汎用ソフトを活用した低コストなトレーサビリティシステムの構築により
生産性の向上を実現
2020年3月 掲載
住宅用換気扇やモータなどの生産拠点である三菱電機 中津川製作所・飯田工場では、各製造工程のデータが設備側から自動的にデータベースに登録されるトレーサビリティシステムを構築し、徹底的な品質管理を実現。生産進捗管理、作業者への通知、データ分析による生産性向上にも利用されるこのシステムは、使い慣れた表計算ソフトや無料のBIツールを使うことで、低コストに構築・運用されているため、大きな投資対効果を生んでいます。
事例のポイント
- 1. 生産ラインの設備側からデータベースに自動登録されるトレーサビリティシステムを実現
- 2. 品質に異常が発生した際はアラートの配信によりダウンタイムを抑制
- 3. 汎用の表計算ソフトや無料BIツールの活用により低コストでシステムを構築・運用
三菱電機中津川製作所・飯田工場

飯田工場は、中津川製作所の中核事業である住宅用換気扇の生産拠点です
中津川製作所・飯田工場では、住宅用換気扇の部品生産から組み立てまで一貫した生産を行っています。換気扇に搭載されるモータは、鉄心コアやシャフトなどにミリ単位の非常に精度の高い加工が必要です。また、モータの中にはより精密な0.01mm単位での加工精度が必要なものもあります。

中津川製作所・飯田工場は住宅用の換気扇やモータを製造
そこで飯田工場では、加工部材の寸法測定や設備異常の検知のほか、QRコードを使ったトレーサビリティを実現しました。生産ラインの各設備の加工・測定データをシーケンサに集約し、MESインタフェースユニットから、自動的にデータベースへ登録し、一元管理しています。品質に異常が発生した時などはすぐに現場担当者のウェアラブル端末にアラートが配信され、ダウンタイムを最小限に抑える体制が整っています。

各設備から集めた情報をもとに異常発生をいち早く検知し、ウェアラブル端末にアラートを配信
このシステムの特徴の一つは、生産進捗モニタリングやデータ分析に汎用ソフトを利用していることです。各設備の加工・測定データはシーケンサ、MESインターフェースユニット経由でデータベースに登録されます。飯田工場では汎用の表計算ソフトで、設備や生産状況などの情報を蓄積したデータベースからデータを取得して統計処理するシステムを開発し、必要な情報だけをモニタリングすることを実現しています。

モニタリングやアラートのシステムは汎用の表計算ソフトで開発
アラートを配信するシステムも、汎用の表計算ソフトの拡張機能を使って自前で開発しました。汎用ソフトを活用することで、高価な専用ソフトの使い方を習得することなく、データに基づいた治具の交換タイミングの判断や不良発生の予兆を把握できるようになりました。また、汎用ソフトを活用したことで、他の工程への横展開をあらかじめ想定して設計することができました。

表計算ソフトを使って開発したアラートシステム
無料のBIツール活用でタクトタイム短縮
さらに飯田工場では、タクトタイム短縮のための分析ソフトにも、無料のBIツールを使っています。約4000種類に及ぶ製品ラインアップの各製造工程からは、各ユニットのサイクルタイムやロット切替に要した回数・時間など、膨大なデータが出力されます。それをデータベースとして蓄積し、BIツールからアクセスして分析することで、タクトタイム短縮を妨げる要因を見つけ出し、対策や改善を行えるようにしました。自分たちが求める情報を膨大なデータから効率よく抽出する作業を、低コストで実現できるようになりました。

タクトタイム短縮を進めるための分析ソフトには無料のBIツールを活用
今後、飯田工場では、現状の「見える化」から対策を導き出す「診える化」へのレベルアップを目指します。また、データ活用の次のステップとして、データの自動分析から設備の自動制御まで実現することを目標にしています。