リスクマネジメント
基本的な考え方
三菱電機グループは、海外向け売上高比率が5割超を占め、幅広い事業分野で「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を目指しています。また、顕在化した各種コンプライアンス事象を真摯に受け止め、内部統制システムの改善等に取り組んでいます。
三菱電機グループは、社会、顧客、株主、従業員を始めとするステークホルダーへの責任を果たしサステナビリティを実現するために、予防重視の内部統制システムの強化を図りながら、事業遂行に伴うリスクを適切に管理しています。具体的には、リスク管理を事業遂行に組み込み、事業の規模・特性等に応じてリスクを管理するとともに、グループ全体に共通する重要なリスクについてはグループ全体の経営に与える影響度に応じた重点付けを行いながら管理しています。
また、経済安全保障、AI等の技術革新、サステナビリティなどの分野における新たなリスクへの対応についても、組織横断的で柔軟なチーム行動により効果的に取り組んでいきます。
リスクマネジメント体制
三菱電機グループは、各部門及び国内外の関係会社が主体的にリスクマネジメントを遂行することに加えて、三菱電機の各コーポレート部門(リスク所管部門)がそれぞれの専門領域において各部門及び国内外の関係会社を統括・評価し、更にCRO(Chief Risk Management Officer)及び法務・リスクマネジメント統括部がグループ全体を統括することによって、適切かつ迅速な判断が可能な体制を構築しています。
各種のリスクについてグループ全体の経営に与える影響度に応じた重点付けを行いながら、大規模災害や社会的リスクなどの従来型リスクへの対応にとどまらず、経済安全保障、AI等の技術革新、サステナビリティなどの分野における新たなリスクに対する探索と備えも含めて、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会で経営判断し、機動的かつ戦略的に推進します。特に経営の監督と執行にかかわる重要事項については、取締役会、執行役会議において審議・決定します。

災害対策の取組み
大規模災害への対応体制整備
三菱電機グループでは、リスクマネジメント担当執行役(CRO)を委員長とする「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」を設置し、三菱電機グループの災害対策を含むBCPについて定期的(年1回以上)に確認・見直しを行っています。
大規模災害により三菱電機グループの拠点に甚大な被害が発生した場合、又はその恐れがある場合は、社長を室長とする「全社緊急対策室」を設置し、三菱電機グループ全体の緊急事態に対応します。全社緊急対策室では、災害状況の確認(人的・物的)のほか、事業継続に向けた取組みや、社会からの要請への対応(被災地支援、寄付等)について、迅速に対応方針を検討・遂行します。特に海外拠点・海外関係会社については、各地域対策本部と連携をとりながら、従業員の安全確保(安否確認、生活支援等)、事業復旧をサポートします。

事業継続の取組み
事業継続計画(BCP)の策定と定期的(年一回)見直し
三菱電機グループは、製品供給者としての責任を果たすべく、全事業所において、2010年度に新型インフルエンザを想定したBCP、2012年度に大規模地震を想定したBCPを策定し、国内・海外の主要関係会社におけるBCPの策定を進めています。
また、BCPを策定している各事業所、国内・海外関係会社では、一度策定したBCPが形骸化しないよう、毎年BCPを見直し、対策の改善を行っています。
サプライチェーンにおける事業継続
三菱電機では、大規模災害等によってサプライヤーが甚大な被害を受け、材料供給が寸断され、三菱電機の生産に支障をきたす事態を避ける取組みを進めています。
調達部品サプライチェーンの可視化と調達リスク軽減に向けた活動
有事の際のサプライチェーン断絶リスクへの備えとして、調達品単位でのサプライチェーンの可視化と複数社購買などの諸施策を実施しています。また、サプライヤー向けにBCPセミナーを開催するなど、防災対策の啓発や支援活動も継続して実施しています。
有事発生時の初動迅速化と対応業務の効率化に向けた活動
調達品サプライチェーン情報の一元管理化や有事発生時のサプライヤー影響調査、回答集計の自動化など、業務の迅速化と効率化に向けた仕組み・システムの再構築を図っています。
災害訓練と対策の見直し
三菱電機グループでは、事業所、関係会社ごとに災害対策マニュアルを策定し、事前対策(減災に向けた対応)と防災訓練を実施しています。
例えば三菱電機の各拠点では、防災訓練のほかに、安否確認システムなどを使った安否確認訓練を行っています。また、データセンター環境を首都圏と関西に二拠点化し、毎年、有事を想定したデータセンターの切り替え訓練を実施しています。
関係会社に対しても、三菱電機内で実施している災害対策と同等の対策を講じるよう指導し、各拠点で訓練等を通じた有事への備えを強化しています。
世界的大流行(パンデミック)への対策
交通手段・交通網の発達や、経済のグローバル化で人の移動が増えたことにより、エボラ出血熱や新型インフルエンザなどの感染症が世界的に流行する(パンデミック)リスクが高まっています。
三菱電機グループの事業のグローバル化が進む中、企業に求められる社会的責任を果たすべく、国内においては新型インフルエンザ等の発生時における①人の安全確保、②社会機能の維持にかかわる事業の継続、③自社の経済的被害の極小化、を目的とした取組み(BCP策定、出張者・駐在者の動態把握、マスク等の備蓄など)を推進しています。海外については、新型インフルエンザを想定したBCPを策定するなど、各国の事情を踏まえた対策を講じるよう指導しています。
海外における安全の確保
三菱電機グループでは、海外安全対策センターが、海外拠点(三菱電機・国内関係会社の海外事業所並びに海外関係会社)と連携しながら、海外出張者の動態把握・安否確認、各種情報発信(外務省や専門機関等から収集した情報に基づく出張規制等)、従業員教育などを行っています。
また、地政学的リスクの観点から、海外各拠点では、有事に備えて退避手順・ルート等を規定する危機管理マニュアルを整備すると共に、海外危機管理コンサル等から週次で関連リスク情報を収集し、関係者と共有しています。
加えて、外務省主催の「海外安全官民協力会議」に参画し、各種企業・団体と情報交換、意見交換を行い、三菱電機及び海外拠点のリスクマネジメント活動に反映させています。
経済安全保障
近年、米中技術覇権争いやロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東全体に拡大するパレスチナ・イスラエルの衝突等を通じて緊張が増す国際社会において、必要な制御策を講じるリスクマネジメントが必要となっています。特に、従来の国際合意に基づく輸出規制にとどまらない各国独自の制度導入(投資、調達、開発、人財、ネットワーク、データ管理等)や、サプライチェーンにおける強制労働や環境問題への要請に対し、政策や規制の背景・意図を俯瞰(ふかん)的に読み解き、ルール形成に関与することも含めたリスクマネジメントが重要となります。
また、地政学リスクが招くサプライチェーンの混乱や重要物資の供給途絶リスク等に対し、事業継続のためには、影響を受けやすい品目・商流の把握と、適切なリスク制御によるサプライチェーンの強靭化が必須となります。
三菱電機グループでは、こうした経済安全保障環境のダイナミックな変化に対応するため、「経済安全保障統括室」を設置しています。また、社内各事業所や事業本部に経済安全保障事務局を設置するとともに、国内関係会社に経済安全保障室、海外関係会社に経済安全保障責任者を配置し、グループ全体の経済安全保障体制を構築しています。
この体制の下、安全保障に係る技術・政策動向や法制度を調査・分析し、全社の情報管理・サプライチェーン・産業政策・ESG/社会倫理に関わる経済安全保障の4側面を俯瞰的な視点から統合的に管理します。
三菱電機が考える経済安全保障の4つの側面
機微技術・情報管理 |
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サプライチェーン把握 |
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産業政策 |
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安全保障の課題とされてこなかった課題(ESG/社会倫理) |
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