寒い冬、部屋の換気をしようと窓を開けると、冷たい風が吹き込んでくる。もし、部屋の温度や湿度をできるだけ下げずに換気ができたなら。今回はそんな、ロスのない熱交換技術に魅了され、ロスナイの開発に16年間取り組んできた是友さんのしあわせシェア物語をご紹介します。
01 直球の志望動機「ロスナイがやりたかった」から。
当時大学生だった私は、就職のために様々な企業のホームページを調べていました。そこで偶然「ロスナイ」の発明秘話を目にしたんです。部屋から外に出る暖かい空気と、外から中に入る冷たい空気を「紙」を通して熱を交換させる。するとキレイな冷たい空気を、少し暖めて部屋に取り込むことができるんです。外に捨てる空気の熱を利用して取り込む空気を暖める。夏はその逆。「紙の特性」を利用するというアイデアに、なんて素晴らしい技術だと心が躍りました。
そして、ロスナイに魅了された私は三菱電機への入社を決めました。以来、ロスナイ一筋で16年間、開発に携わっています。
02 ロスナイは目立たない。縁の下の力持ち。
例えば、寒い日に窓開け換気をすると当然室温が下がります。その分、エアコンに負荷がかかる。でもロスナイで、室温に近づけて外気を取り込むことで、電気代の削減やCO2削減につながります。ロスナイとエアコンを組み合わせることで、快適な空間をつくりながら省エネも実現します。オフィスなら業務効率も向上するし、飲食店や学校といった場所ならば、みんながもっと笑顔になれる。ロスナイは、快適な環境もつくれるし地球環境へも配慮している。目立たないですが、縁の下の力持ちなんです。
余談ですが、家族で行った回転寿司のお店にロスナイがついていたんです。子どもに「これはお父さんが設計している製品だぞ」と言えたときは嬉しかったですね。縁の下の力持ちだけに、目立つところにはなかなか設置されないので(笑)。
03 小さな進化を積み上げて、設計の制約をなくしたい。
ロスナイの基本原理は、約50年前に発明されたものです。そこから多くの技術者が性能を高める努力を積み重ねてきました。今でも一般のお客様はもちろん、設計士さんや施工者さんなど、ロスナイに関わる多くの人たちに喜んでもらいたいと、つねに改良を繰り返しています。
例えば、設計士さんにとって悩みの種となるのが空気の通り道であるダクトの制約。ロスナイの能力が低いと、ダクトの長さや曲がりなどで換気がしっかりされなくなる恐れがあります。我々としては、設計士さんには、制約に縛られずに自由に設計してもらいたいわけですから、求められる風量をしっかりと確保できるよう、モーターや風路の改良などさまざまな面で試行錯誤を繰り返しています。それだけに、新商品を発売した際に「自由な建築設計ができるようになった」と評価をいただけたときは嬉しかったですね。
50年も前に開発された技術ですが、まだまだ時代に合わせ進化を続けています。
04 想いをシェアして、つくりだす。
時代にロスナイが応え続けるためには、一緒に働く仲間を想い合う気持ちが大切だと思います。ロスナイには、モーター、シロッコ羽根、板金、さらに風路設計まで、多くの専門家が関わっています。各エキスパートが、よりいいものを目指すからこそ、意見が食い違うこともあります。そのようなとき「自分たちの技術ではここまでしかできない」とお互いが壁をつくってしまうと前には進めなくなる。ブレイクスルーを起こすためにも、お互いをリスペクトすることは大切です。1つの専門分野でうまくいかなくても、みんなで知恵を出し合えば突破できるかもしれない。専門は違えど、目指すゴールは同じはずです。つくる仲間同士「想いをシェアする」ことで、いい製品が生まれるんだと感じています。
05 施工の現場で、しあわせをシェア。
我々開発担当者が直接、お客様からお話を聞くこともあります。「メンテナンスの際に必要なロスナイ周囲のスペースが、他の配管などで埋まってしまっていることがある」というお悩みでした。将来のメンテナンスの際に、どこのスペースを空けておく必要があるか、あとから建築現場に入ってくる業者の方が分からないんですね。そこで、製品の梱包材を再利用し、メンテナンス用スペースの確保に使えるようにしました。梱包材をコの字型に折って立てられるような工夫をすることでメンテナンスに必要なスペースを可視化したんです。まさに、開発者が現場から思いついたアイデアです。
現場の視点で、施工者、メンテナンスの方まで、しあわせに。これからも足を運んで改善に活かしていきたいですね。
06 目指せ!究極の熱交換効率100%!?
家庭から社会まで、多岐にわたる三菱電機だからこそ、換気以外の様々な技術と連携して、さらなる理想の空気づくりを目指していきたいですね。例えば、エアコンの人感センサーと連携し、人が部屋にいないときには換気を最小限にすることで消費電力を抑えるなどの技術がすでに実現しています。
また、カーボンニュートラル社会の実現には、ロスナイは欠かせないと思っています。そして、いつかは100%ロスなしの究極の全熱交換器というのも夢が広がりますね。
空気はヒトが生きていくために必要なもの。誰もがストレスなく快適に過ごすことがでれば、もっとお互いが寄りそえる社会になるのではないでしょうか。
ロスナイの開発を通して、明るい未来に貢献していけたら嬉しいです。
是友 正行
三菱電機株式会社
中津川製作所
換気空調システム製造部 ロスナイ技術第二課
2008年三菱電機入社。大学時代、就職活動中に偶然「ロスナイ」の発明秘話を目にしたことがきっかけで入社を決める。入社後は中津川製作所 換気空調システム製造部にて、業務用ロスナイの構造設計を一貫して担当。創業メーカーとしてのプライドを胸に、環境に配慮した革新的な製品を開発すべく、試行錯誤を日々重ねている。