関西エリアを中心にデイリーファッション業態「パレット」を展開し、4°Cグループのアパレル事業を担う株式会社アージュ。同社は2021年8月、データコム株式会社が開発・販売する商品分析システム「d3」を導入し、売上分析などに利用しています。d3の分析データベース(DB)には三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)のデータ分析フレームワーク「AnalyticMart(アナリティックマート)」が採用されています。“1億件3秒” の検索性能を誇るAnalyticMartの高性能DBは、データ分析時間の短縮や、分析業務の高度化・多角化に貢献しています。
目次
80店舗以上を展開するデイリーファッション業態売上管理・分析の強化を検討
アージュは「暮らしとファッションを楽しみたいお客様のために、いつも楽しい商品とサービスを提供する」を経営理念に、地域のお客様から愛され続ける企業を目指しています。社名はフランス語で「時代」を意味し、いつの時代にも対応しながら、存続できる企業でありたいという願いが込められています。同社が関西エリアを中心に86店舗(2022年7月現在)展開する「パレット」は、家族のファッション衣料から肌着、靴下、服飾、寝具にいたるまで四季折々の商品をリーズナブルな値段で提供し、地域の人々の日常生活を応援しています。
2010年に関西事務所(尼崎市)を開設し、パレット事業の本部を広島の本社から尼崎に移転した同社は、これを境に関西エリアにおいてドミナント出店を中心に拡大を図ってきました。年間数店舗ペースの新規出店によって取り扱うデータ量も増加していきました。その結果、分析のためのデータ抽出に長い時間を要するようになっていきました。代表取締役社長の中野久史氏は次のように語ります。
「総合衣料を提供する当社では、幅広い年齢層のお客様が利用する商品を扱っており、日々の販売量や在庫量は膨大となります。郊外を中心とした店舗展開をしていますが、店舗によって売れ筋も異なります。また、季節商品も多く扱っているため、分析軸は店舗、売場、商品、顧客、季節と多岐にわたります」
データ分析の多くは、パレット本部のバイヤーがそれぞれ基幹システムからPOSデータやマスターデータを抽出し、Excelで加工して分析していました。
商品二部 商品一課チーフの三井隆義氏は「多くの場合、前年の実績と比較するために2年分のデータを抽出し、分析していましたが、それらの作業に手間と時間を要していました。また、バイヤーごとにデータ分析の手法や帳票の作り方も異なっており、報告用の標準的な帳票も統一されていませんでした」と振り返ります。
データ抽出のスピードを評価し商品分析システム「d3」を採用
そこで同社は、衣料品の売上管理・分析環境の強化に向けて、データ分析専用ツールの導入を検討。国内外の製品を比較した中から、流通業界向けのシステムソリューションを手がけるデータコムの「商品分析システムd3」を採用しました。d3は「見る」ことに特化したソリューションで、基本分析、ABC 分析、クロス分析、帳票出力など多彩な機能を網羅しています。MINDのデータ分析フレームワーク「AnalyticMart」は、d3のリリース当初から、標準の分析DBとしてパッケージと併せて提案されており、d3を導入する上では欠かせない高速DBになっています。
「d3を採用した一番の理由は、AnalyticMartの高速性が実現するデータ抽出スピード、分析スピードの速さです。データコムの取引先のスーパーやホームセンターが扱っているサンプルデータで抽出スピードを検証したところ、私たちが求める要件を十分にクリアしていました。その他、汎用性が高く、システムに詳しくない人でも使いやすい操作性、求める帳票が簡単に作成できるカスタマイズ性、見た目のシンプルさなど、敷居の低さを評価しました」(中野氏)
d3は、2021年8月に操作研修を実施したのち本稼働を迎えました。システム構築時に注意を払ったのは、前年度と今年度比較のデータの整合性確保です。
「d3では、基幹システムや各種システムから集めたデータを、d3の管理DBと分析DBに取り込んでから分析します。その際、これまで私たちが行ってきた分析結果とずれてしまうと意味をなさなくなってしまいます。そこで、従来と同様の結果が得られるようにデータ変換の方法や、分析軸の取り方を調整しました」(中野氏)
d3の操作研修は、パレット本部のバイヤーを中心に合計4回実施。1回の研修にほぼ1日かけ、マニュアルをベースに実際のd3の画面を操作しながら、実施しました。導入後は、プロジェクトメンバーを中心に全社共通で使う帳票を作成しました。
多角的な商品分析により発注精度や在庫精度の向上に貢献
現在、d3は10数人のバイヤーと、本部の部課長クラスの役職者合わせて約30名が利用しています。ほとんどのユーザーはd3で作成した全社共通帳票で前日の売上をチェックしたり、店舗ごとの売れ筋をチェックしたりして商品の販売戦略を検討しています。帳票は、週次、月次の報告会で出席者全員と共有し、売上予測を行い、損益改善に活用しています。
「バイヤーとしてd3を実際に使ってみての感想ですが、分析DBからのデータ抽出のスピードが速く、快適です。d3のアプリケーション内で計算式を作成し、ボタン一発で前年比などが確認できる機能も便利です。そのため、思い付いた時にすぐに分析することが可能になりました。肌着のバイヤーである私の場合、季節商品を扱う機会が多く、気候変動に応じて発注量を調整したり、季節終わりには値下げをしたりすることがあります。d3の活用によって在庫精度の向上につながり、仕事としてのやりがいも高まりました」(三井氏)
d3によって1人ひとりの帳票作成レベルを高め、帳票の標準化、分析業務の標準化を実現したことで、業務が効率化されました。その結果、削減した時間で商品分析の業務に集中することが可能になりました。
若手主体でツールの活用レベルを高め会社全体の分析業務の高度化へ
アージュにおけるd3の活用は始まったばかりで、まだ習熟のレベルや、利用頻度にばらつきがあります。今後は、より多くのバイヤーがデータに基づく意思決定ができるように、社内全体に浸透させていく方針です。
「誰でも手軽に使えるd3は入門編としても最適で、新入社員の社員教育にも活かせると考えています。若い社員を中心にd3の活用を促しながら、会社全体でデータ活用の意識を高め、d3による分析ノウハウを社内の文化として積み上げていきます」(中野氏)
d3を使った分析基盤については、今後もより便利に使えるよう、機能強化を続けていく方針です。取締役執行役員 開発・システム担当 兼務 情報システム部長の萩原崇氏は「バイヤーが利用する基本的な帳票は、今後もブラッシュアップしていきます。若いバイヤーには自分の思いで作った帳票をみんなに共有してもらい、会社全体の分析業務の高度化、効率化につなげて欲しいと思っています」と語ります。
パレットの店舗は、今後も年間5~10店舗のペースで出店を計画しています。現在、2022年9月以降の実現に向けて、同社初となる関東エリアへの出店計画が進行中です。関東エリアへのドミナント展開により、2024年2月期には全国100店舗、売上高150億円を目指しています。
「すべては、お客様の“笑顔” や“ときめき”のために」をモットーに、日々地域のお客様を大切にするアージュは、今後もデータ活用によってよりよい商品を届けていきます。
- ※本記事は、情報誌「MELTOPIA(No.261)」に掲載した内容を転載したものです。