Round-trip Letters
カヒミ・カリィ × Hello,AI Lab
【 Vol.10 From Hello,AI Lab 】
進化するAIと一緒に
それは、文通のようなメッセージ。以前からAIの可能性に注目していたアーティスト、カヒミ・カリィさんと、三菱電機の研究者集団「Hello,AI Lab」が、AIについて語り合いながら、発見や気づきをやり取りするコラムです。
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回答者
Hello,AI Labの研究員
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特徴
アラフォー、女性、現在子育ての真っ只中、お世話好き、ちょっとおせっかい、幼少期より科学技術に興味あり。少々ピアノを嗜む。
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注意
研究所の意見を代表しつつ、若干の私見をはさみます。
あらためてAIについて
人間中心のAIへ
カヒミ・カリィさま
お返事、ありがとうございます!
前回のレターも、とても興味深いものでした。中でも、どんなにAIによって自動化できたとしても、クリエイティブな作業はご自身の感覚を最優先にしたいとおっしゃっていたこと、とても印象的でした。
自分の仕事かAIの仕事かが分からないほどに似たものが作られることについては、私も、使われ方次第では複雑な気持ちになります。技術の進歩としては面白いですし、一概に良いとか悪いとかではないですが、やはり、AIの開発は人間中心であるべきだということに立ち返る必要性を感じます。芸術を本業としているカヒミさんからとても本質的なご意見をいただけること、改めて嬉しく思いました。
進化しつづけるAIとともに
未来と、その関わり方
さて、いただいたご質問にお答えしますね!
【質問1】
一般の人達はどのようにAIについて学んでいったら良いかというご質問をいただきましたが、まず、「わくわくしてね!」ということを伝えたいと思います。AIはものすごく高い潜在能力を持つツールです。AIについて学ぶことを、まずは楽しんでほしいなと思います。
そしてその上で、【1】AIが得意なこととそうでないこと、【2】AIの倫理面、この2点に関心を持って、ニュースなどを見ていってはいかがでしょうか。
【1】について補足すると、AIは大量のデータを処理するといった単純作業が得意で、そのスピードはとても人間が真似できそうにありません。一方で、創造的なことが苦手だったり、常識が通じなかったりします。
それから、【2】について補足すると、これまでお話してきたように、AIというのはみなさんが安心して活用できるルールがとても大切です。たとえば、2021年4月、EUがAIの利用を制限するという規制案を発表しました。この規制案というのは、AIの利用が民主主義や人権を脅かすものであってはならないという考え方に基づいています。顔認証などの生体認証は、リスクが高いものと位置づけられていて、審査なしでは市場に投入出来ないようになります。今回、世界に先駆けEUがこのような規制案を発表しましたが、この政策は他国にも影響を与えるのではないかと思います。
さて、私達はAIとどのように付き合っていくべきかというご質問に対してですが、【1】でお伝えしたようなAIの得意なこととそうでないこと、そして自分自身の得意なことや好きなことなどを踏まえた上で、AIと付き合っていくのが大事になってくると思います。そして、【2】でお伝えした通り、一人一人が倫理面に関心を持つことで、AIが人間に対してさまざまな危害を与えない範囲で発展し、安心して社会で活用できるようになっていくと思います。
【 質問2 】
AIの研究や開発が進んでいるのはどの国ですか?日本はその中でどのような位置にいるのでしょうか。
各国の論文数で比べるのかとか、論文の影響力(引用される数)で比べるのかとか、研究者数で比べるのかとか、色々と指標によるところがあるのですが、AIの研究や開発が最も進んでいる国はアメリカです。アメリカにある企業や大学は、世界のAI研究を圧倒的にリードしています。日本は、比べる指標にもよるのですが、だいたい10位以内に入ることもあれば、入らないこともあるくらいの位置にいて、現在は世界をリードしているとはいえないかもしれません。
ただ、日本人の中には本当に優れた研究者がたくさんいらっしゃって、グローバルな視点で見ても決して劣っているというわけではないのです。たとえば、ここでは福島邦彦さんという研究者の方を紹介しますね。福島さんは、ディープラーニングの基本構造の一つを、40年以上も前に世界に先駆けて考案した方で、「ディープラーニングの父」と呼ばれています。
AIは今、第3次ブームとして世界中で盛んに研究開発が行われていますが、そのブームはディープラーニングの躍進があったからこそです。しかも福島さんは、「AIの冬」といわれる、AIの研究が縮小されていた時代にその画期的な案を発表していて、今、この福島さんの功績を再評価しようという声がたくさん上がり、2021年4月、世界的な学術賞である「バウワー賞」を受賞されました。また、コンピューターサイエンス界のノーベル賞といわれる「チューリング賞」を受賞した、ヤン・ルカンという方も、福島さんの論文に影響を受けたと言っています。
世界中から評価される日本人の話を聞くと、やはり嬉しいですね!
【質問3】
先日、唾液でがん検査ができるようになったというニュースを読みました。その検査にAIを組み合わせる事で疑われる臓器を絞り込む事ができるようになったなんて素晴らしいですね。AIは人工知能という意味ですが、人間の脳とAIを繋げる事は可能でしょうか?人間の脳に疾患があって正常に機能しない場合にAIがそれをカバーする、もしくは脳のリハビリに活用する、というような事は可能ですか?まるで手塚治虫※のブラックジャック※のような話ではありますが、人工呼吸器など臓器を補助する機器があるので、高度なAIと医学の進化によっては可能なのか気になります。
脳にチップを埋め込み、そのチップを介して外部のAIと接続して、脳の病気を克服させようという研究は進められているようです。とはいえ、実用化に向けては、大きな技術的ブレークスルーが必要だとは言われています。脳は、ニューロンと呼ばれる神経細胞同士で信号をやりとりすることで、私たちの感覚、つまり、視覚、聴覚、嗅覚などを伝えています。脳に埋め込んだチップがこのやりとりを取得し、外部のAIと通信するという構想のようです。
これによって、脳神経の病気、たとえば、麻痺などで不便な生活を強いられている方々が、考えるだけで周囲の電子機器を操作できたり、電子機器を使って自分の意見を発したりすることができるようになるかもしれません。
AIが相棒となって、安心できる規制のもとで、健康で幸せな人が増えていくことを願っています。
ファッション・教育・
年齢とAI
これからのAIの活用方法
今回もいかがでしたでしょうか?
人間中心のAIが、人間をさらに豊かにしてくれるといいですね。
そう考えると、未来が楽しくなってきませんか?
それでは、カヒミさんへの質問です。
今回は主に、AIの活用方法についてにしてみました。
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【 質問1つ目 】
ファッションにAIを活用する場合、どんな活用の仕方が理想的ですか?
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【 質問2つ目 】
教育の現場にも、どんどんAIが活用されることについて、期待や不安があれば教えてください!
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【 質問3つ目 】
カヒミさんにとって理想的な年齢の重ね方に、AIを活用できそうですか?もし活用できるとしたら、どんなやり方がありそうですか?
※本文中における会社名、商標名は、各社の商標または登録商標です。
AIの研究開発をされておられる方々にとって、一般の人達はどのようにAIについて学んでいったら良いと思われますか?どんどん進化していくであろうAIと、これから先、私達はどのように付き合っていくべきだと思いますか?