電子認証の弱点は端末盗用によるなりすまし
電子証明書を使った電子認証は、IDとパスワードを使った従来型の認証に比べると、セキュリティが大幅に強化されているのが特徴です。パスワード認証では、端末側とサーバ側でID・パスワードの情報を共有して認証を行いますが、情報が流失してIDとパスワードの組み合わせが他人に知られてしまうと、なりすましによる不正ログインを防げません。電子認証は、利用する側と認証する側の間でIDやパスワードなどのログインのための情報を共有していませんので、不正ログインの危険性は大幅に減少します。
その一方で、秘密鍵を記録したスマホなどの端末が盗まれた場合、その端末からなりすましの不正ログインが発生する可能性があります。そこで、電子認証に加えて、端末のローカル環境で別の認証を組み合わせて行うことが推奨されます。
2012年に設立された標準規格団体「FIDO Alliance」は、公開鍵暗号基盤を使った電子認証に加え、顔認証や指紋認証などローカル環境で行う本人認証を組み合わせた認証手段の標準規格として「FIDO認証」を公開しています。
本人認証を行う要素としては、IDやパスワード、秘密の質問など利用者が記憶している「知識要素」、登録された端末に認証コードを送り所有者を確認する「所持要素」、顔や指紋で本人かどうかを確認する「生体要素」の3種類があります。
これら3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせて認証する方法を「多要素認証」と表現します。電子認証に加え、スマホなどの端末の所持や、顔認証や指紋認証で操作している人が本人に間違いないと確認できれば、さらにセキュリティ確度は高まります。
電子認証の他に「ライフスタイル認証」など新しい認証方法も
多要素認証の導入にあたって注意すべきことは、同じ要素の認証をいくら重ねても多要素認証にはならないという点です。例えば、IDとパスワードを確認した後に、追加で生年月日や秘密の質問に回答してもらっても、それらはすべて「知識要素」なので多要素認証には該当しません。多要素認証にするには、知識要素に加えて、所持認証あるいは生体認証を組み合わせる必要があります。
生体認証は、人間の身体的特徴を用いて本人を特定する認証方式で、現在では、指紋や顔の他に、静脈、虹彩、掌紋、音声、耳介などの認証が実用化されています。指紋認証や顔認証はオフィスや工場の入室管理にも広く活用されています。オンラインでの認証では、利用者の顔や指紋などの生体情報はサーバ側に送信されることはありませんので、インターネット上に流出する危険性もありません。生体認証に対応した端末を使っている利用者にとっては、手軽で安全性の高い認証方法といえます。
最近では、上記の3要素に分類されない、新しいタイプの認証方法も実用化されつつあります。その一つが「ライフスタイル認証」です。ライフスタイル認証とは、例えばスマホをどう操作するか、どのようなSNSやコンテンツを利用するかなど、端末に蓄積された行動履歴(ライフログ)から本人を認証する技術です。仮に、スマホが盗まれて他人に使われてしまった場合でも、本来の所有者とはスマホ利用における行動パターンが異なるため、操作しているのは別人であるという判定が可能になります。
ライフスタイル認証は、端末が他人に利用され始めた瞬間に判定はできませんが、ライフログが蓄積するにつれて、なりすましをかなり高い確率で見破ることが可能です。別人と判定された段階で、端末にロックをかけたり、ログインを拒否したりするなどの処置を取ることができます。
ライフスタイル認証とは
ライフスタイル認証は、スマートフォンで得られる様々な習慣情報から本人かどうかを判定する。
認証操作がいらないという利便性の高さがある。