宇宙ステーションには日本人宇宙飛行士・若田光一さんが長期滞在する予定である。自分の目で宇宙ステーションを追いかけながら、その活躍にエールを送りたいものである。
銀河の森天文台
http://www.town.rikubetsu.hokkaido.jp/tenmon/new/index.html
倉敷科学センター:
星出宇宙飛行士が搭乗するスペースシャトル・国際宇宙ステーションをみよう
http://www.city.kurashiki.okayama.jp/lifepark/ksc/tokusyu/sts124/index.html
JAXA:国際宇宙ステーション・スペースシャトルを見よう
http://kibo.tksc.jaxa.jp/
きぼう、みーつけた!
東京工業大学附属科学技術高等学校 科学部主催
国際宇宙ステーションISS観測イベント
http://www1.hst.titech.ac.jp/club/sci_club/astronomy/ISSP/eventPC.html
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