今回は、みんなをホッと温かくするエコキュートの話。空気の熱を利用してお湯をわかすエコな給湯機ですが、災害のときは貯湯タンク内の湯水を生活用水として取り出せるという防災の側面もあるんです。「エコキュートを通して、どんなときでも水を使える安心を。」そんな開発者、高橋さんのしあわせシェア物語を紹介します。
01 震災で初めて感じた、ライフラインの重要性
2011年、まだ大学生だった頃に東日本大震災を経験しました。都内にいた私は、大きな被害には遭わなかったものの、当時の様子を鮮明に記憶しています。もし、自分が被災し、ガスや水などライフラインが止まってしまったらどう生活すればいいのだろうと防災意識を強く持つようになりました。
入社してから担当しているエコキュートにも、実は防災時に役立つ機能が備わっているんです。断水の際に、貯めたお湯を生活用水として取り出し使える機能です。これを誰もが使いやすいものにしたい。あの頃の想いが、いまの仕事に大きくつながっています。
02 エコキュートの貯湯タンクが、生活用水の蓄えにもなる。
エコキュートの基本原理は、大気中の熱を利用してお湯をわかすというもの。ガス給湯器とは違って、CO2排出量を抑えて環境に配慮でき、空気の熱を利用するので省エネにもなります。わかしたお湯は、貯湯タンクに貯めておくことで、いつでも使うことができます。このお湯を貯めておくという仕組み 、見方を変えれば、災害時の大きな助けにもなると思うんです。貯湯タンクに蓄えておける水は、なんと2Lペットボトル約185本分。断水時には、たっぷりの生活用水として使うことができます。
03 もしものときこそ、チカラになれるエコキュートでありたい。
防災には飲み水の備蓄だけではなく、実は生活用水の備蓄だって欠かせません。断水しても身体が洗えるように、洗濯ができるように、トイレだって流せるように生活用水をストックしておく必要があります。
エコキュートでは貯めておいたお湯を、非常用取水栓から生活用水として取り出すことができます。しかし、どこから水を取り出せばいいのか分からないという厳しい声もいただいていました。いざというときに、誰にでも使える非常用の取水栓を開発しなければならない。どんなときでも、すぐに水が使えるようにしてあげたい。そして、非常時こそ「水が使える」という安心を届けられるように。震災時の想いを胸に、誰でも直感的に使えるものへと改良を重ね、「パカっとハンドル」は完成しました。
04 高齢な私の親でも、直感的に使えるだろうか。
これまで非常用取水栓にアクセスするためには、エコキュート下部のフロントカバーを取り外す必要がありました。金属製のカバーは重たく、開けるだけでもひと苦労です。そもそもカバーですので、開けていい場所なのかも分かりにくい。もっと、直感的で誰にでも使いやすくするにはどうすればいいだろう。例えば、窓のようにパカっと開けられたら、分かりやすいのではないかと考えました。さらに、重い金属ではなく軽い樹脂素材にすることで、誰もが開けやすく、取水栓にアクセスしやすいように改良できました。
取水栓にも、こだわりましたよ。
右が従来の取水栓。左がパカっとハンドルの取水栓です。
どう水を出すか、想像してみてください。
従来のものは、どこを回したらいいのか、どこから水が出てくるか分かりづらいものでした。だから、いつも生活の中で使っている水道の蛇口のようなデザインにすれば、みんなが直感的に使えるのではと考えました。これなら見た目にもわかりやすく、ハンドルを回せば、すぐに水を取り出せます。
開発する時に常に思い浮かべていたのは、高齢な私の親でも使えるだろうかということ。実際に試作機を試してもらい、親から「かんたんに使えたよ」と言ってもらえたときは嬉しかったです。先日の能登半島地震の際は、水が使えて助かったといった声をいただけました。エコキュートが、被災し心細い人々の心のそばに、少しでも寄り添える存在になれたかも知れないと、ホッと安心しました。
05 エコキュートで、ホッとできるしあわせを広げていく。
もちろん、エコキュートは防災だけのものではありません。
例えば、お風呂の時間が、もっと家族みんなのしあわせな時間にできたら。「ホットあわー」という機能では、微細な泡が身体中を包み込み、より気持ちのいいお風呂を楽しむことができます。
「バブルおそうじ」機能は、お風呂の栓を抜くだけで、エコキュートと浴槽を繋ぐ配管を自動でキレイにしてくれます。お風呂の水位が下がるとセンサーが検知し、お湯と一緒にマイクロバブルが配管を流れ、細かい汚れまで洗い流す仕組みです。お湯が清潔であれば、家族の笑顔も自然に増えますよね。
エコキュートと、三菱電機のさまざまなサービスと連携することで、より大きなしあわせを広げるということにも挑戦しています。例えば、離れて暮らす家族を見守ることができるサービス「MeAMOR(ミアモール)」と連携したことで、「いつものように、母はお風呂に入っているな」と、家族を安心でつなぐことができるようになりました。さらにエコキュートと浴室暖房が連携することでお湯はりと同時に浴室を温め、寒暖差による体へのダメージを抑えることもできます。
将来、エコキュートで叶えたいことですか?
少し夢物語で言えば、超小型エコキュートの開発でしょうか。まだまだ大きなエコキュートですから、都心や、集合住宅には設置しづらいものになっています。どんな場所に住んでいたとしても、エコキュートでホッとできるしあわせを届けられる、そんな未来を創りたいですね。
高橋 宗平
三菱電機株式会社
静岡製作所
ルームエアコン製造部 給湯技術第一課
2015年三菱電機入社。給湯機製造部に配属され、
現在までエコキュートの機能設計、部品設計に携わる。
お客様に安心してお湯を使っていただくための給湯湯温コントロール制御の設計や、
樹脂成形品・バルブ等の部品設計を主に担当。
現在は、エコキュートをより多くのお客様に使っていただけることを目指して、
新たな部品の設計に取り組んでいる。