渡部:月は現在、地球から1年に約3センチずつ離れていて、同時に、少しずつ地球の自転も月の公転も遅くなっています。月が生まれたときは、地球からの距離は今の少なくとも10分の1程度近かったので、月はもっと大きく見えて、地球は1日5時間ぐらいで自転していました。それがどんどん遠ざかって、今はたまたま約24時間で地球は自転していますが、そのうち40時間、100時間になっていくわけです。
どのくらいのタイムスケールで月の軌道がどうなっていくかが、月の中を調べることでわかってくるんです。今回の月探査で月の内部の構造がわかると、月のこれからの軌道の進化のしかたが詳細にわかるだろうと思います。
-これから月がどのくらい離れて、どこで止まってということですか?
渡部:最後がどうなるかはほぼわかっています。地球から見ると月は同じ場所に止まってそこで満ち欠けをくり返す。そのときの地球の自転は、約47日、1130時間です。
-1130時間!それはいつぐらい先ですか?
渡部:計算上は約100~200億年先ですね。太陽はその頃膨張して、地球も月も溶けているかもしれない。でも最終状態を考えると面白いですよ。大陸分布が変わらなかったら、インド洋上空に月が留まるから、日本からは今ちょうどBSアンテナが向いている方向に月がある。そこで月が三日月になったり満月になったり。1日が約47日だから夜が約24日続きます。
鏡:まったく違う世界になるでしょうね。
渡部:そういうところで生物がどう進化をするのか。タイムスケールがもっと長くなっているかもしれない。時間の感じ方とか。細胞の活性のしかたとかね。他の生命体がコンタクトしても我々の話すことが聞き取れない可能性もある。ゆっくり進化しているからね。 |