第1回その2
kizkia(きづきあ)って何?・その2
誕生のワケから
将来のことまで
kizkiaが
生まれるまで
開発を始めたきっかけは何ですか
2020年には東京オリンピックが開催され、訪日人口増加が見込まれています。超高齢化社会により労働人口が減少するなかで、人手をかけずに「おもてなし・弱者支援」を推進するために、いままで育んできた監視カメラの技術を活かせないだろうか、そう考え始めたのが開発のきっかけでした。
以前から三菱電機の研究所では映像を活用したAIの開発が進められていました。監視カメラとAI、このふたつの技術が出会ったことで、開発は一気に加速していきました。
開発にはどんな苦労がありましたか
まずはAIに学習させるための映像集めです。例えば様々なベビーカーの映像が欲しいと思っても、そう都合良くは集まりません。そのため実際の現場でエキストラを使って撮影を行いました。またどうしても撮影が難しい場合には映像を合成し、学習モデルをつくるための映像を準備しました。
ヒトの性別・服装・持ち物、モノの形・色、さらには監視カメラの位置、建物の構造や内装など、検知する対象や環境は様々です。「kizkia」はひとつの学習モデルで幅広い条件に対応できます。そのためには汎用性の高い学習モデルをつくる必要があり、とても大変な作業でした。
また光の影響も難問のひとつでした。外からの日差しが壁などに映り、それをモノとして判定してしまう、日差しでモノの色が変わって見えてしまうことで判定を誤る、そういったことが起こる場合があるのです。光の具合で「ない」ものを「ある」、「ある」ものを「ない」と判定することがないよう、検知機能の改善に力を注ぎました。
東京五輪に訪れる多くの人のおもてなしやサポートにも。
そんな思いから「kizkia」は誕生した。
ほかのAIとは
ここが違う
kizkiaに活用されているAIの特長はどんなところですか
「kizkia」に適用されているAIは、機械学習の一種であるディープラーニングです。三菱電機はAI技術ブランドとして「Maisart®(マイサート)※1」を立ち上げています。その特長のひとつにディープラーニングにおけるコンパクトなAIという考え方があります。「kizkia」はまさにコンパクトなAIを利用することによって実現した製品なのです。
コンパクトだと、何がいいのですか
学習モデルをもとに映像を判定するとき、ものすごい計算量が必要になります。そのため通常は高い演算能力が要求され、大規模で多くの電力を消費し、なおかつ高価な装置を用います。
しかしディープラーニングで必要な膨大な演算のなかには、実は省いてしまっても結果に影響のない演算も含まれているのです。コンパクトなAIを活用した「kizkia」は、必要な演算だけを自動的に見極め効率的に行っています。だからスピーディーな判定が可能なのです。
大規模かつ高価な装置が必要ない、つまり社会の色々なところで幅広く活躍できるAIだと言えます。
※1 「Maisart」は三菱電機株式会社の登録商標です。
「Maisart」は計算量がコンパクト。
だから高い処理能力を必要とせず装置もコンパクト。
ますます未来へ
進化中!
kizkiaはどんな可能性を秘めていますか
「kizkia」とデータ分析システム等との連携により、未来予測への活用が期待されます。例えば「kizkia」で検知したヒトの流れ等の過去データを分析することで、混雑予測などを支援できます。あらかじめ混雑する時間帯がわかれば、警備員を事前に増やすなど危険な状態に備えることもできます。
また、いままでセンサーなどを使ってヒトの数をカウントすることはできました。でも男女、お年寄り、家族連れなど、ヒトにまつわる属性は調べることはできません。商業施設のマーケティングで重要なのはそういった補足情報です。「kizkia」であれば客層などを定量的にカウントできるので、マーケティングに役立てることも可能です。
AIのどんなところが魅力ですか
これまで人だけではできなかった、もしくは十分でなかったところをAIは助けてくれます。今回「kizkia」のような新しいソリューションを生み出すことができ、AIの有効性を改めて実感しました。AIの活用方法は今後ますますバリエーションが広がっていくと思います。
今回のように映像解析で何かを判定する場合、ディープラーニングができたことで、専門家の知識による複雑な定義をする必要がなくなりました。開発の入口を簡略化できるということは、新しいアプリケーションを開発する際に、敷居が低くなったと言えるかもしれません。
これからのkizkiaについて教えてください
今後の理想ということで言えば、映像からの情報だけでなく、音や温度、圧力などのセンサーやSNSからの情報を組み合わせることで、より多くのことがらをより正確に判定できるようになればと考えています。
例えば人が密集している場所で、温度センサーで測ると温度が高いから体調を悪くする人が出ないように配慮が必要、といった判定ができるようになるかもしれません。このようなことができるようになれば、ますます人に寄り添った製品になっていくのではないでしょうか。
集めたデータを活用すれば、少し先の未来予測にも。
「kizkia」の可能性は今後ますます広がり続けます。