ビルの屋上、普段は人目につかない場所から、ビル内のエアコンをパワフルに動かす。それがビル用マルチエアコンの室外機。働く仲間のしあわせから、未来の地球までを見据える先行開発グループ八柳さんのしあわせシェア物語をご紹介します。
01 血液の流れから空気の流れの開発者へ
大学では医工学研究科で、血液の流れについての研究をしていました。それが偶然にもインターンシップ先の三菱電機で、エアコンに関わることになったんです。エアコンは生活の中の身近な存在。成果が人々のしあわせとなって目に見えて分かる。そこに喜びを感じました。血液の流れから空気の流れの開発者へ。研究分野は違いますが、この世界に足を踏み入れることを決めました。
静岡の研究所を経て、いまは和歌山でビル用マルチエアコンの室外機の先行開発に携わっています。家庭用エアコンの室外機はみなさんご存じかと思いますが、それよりも規模の大きいもので、ビル屋上にあるような装置です。
マルチエアコンの難しいところは、様々な環境への幅広い対応力。車のエンジンが、高速道路や急峻な坂道、路地裏をゆっくり走ることに対応できるように、マルチエアコンの室外機も複数の室内機による負荷の大小や、温暖な地域から寒冷地、温暖化などによる環境変化にまで対応が求められるところです。
02 おじいちゃんになった時、地球はどれほど暑いのか。
先行開発とは、今後増えてくるであろう社会ニーズや環境課題など、未来を見据えながら競争力の高い製品を生み出すための開発です。いま、地球温暖化や物価の高騰など、数々の社会課題が私たちを取り巻いていますし、世界各国の環境規制も厳しくなっています。
例えば、十年前と比較すると夏の気温は上昇しています。このような環境下では、省エネ性能の低い従来のエアコンは大量の電力を消費してしまう。こうした劇的な環境の変化に対処するためにもエアコンの進化は不可欠です。
先行開発は未来の世代のしあわせを守る仕事かも知れません。私たちがおじいちゃんになる頃、地球の気温はどの程度上昇しているのだろうか…、と考えるときもあります。
03 課題を見つけると、ついつい考えてしまう性分なんです。
私は秋田の出身です。ある冬の日、実家でエアコンの調子が悪いということがあり、外に出てみると室外機が雪に覆われていました。んー、どんな方法でこの課題を解決できるのか…考えずにはいられませんでした。
研究所にいた時代から、何か疑問などが生じると、つい首を突っ込みたくなる性格なんです。あとから「いまやらなくてもよかったな…」という思いなおすこともしょっちゅうあります(笑)
04 まずは、仲間としあわせをシェアします。
初めてマルチエアコンの開発に携わった時、幅広い動作条件での品質を確保することの難しさに圧倒され、検証に時間を要し、後工程のチームに迷惑をかけてしまったことがありました。自分だけで解決しようとするのではなく、仲間と相談し、さらには巻き込んで課題に立ち向かえば、もっとみんなで喜びをシェアできる。さらにはいい製品が生まれ、エンドユーザーやサブユーザーのみなさまにもしあわせを広げていくことができます。
だから、私個人でできることは「仲間としあわせをシェアしよう!」です。シェアするしあわせの種がなかったら、社会にもしあわせをシェアすることなんて、できませんから。
05 変化の時代こそ、新しい安心を。
昔から、三菱電機製品はなかなか壊れないとか、そういった印象をよく持たれていると自分の中では認識しています。ただ安心・安全って、裏を返すと、固い・重苦しい・変化がない、ということになりがちです。激流のように社会環境の変化が著しい時代だからこそ、我々が先行して変化に立ち向かう。結果として、お客様には三菱製品を買っておけば間違いない。と、そういう安心をつくりたいですし、そういったブランド認識をされるための一助をしていきたいです。
06 プロ集団三菱電機と、最強の室外機。
三菱電機のエアコンは、業界内でも高い性能を誇っていると自負していますが、他分野の技術を取り入れれば、さらにブレイクスルーできるかも知れません。技術としては存在しているけど、エアコンの分野にはまだ活かせていないようなものに可能性を感じます。空調の専業じゃない、三菱電機だからこそできるはずなんです。
ちなみに私の夢は、どんな地域・場所でも活躍できる室外機をつくること。一種類の室外機ですべてが対応できれば、生産しやすく、メンテナンスにも優しい、施工側としてもやりやすいかもしれません。
これからも仲間としあわせをシェアすることで、未来にしあわせをシェアしていけたらと思います。
八柳 暁
三菱電機株式会社
冷熱システム製作所
パッケージエアコン開発推進プロジェクトグループ 戦略企画課
2015年三菱電機入社。住環境研究開発センター 空調冷熱技術開発部にて、空調用熱交換器の研究開発に携わり、熱交換器の高性能化実現のため高性能アルミ熱交換器の研究開発を実施。2021年冷熱システム製作所 戦略企画課へ異動後も継続して、他社を凌駕する高性能熱交換器およびマルチエアコン室外機の開発に従事し、企画,設計業務だけでなく量産設計の開発にも携わる。現在はアルミ熱交換器の標準化に向けた開発業務を実施中。