「美の創造企業」として、化粧品の製造・販売を中心とする事業を展開する株式会社コーセー。全国の販売店から注文を受け付ける同社のオペレーションセンターでは、三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)のFAXOCRシステム「MELFOS(メルフォス)」を利用してきましたが、ハードウエアの保守終了をきっかけに、クラウド型の「MELFOS on Demand」に移行。使い勝手はそのままに、電子帳簿保存法にも対応。ハードウエアの運用・保守から解放され、ITコストの平準化が実現しました。
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クラウドへ移行を前提にFAX受注システムの更新を検討
「美しい知恵人へ、地球へ。」をコーポレートメッセージに掲げるコーセーは、最先端の技術を結集した高付加価値化粧品を強みとし、『コスメデコルテ』や『雪肌精(せっきせい)』など個性豊かな35のブランドを、68の国と地域で展開しています。2022年末にはメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手とグローバル広告契約を締結。現在、同社は新たなお客さまづくりの領域として、グローバル(Global)、ジェンダー(Gender)、ジェネレーション(Generation)の頭文字をとった“3G”をテーマに取り組みを推進し、その一環として、スキンケアや日やけ止めアイテムなどの広告に起用しています。
同社では、全国の販売店からの注文を電子商取引(EC)に加え、秋田にあるオペレーションセンターでMDSOLのFAXOCRシステム「MELFOS」を使った受注処理を行ってきましたが、導入から約6年が経った2022年、ハードウエア保守期限が近付いたことを機にシステムを更新することにしました。
新たなFAXOCRシステムの導入で、クラウドサービスを前提に調査を開始しました。その経緯について情報統括部 コーポレートシステム課 課長の長谷賢司氏は次のように語ります。「当社では2021年から、障害リスクの回避や運用負荷の軽減等の観点から、全社的にハードウエア資産を持たない方向に舵を切り、基幹系システムや業務系システムの多くはすでにクラウドサービスに移行済みです。そうした全社方針もあり、FAXOCRシステムもクラウドサービスを前提に検討しました」
また、機能要件について情報統括部 コーポレートシステム課の小割崇司氏は次のように語ります。「オペレーションセンターでは、月平均約6,500件のFAX受注があり、アイテム数は45,000点にのぼります。そこで新システムでは、既存システムの使い勝手を維持しながら、発注コードのJANコード13桁への対応と、2024年1月から完全義務化されることになった電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応を新たな要件に加えることにしました」
コーセーのFAX受注業務に精通していたことに加え、
クラウド型の導入実績を評価
クラウド型のFAXOCRシステムを検討した同社は、複数社の製品を検討した中からMDSOLの「MELFOS on Demand」を選定しました。
その理由について小割氏は次のように語ります。
「決め手は、現行の運用を継続できることです。オペレーションセンターからは、できるだけ運用を変えたくないというリクエストがありました。さらにこれまでの運用において、オペレーターの質問に対する回答の早さなど、MDSOLのサポートに満足していたことからこれまで使ってきたオンプレミス型のMELFOSと使い勝手が変わらないMELFOS on Demandに決めました。さらにMDSOLの営業担当者からは、ハードウエアを持たない形でのクラウド接続方式の提案をいただき、安心して任せられると判断しました」
オンプレミス型を含め200社を超える実績があり、きめ細やかなカスタマイズにも対応するMELFOSは、オールインワンで必要な要件をカバーしている点においても優位性があったといいます。情報統括部 コーポレートシステム課の春山勉氏は次のように語ります。
「他社製品は、FAXのスキャニングから、データ変換、基幹システムへの取り込みまで、個々の機能を組み合わせたものが多く、ボトルネックが発生する懸念がありました。MELFOSは一連の機能がワンパッケージで提供されるため、して備えることができました。台風や地震など問題発生時のリスクも最小限に抑えられると考えました」
導入プロジェクトは2023年2月にスタートし、約1年後の2024年2月末にMELFOS on Demandに切り替えました。プロジェクトではネットワークに関する課題があったものの、大きなトラブルなく切り替えることができました。
「新旧システムは並行稼働することもなく、当日の昼休みに一斉に切り替えました。オペレーションセンターの業務に一切影響を与えることなくスムーズに移行することができました」(小割氏)
システム運用負荷の軽減とITコストの平準化を実現
MELFOS on Demandに移行してから約4ヵ月が経った2024年6月、FAXOCRシステムは安定稼働を続けています。電帳法への対応により、注文書などの電子データは受注伝票や出荷伝票とあわせて電帳法専用のサーバーに転送して保管しています。
また、MELFOS on Demandでは受信したFAXをメールでオペレーターに転送する機能をカスタマイズで実装したことで、万一オペレーターが出社できないような事態に陥っても、テレワークで業務を継続できるようになりました。
「現時点では、オペレーターの在宅ワークを実施していませんが、今後のパンデミックに対して備えることができました。台風や地震などの自然災害でオペレーターが出社できなくなった場合でも受注処理が可能となり、危機管理の基盤が確立されました」(長谷氏)
情報システム部門としては、クラウド化により担当者の運用管理負荷が軽減されたことが大きな効果です。「ハードウエアの運用・保守から解放され、業務負荷が軽減できました。特に、停電などが発生すると、オンプレミス型ではサーバーをシャットダウンしたり、再起動したりする作業が必要でしたが、クラウド型でそれらの作業もなくなりました」(小割氏)
コスト面についてもメリットがあったといいます。「ハードウエアを持たなくなったことで、初期コストや保守コストがなくなりました。ITコストが平準化され、コスト面においてもメリットを感じています」(長谷氏)
オペレーションのさらなる効率化に向けて
RPAの活用も検討
秋田のオペレーションセンターでは、販売店のニーズに応えるため今後もFAX受注を継続する方針ですが、さらなる業務効率化のため、MELFOS on Demandのアップデートに期待を寄せています。
「5年先、10年先のFAXの受注環境がどうなるか見通しは付かないものの、この流れはしばらく続くことは間違いありません。今後はまだ手作業が多いオペレーターの負担をさらに軽減できるよう、RPA等の活用も想定しています。MELFOS on Demandには、クラウドサービスならではの機動力の高さを活かして、進化を重ねていただければと思います」(長谷氏)
オペレーターの負担軽減に向けて、読取り認識率の向上や、帳票レイアウトの多様化にも課題があり、春山氏は「FAXOCRの可能性を広げる機能の強化に期待しています」と語ります。
コーセーは、これまでの延長線上にない斬新な発想や技術でチャレンジし、お客さまが求める新しい価値提供に取り組んでいきます。