株式会社大阪府農協電算センター(以下、JA大阪電算)は、大阪府内の農業協同組合、連合会(以下、JA)に情報サービスを提供する会社です。同社は、JAに提供する就業管理システムを自社開発から三菱電機ITソリューションズ株式会社(以下、MDSOL)が開発・販売する人事・総務トータルシステム「ALIVE SOLUTION」に刷新しました。新システムに刷新することにより法改正などに迅速に対応できるようにし、JAグループ大阪全体の就業管理を的確に行えることを実現しました。
目次
法改正や業務の変化に迅速に対応するために
パッケージシステムの導入を検討
JA大阪電算は、大阪府内全域のJAをシステム面からサポートしています。対応領域は信用系、経済系、管理系、情報系の業務システムから、イントラネット、ネットワーク、セキュリティー管理まで多岐にわたります。最近ではクラウドサービスや、AIアシスタントなどの最新技術の活用にも積極的に取り組んでいます。
刷新前の就業管理システムは同社が独自開発したものをJAに提供していました。2010年に導入した当時の就業管理システムは、各JAの要件に応じてスクラッチで開発したため個別最適化が進んでいました。当時の状況について、システム部次長代理の稲葉浩之氏は「JAごとに仕様が異なるため、法改正や業務の変化に対応するためのシステム改修や運用に大きな負荷がかかる状態でした」と語ります。
システム改修の負荷が大きいのは、JA特有の就業体系も背景にありました。農業従事者を支援するJAの業務特性上、一般的な日勤以外に早朝からの時差出勤もあれば、販売業務に従事する職員の変則的な勤務もあります。そこで、システムの複雑化を解消するとともに就業管理の徹底を図るため、既存システムの保守終了を機にパッケージベースの次期システム導入を決断しました。
徹底した仕様の精査により12JAへスムーズな展開を実現
次期システムの選定において、複数のパッケージ製品を検討した結果、MDSOLの就業システム「ALIVE SOLUTION TA」とワークフローシステム「ALIVE SOLUTION WF」を採用しました。採用理由について、企画部の西村雅之氏は「法改正に迅速かつ的確に対応できること、確実な就業管理が実施できること、初期費用と運用維持費用が見込みの範囲内に収まっていたことにありました」と語ります。
導入プロジェクトは、2020年6月にスタートしました。まずはJAへの展開をスムーズに進めるために仕様を精査のうえ、JA大阪電算に先行導入し、2021年10月から稼働を開始しました。その後、2022年3月からJAへ展開し、2JA単位で6つのグループに分けて2024年3月までに12JAへの導入を終えました。導入するJAの順番は、事業規模の大きさや管理体制などを考慮して決定し、1グループ目の2JAに導入したシステムをベースに5つのグループへ展開を段階的に進めていきました。
「原則としてカスタマイズをせずに、パラメーターの設定のみで各JAへの要件に対応していきました。とはいえ、JAごとに職員の出勤時間や休憩時間等が異なる場合があるために仕様の調整をしっかり実施しました。特に1グループ目の2つのJAは細部の調整に時間を要しましたが、展開していく中でALIVE SOLUTIONへの理解度と習熟度を高めることができました。その結果、展開が進むにつれて仕様の調整回数も減り、スムーズに導入を進めることができました」(稲葉氏)
JAへの展開では、導入先のJAへの事前説明、操作指導、アフターサポートなどもJA大阪電算が対応しました。慣れ親しんだ既存システムからの切り替えに対し、当初は利用者からの問い合わせが多かったものの、本稼働から1ヵ月程度で大幅に減少しました。当時の状況について、推進部の箕浦達也氏は次のように語ります。
「説明会には各JAの人事担当者などのキーマンを中心に参加してもらい、Web会議で実施しました。本稼働後、特に初期に導入したいくつかのJAより、問い合わせが多く寄せられましたが、対応を重ねノウハウを蓄積することで、後半の展開ではスムーズに進むようになりました」
ALIVE SOLUTIONと並行してグループウェア製品もMDSOLから導入し、ALIVE SOLUTIONとのシングルサインオン連携を実現しました。その他の人事、給与システムとの連携機能は、JA大阪電算の自社開発で対応しました。
保守業務の標準化・平準化を実現し
内部の管理工数を50%削減
2024年7月時点でALIVE SOLUTIONはJA大阪電算と12JAに導入済みで、約4,500人の職員の就業管理を実現しています。ALIVE SOLUTIONにより、職員の労働状況を把握しながら、就業管理を徹底することが可能になりました。総務部次長代理の丸山健一氏は次のように語ります。
「ALIVE SOLUTION TAで標準提供される36協定管理表などの帳票類を見ながら、労働基準法や労働安全衛生法等の観点でチェックができるようになりました。残業時間についても設定した時間を超過した場合は、管理画面上に警告画面が現れるため見逃す心配もありません」
稼働JAからは、ALIVE SOLUTION WFのワークフローにより、人事部門の業務が効率化されたといった声も届いています。
「これまで一部のJAでは、休暇申請などを紙の帳票で回し、上長の承認を経てから人事部で最終処理していました。現在はワークフローで申請が回り、最終処理は上長で完結するため、人事部の負担が軽減されました。勤務表を見れば出社状況も把握できるため、休暇申請の届出状況を確認する手間もなくなったとJAの担当者からは感謝されました」(箕浦氏)
個々のJAで異なっていたスクラッチ開発のシステムが統一されたことで保守業務の標準化と平準化を実現し、法改正や業務の変化に迅速に対応できるようになったことも大きな効果です。
「ALIVE SOLUTIONを導入したJAから寄せられた『時間有休の設定を追加して欲しい』いったリクエストにも、パラメーターの設定と簡単な確認だけで対応が終了しました。これによりシステム管理の作業工数も大幅に減り、従来の50%まで削減できました。法改正についてもパッケージのバージョンアップで対応ができるため大幅に効率化できると期待しています。また、最も管理工数がかかるのが、利用者からの問い合わせ対応や障害対応ですが、従来かかっていた2人月の工数は1人月に削減されました」(稲葉氏)
未導入のJAに順次展開しさらなる運用の効率化へ
JA大阪電算では、引き続きALIVE SOLUTIONの展開を進めており、2024年10月には1JA増えて合計13JAになる予定です。
現在稼働中のALIVE SOLUTIONについては、MDSOLのサポート支援を受ける機会もほとんどないほど安定運用を続けています。今後は職員の打刻忘れなどの改善のためのカードリーダー対応や、パートタイマーの就業管理などを検討する予定です。
MDSOLについては、営業・アプリケーションSE・インフラSEの三位一体の体制と、導入前の業務コンサルティングから導入後のサポートまでのワンストップ対応を評価し、今後のさらなる支援に期待を寄せています。
「パッケージ製品としての完成度だけでなく、MDSOLの営業担当者やSEのレスポンスの早さや対応力の高さが印象的でした。システムの安定稼働はもちろんのこと、JAグループ大阪全体の就業管理の効率化、堅確化に貢献いただけることを期待しています」(西村氏)
今後も、JA大阪電算は、情報システムの提供を通じてJAグループ大阪を支え、地域の農業、暮らし、食の未来に貢献していきます。