人権

人権の尊重に関する考え方

人権の尊重に関する方針

三菱電機グループは、国際的に合意されている人権の保護を支持・尊重することを企業活動の前提として、自らが人権侵害に加担しないことを果たすべき責任と捉えています。

私たちは三菱電機グループの「企業理念」と「私たちの価値観」の精神に則り人権方針を定め、この方針に基づいた活動を行うことにより、三菱電機の事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重し、あらゆる人が尊重される社会の実現に貢献します。

三菱電機グループでは、「人権の尊重に関する方針」に基づき、「あらゆる人の尊重」をマテリアリティとして取組みを進めています。

人権に関する関連方針

三菱電機グループは、個別課題に関してより具体的かつ効果的な取組みを行うため以下の方針を制定し、人権尊重の取組みをより実効性のあるものとするとともに、個別課題への具体的な対応を進めています。

  • Diversity,Equity & Inclusion

人権の尊重に関するマネジメント体制

三菱電機グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等の国際規範に基づいた人権デュー・ディリジェンス等の取組みを進めるため、サステナビリティ委員会及びその下部組織である人権部会(常設)において、人権に関する取組み実績の確認及び方針・計画の検討・承認を受けるなど、PDCAサイクルによる継続的な改善活動を推進しています。人権にまつわる課題は多岐に及ぶため、担当部門を明確にした上で取り組みますが、部門横断的な課題については人権部会で議論し、方向性を決定します。進捗状況はサステナビリティ委員会、執行役会議へ報告するとともに、執行役・取締役会から監督を受ける体制としています。

「人権部会」は、サステナビリティ戦略部長を部会長とし、関係する部門の長で構成されます。また、人権部会構成部門の課長級メンバーによる人権WGでは、人権に関する様々な取組みの実務推進に関する検討を行っています。

2023年度は人権部会を3回、人権WGは11回開催しました。

人権の尊重に関するマネジメント体制

人権の尊重の取組み

人権尊重の取組みの中長期目標・ロードマップ

人権の取組みは多岐にわたり、優先度をつけて取り組む必要があること、また一度で終わる活動ではなく継続的な改善が必要なことなどから、人権部会において人権尊重の取組みの中長期目標・ロードマップを策定しました。

また短期(単年度)では、具体的な取組み項目・KPIを設定し、人権部会やサステナビリティ委員会で実績をフォローしています。

人権の取組みの中長期目標とロードマップ(概略) 人権の取組みの中長期目標とロードマップ(概略)

人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンス

三菱電機グループでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める人権デュー・ディリジェンス(人権DD)を実施しています。
定期的な人権インパクト・アセスメントの実施により三菱電機グループの企業活動における人権への影響を評価し、特定したリスクに対する改善活動を進めています。

人権への負の影響の特定と評価(人権インパクト・アセスメント)

2023年度から、米国のサステナビリティ推進団体であるBSR(Business for Social Responsibility)と協働し、より客観性が高く、グローバル基準に基づいた人権インパクト・アセスメントを実施しています。同インパクト・アセスメントでは、デスクトップリサーチの上、各コーポレート部門へのインタビューなどで三菱電機グループのバリューチェーンにおける潜在的なリスクを抽出し、重要度、発生可能性、事業の関連性という観点から人権課題の優先順位づけを行いました。その結果、ステークホルダーに影響を及ぼす可能性がある潜在的な人権課題のうち、特に優先的に取り組むべき顕著な人権課題を下図のとおり特定しました。

三菱電機グループの事業活動が影響を及ぼす可能性のある人権課題

三菱電機グループの事業活動が影響を及ぼす可能性のある人権課題

人権への負の影響の是正、防止、軽減

前項で特定した人権課題に対し、その発生を未然に防止するための推奨事項がBSRから提示されました。三菱電機グループは、これらの推奨事項に対する改善策を策定し、2024年度から取組みを開始します。三菱電機グループ拠点・サプライチェーンにおいてRBA(Responsible Business Alliance)*のプロセスに基づき人権施策の強化を図っていきます。

  • グローバルサプライチェーンにおいて社会的責任を推進する企業同盟

顕著な人権課題に対する今後の取組み

区分 顕著な人権課題 今後の取組みの概要
従業員 職場環境 ・関係会社全体にわたる長時間労働・ハラスメント等のリスクを低減するため、関係会社の情報を収集の上、管理体制の検討等、国内外グループの管理強化を実施
労働安全衛生

・海外関係会社の安全衛生関連の情報収集、リスク低減策の推進及び情報開示

・請負労働者を含む構内安全衛生組織を通じた安全衛生教育の展開

サプライチェーン

サプライヤー・労働基準

強制・奴隷・債務労働

児童労働

・RBA行動規範を「三菱電機グループサプライチェーン行動規範」として活用し、全取引先に適用

・高リスク取引先への対応ガイドライン策定を検討

・取引先調査への技能実習生関連ヒアリングの組入れを検討

サプライチェーンマネジメント(調達)

製品とサービス プライバシーと情報セキュリティ ・高リスク国における法執行機関等からの個人情報開示要求への対応状況について情報セキュリティ自己点検で確認することを検討

人権の取組みに対する追跡評価

BSRの推奨事項に対する改善活動状況については人権部会にて定期的な確認を行っています。特に、三菱電機グループの製造拠点やサプライヤーにおける労働環境については、RBA-SAQ*を活用し、リスク状況の確認を行います。

  • RBA Self-Assessment Questionnaire

情報開示

上記活動の実績について次年度の統合報告書にて適切に開示します。

これまでの活動 (自己評価に基づく人権 DD)

2021年度に三菱電機、国内関係会社、海外関係会社の合計417拠点で自己評価による「人権インパクト・アセスメント」を実施し、三菱電機グループが今後取組みを強化すべき人権課題の特定と各拠点の取組み状況評価を行いました。

特定した人権課題に対しては、各拠点にて是正施策を実施し、329個抽出された「取組み不十分」項目が2023年度に39個まで減少しました。

主な是正施策

  • 三菱電機が社内で実施しているハラスメント対策やダイバーシティの教育資料を活用し、関係会社でも教育を実施
  • 三菱電機が使用している「CSR調達ガイドライン」を活用し、関係会社の取引先にも人権への配慮を要請

以上の自己評価に基づく改善活動は、2024年度末までに実施完了します。

従業員の人権に関する取組み

基本的な考え方

三菱電機グループは、「三菱電機グループ 行動規範」において、世界人権宣言や国連グローバル・コンパクトの原則として示されている、従業員の基本的な権利を尊重することを定めています。

また、企業として「結社の自由」を尊重するとともに、三菱電機と三菱電機労働組合の間で締結される労働協約において、三菱電機労働組合が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保有することを保障しています。

労働組合との関係

労働協約に基づき以下のことを行っています。

  • 定期的な経営協議会・労働協議会を設け、積極的なコミュニケーションを図っています。
  • ユニオン・ショップ制に基づき、社員は原則、試用期間を経たのち、全員組合員となります(管理職層を除く)。
  • 労働協約の対象ではない従業員の労働条件は、各従業員の雇用形態や同一労働同一賃金関連法を踏まえて設定しています。
  • 国内外関係会社においても、各国・地域の雇用・人事・勤務・賃金・労働時間・入国管理などに関する労働関連法令及び社内規則・手続きを遵守し、健全な労働条件や職場環境の維持・向上に努めます。
  • 事業上の影響により従業員の配転・出向・転籍を行うときは速やかに労働組合へ通知することを定め、配転・出向・転籍となる従業員が大量になる場合は、その基本事項について労働組合と協議することを規定しています。

サプライチェーンにおける人権の取組み、RBA への加盟

サプライヤーに対しては、2018年度から継続的に、人権を含む社会課題への取組みに関する同意取得を行っています。

2024年には、三菱電機グループのサステナビリティ調達において、グローバル基準であるRBA行動規範と自社の取組みを整合させることにより、人権の取組みの客観性・透明性が向上しました。グローバル基準であるRBA行動規範と自社の取組みを整合させ、サステナビリティ調達の取組みの継続的な改善を進めていきます。

RBA

人権に関する法規制対応

三菱電機グループでは、各国で進んでいる企業の人権デュー・ディリジェンス実施に関する法制化に対し、関連部門で連携し、適時適切に対応することとしています。

英国現代奴隷法、豪州現代奴隷法、ノルウェー透明性法、カナダ現代奴隷法に関するステートメントは対外的に公開しています。

人権教育

三菱電機グループでは、様々な機会を捉え、従業員に対して人権に対する教育を実施しています。

研修 内容
階層別研修 新入社員や新任の管理職に対して、人権に関する研修を継続的に実施しています。管理職向けの研修では、受講後、自分の職場において問題が発生していないか管理職の立場から確認することで、従業員が働きやすい職場環境づくりを進めています。

全社教育

(eラーニング)

三菱電機及び国内関係会社の全従業員を対象とするeラーニング「三菱電機グループのサステナビリティ」の中で、人権を取り巻く世界の潮流、人権尊重に取り組む理由、三菱電機グループの人権方針等の教育を実施し、企業が人権尊重に取り組む重要性について従業員が理解を深める機会を提供しています。
ハラスメント研修

ハラスメント行為に関する正しい理解及び適切なコミュニケーションスキルについて実践を促しハラスメントを予防するために、三菱電機グループでは、ハラスメント研修を実施しています。研修では、同性やLGBTQに対するものも含めたパワハラやセクハラ、マタハラ、SOGIハラ等に関する知識だけではなく、具体的な事例を取り上げて紹介しています。

また、社内外の相談窓口を改めて周知し、何か気が付いた時には、報告・連絡ができるよう講義を実施しています。

「三菱電機職場風土改革プログラム」に沿って実施しているハラスメント防止教育eラーニングについては、三菱電機及び国内関係会社の全従業員が受講しています。

人権週間 社内の人権意識啓発を目的として、ビジネスと人権の社会動向や三菱電機の取組み目的を説明したメッセージを人権週間(12月4日~10日)の期間に三菱電機及び国内外関係会社の従業員に配布しています。

苦情処理メカニズム

人権に関する苦情窓口

三菱電機グループは人権に関するお問い合わせ窓口を複数設置し、すべてのステークホルダー(従業員、取引先、顧客、消費者、地域住民など)から365日お問い合わせを受け付けています。また、匿名通報にも対応しています。お問い合わせ窓口には社外窓口であるJaCER*を含む複数の窓口を設置しています。

  • 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した非司法的な苦情処理プラットフォーム

人権に関する苦情への対応

人権リスクに関する個々の通報に対しては、相談内容に応じ、担当部署が速やかに事実関係の確認を行います。三菱電機グループの企業活動による人権侵害行為等が確認された場合は、速やかに是正・改善を行うとともに、被害者への対応、当該事案等を行った者に対する処分検討など、適切な対応を行っています。三菱電機グループの各相談窓口では、問題解決のため、いただいた相談内容を担当部門と共有しますが、関係者との共有は必要最小限となるよう努めています。

通報者が、通報したことを理由に企業や個人から不利益な扱いを受けることはありません。

社外との対話

三菱電機グループの人権課題への取組みを実効性のあるものとするため、有識者や人権NGO等と対話し、人権の取組みに関してのアドバイスをいただいています。

2024年6月、UNDP(国連開発計画)が主催する「ビジネスと人権アカデミー*日本企業向け人権デュー・ディリジェンス研修」の一環として、Alice Cope氏(Pillar Two, 現パートナー)、梅津英明氏(森・濱田松本法律事務所 パートナー)の両氏に、三菱電機グループの人権尊重の取組みについて、三菱電機グループの説明に基づき、概括的なご意見をいただく機会を得ました。

両専門家による上記アカデミーの前回のセッションを踏まえて、今回はセッション実施前に「三菱電機グループ 人権の尊重に関する方針」の改定案について両氏にレビューをお願いし、いただいたコメント、改善提案を最終版に反映するように努めました。

セッションでは、サプライヤーのキャパシティビルディング、サプライヤーやその労働者を含む主要なステークホルダーが苦情処理メカニズムへのアクセスを強化する方法、三菱電機グループ内の様々な部署において、人権の尊重や、それぞれの活動や取引関係に関連しうる人権リスクについてどのように認識を高めるか、といったテーマについても議論しました。

これらの内容は人権部会で議論の上、今後の三菱電機グループの人権尊重の取組みに反映し、継続的な改善を図ります。

  • 国連開発計画(UNDP)の「ビジネスと人権アカデミー」は、国連ビジネスと人権に関する指導原則の実施、特に人権デュー・ディリジェンスの実施に関するガイダンスとアドバイスを提供するための企業サポートです。同アカデミーは、年間約1,300の企業に研修とガイダンス・セッションを提供しています。
Alice Cope氏、梅津英明氏とのセッション Alice Cope氏、梅津英明氏とのセッション