サプライチェーンマネジメント(調達)
調達方針と取引先選定基準
三菱電機グループでは、「資材調達基本方針」をお取引先に説明し、取引先選定評価基準に基づきお取引先を適正に評価することで、調達におけるサプライチェーン上のリスクを低減させています。
取引先選定評価項目には品質・価格・納期・サービス対応のほか、環境規制への取組み、サステナビリティへの取組みを含めています。総合的に評価の高いお取引先から優先的に調達することを基本方針としています。
またサプライチェーン全体の人権と環境の取組みの客観性・透明性を高めるため、2022年2月にグローバルサプライチェーンにおいて社会的責任を推進する企業同盟であるResponsible Business Alliance(以下RBA)に加盟しました。グローバル基準であるRBA行動規範(RBA Code of Conduct)と自社の取組みを整合させ、サステナビリティ調達の取組みの継続的な改善を進めていきます。
調達サプライチェーンマネジメントの推進体制
三菱電機グループは、次のような体制の下、6つの重点活動項目に取り組み、サプライチェーンマネジメントの強靭化を推進しています。

6つの重点活動項目
- 安定調達強化に向けた体制の構築
- 原価企画活動の更なる強化
- 集中購買の拡大
- 調達品質管理の強化
- 活動施策を支える調達プラットホームの強化
- グローバル最適調達の強化
また、グローバル最適調達に向けて、中国、アジア、欧州、米州の4地域の資材企画室を通じ、資材責任者会議等で購買戦略を展開しています。
その他にも調達サプライチェーンにおける労働慣行や環境問題等、多様な問題に対するリスク低減に向けた活動も推進し、BCP(事業継続計画)を強化しています。

- 海外生産拠点が、それぞれの裁量で調達している材料・部品等(原産国にはよらない)。うち、拠点所在国の原産品の調達比率を地産率、拠点所在国以外の原産国からの調達比率を他国産とする。
中長期的な重点活動目標
サプライチェーンにおける重大な人権侵害リスク(強制労働、危険有害労働及び児童労働)の把握と是正に向けた活動の継続
三菱電機グループでは、主要取引先に毎年依頼している調査票への回答を通し、お取引先の強制労働、危険有害労働及び児童労働といった特に重大な人権侵害リスクの有無を個々に判断することでリスクの高いお取引先の特定を継続的に図っています。また、過度な労働時間の削減や最低賃金に対する権利についても三菱電機グループ サプライチェーン行動規範に記載し、調査票にて確認を進めていきます。
RBA準拠の取組みへの移行
三菱電機は2022年2月にRBAに加盟しました。2023年度はRBA行動規範に沿った「三菱電機グループ サプライチェーン行動規範」を制定し、約800社のお取引先に対し、6月と11月の計2回の説明会をオンラインで実施しました。

サプライチェーン全体に向けた苦情処理メカニズムの構築
サプライチェーン上での苦情を受け付け、問題解決に結びつけるための「苦情処理メカニズム」の強化を目的に一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加入し、苦情受付窓口を追加しました。
調達サプライチェーンでの脱炭素に向けた活動の取組み
「環境ビジョン2050」ではバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しています。お取引先での生産時に発生するCO2の削減を把握し、削減を呼び掛けていきます。2023年度は、主要お取引先を対象にカーボンニュートラルへの取組み状況及び温室効果ガス排出量の調査を実施しました。調査結果を基に「バリューチェーンでの温室効果ガス排出量」の精度向上につなげていきます。
調達サプライチェーンにおけるサステナビリティへの取組み強化
社会的な課題への取組み
2009年から人権、労働慣行、安全衛生、法令遵守、製品安全性など、サステナビリティへの取組み状況を取引先評価項目の一つに追加しています。また、2018年にはRBAが策定・公表しているRBA行動規範に由来したCSR調達ガイドラインを制定しました。2023年2月にRBA行動規範に準拠した三菱電機グループ サプライチェーン行動規範を新たに制定し、本行動規範に対する同意確認、及びお取引先調査を推進しています。
環境課題への取組み
2006年以降、三菱電機グループでは、お取引先の環境問題への取組み状況を「グリーン認定制度」により評価してきました。本制度では、三菱電機グループの「グリーン調達基準書」に基づき、お取引先の環境マネジメントシステム認証取得状況や環境関連法規遵守状況、納入品に含有する化学物質管理状況を調査しています。2024年からはRBA行動規範に準拠した調査票を通じて、お取引先の環境問題への取組み状況を適正に評価し、リスクがあると判定されたお取引先には適切なアドバイスを行い、是正いただくことで、リスクを低減させています。
責任ある鉱物調達へ
三菱電機グループでは、以前から紛争鉱物*の取引を資金源としている武装勢力への関与がないように、調達サプライチェーンの透明性の確保を図ってきました。さらに、コバルトの採掘現場において、劣悪な労働環境による人権侵害の可能性があることも重要な問題と認識しています。三菱電機グループでは「経済協力開発機構(OECD)紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューディリジェンスガイダンス」を尊重し、深刻な人権侵害や環境破壊の助長や加担に関与する鉱物を調達サプライチェーンから排除します。
- 経済協力開発機構(OECD)紛争地域及び高リスク地域において採掘される金、錫(スズ)、タンタル、タングステン(米国国務省が資金源と判断する鉱物)
紛争鉱物規制に関する調査実績報告
三菱電機は一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の「責任ある鉱物調達検討会」に参加し、業界団体と連携した本規制への対応を進めています。お取引先への調査は、自動車業界や電気電子業界などが共通的に使用する調査帳票(CMRT*1及びEMRT*2)を使用して行っています。2023年度には、1,178社のお取引先に調査を実施し、927社のお取引先から調査様式の回答を入手しました。
調査の結果、349カ所の製錬所を特定しました。特定した製錬所のうちRMAP*3準拠の製錬所は219カ所でした。引き続き、業界活動等を通じて製錬所のRMAP準拠の活動を推進します。
- 1 責任ある鉱物イニシアチブ発行の紛争鉱物(錫・タンタル・タングステン・金)調査帳票
- 2 責任ある鉱物イニシアチブ発行のコバルト・マイカ調査帳票
- 3 Responsible Minerals Assurance Process:製錬所が扱う鉱物が紛争や人権侵害に加担していない調達源であることを第三者が認定するプログラム
お取引先への依頼事項
三菱電機グループのお取引に対しては、資材調達基本方針及びサプライチェーン行動規範のご理解及び行動規範の遵守に加えて、お取引先のサプライチェーンに対するこれらの周知をお願いしています。特に、新規お取引先につきましては、原則として三菱電機グループ サプライチェーン行動規範をご理解いただいた上、遵守への同意書のご提出をお願いしています。
お取引先に対するサステナビリティへの取組み評価内容と活動実績
取引先調査の基本的な考え方
三菱電機グループでは、お取引先の「グリーン調達基準書」及び「三菱電機グループ サプライチェーン行動規範」の要求事項に対する取組み状況を確認するため、購入額上位80%に含まれる主要お取引先に対し、毎年調査票への回答をお願いしています。お取引先からの回答に対する三菱電機グループでの評価結果をフィードバックするとともに、評価の低い項目があるお取引先とは個別に打ち合わせなどによるコミュニケーションを図り、是正をお願いしています。なお、三菱電機グループ サプライチェーン行動規範の制定に併せ、調査票の様式を2024年に改訂しました。
活動実績
2006年度から国内のお取引先を調査対象としていましたが、2017年度以降は海外のお取引先も対象に加え調査を実施しています。2024年度から開始するRBA行動規範に沿ったRBA調査の実施に向け、2023年度はお取引先への説明等の準備を実施しました。2024年度からは、新しいRBA調査での取引調査と是正活動を推進します。
外国人技能実習生に関する調査
2019年度に三菱電機では生産活動において主要な協力工場390社を対象に外国人技能実習生に関するアンケートを実施し、全社から回答を入手しました。そのうち、136社で技能実習生を採用しており、各お取引先で「優良な実習実施者*」の認定の有無や、実施状況でのリスクの有無について確認しました(「優良な実習実施者」として認定を受けているお取引先は50社)。アンケートの結果、「優良な実習実施者」として認定を受けていない86社中、内24社で「危険物や避難経路など安全衛生上重要な表示は、実習生が理解できる言語で表示されていない」などの改善が必要な項目があることが判明しましたが、技能実習法や労働基準法等、法律に抵触しているお取引先はありませんでした。
改善事項については指導するとともに、引き続き外国人技能実習生に対する人権侵害防止に向け、今後も継続的に活動を推進していきます。
- 外国人技能実習機構による認定制度。技能の修得実績、受け入れ体制、実習生の待遇、法令違反の有無及び実習生の相談・支援体制についての合計得点が満点の6割以上で、「優良な実習実施者」の基準に適合する。「優良な実習実施者」として認定されると、実習期間の延長や受け入れ人数枠が拡大される。
お取引先とのコミュニケーション
三菱電機グループでは、「資材調達基本方針」及び「三菱電機グループ サプライチェーン行動規範」の考え方をご理解・ご賛同いただくため、本社や各事業所において、お取引先への説明会や定期的な意見交換会を実施しています。また、お取引先におけるサステナビリティの取組みの推進に向けて、事業継続計画(BCP)*活動支援や欧州RoHS指令などの化学物質規制管理、コンプライアンス関連(輸出管理、情報セキュリティ管理、下請法等)についても各取引先とコミュニケーションを実施しています。
- 災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。
サプライヤーとのパートナーシップの強化に向けた取組み
三菱電機は内閣府及び経済産業省主催の「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の議論を受けて導入された「パートナーシップ構築宣言」に参画し、2020年7月1日に宣言を発表しました。
この「パートナーシップ構築宣言」における共存共栄の理念に基づき、お取引先との取引慣行改善と、パートナーシップをより一層強化することを目的として、2020年度から取引先満足度アンケートを実施しています。
2023年も前年同様に取引先名の記名方式で、三菱電機の取引姿勢や倫理遵法などに関する全16問の項目で調査を実施しました。
本アンケート調査でお取引先からいただいた回答結果を集計し、調査項目ごとに前年度との比較分析を行い、改善すべき点の抽出と要因分析、三菱電機としての取引態度の是正に活用しています。
こうした活動を今後も継続していくことで、お取引先との取引における潜在的な課題への気づきとして活用させていただくと共に、結果を真摯(しんし)に受け止め、更なる改善を推進していきます。
サプライヤーとの VE(Value Engineering)活動
三菱電機グループでは、開発の源流段階から部品・材料の共同開発を行い、先端技術製品の採用、素材のリサイクル、材料の使用量削減などを実施するVE(Value Engineering)活動をお取引先と一体となって実践しています。
この活動では、小型軽量化による材料の使用量削減や環境に対する負荷低減を推進し、三菱電機とお取引先双方にとって売上げ拡大や技術力の向上につながるWin-Winの関係を構築しています。
特に成果の大きかったお取引先につきましては、三菱電機より表彰を実施しています。
この活動は日本国内のみならず、英国、米国、中国、タイ、インドネシア、メキシコ、インド、コロンビア等のお取引先にも積極的に展開しています。VE講習会における筆記試験・VE実践などにより一定水準に達したことを確認できた受講者には、インストラクター資格を与えるなど、社内外の人財育成にも努めています。


調達関連法規に関する教育の実施
三菱電機グループでは、調達業務に携わる従業員に業務を遂行する上でかかわりのある法令を遵守させるため、調達関連法規に関する様々な教育を行っています。例えば、国内では独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、建設業法など、調達業務に特にかかわりのある法令に関する講座を開催し、遵守徹底に向けた指導・教育を行っています。また、海外においても、贈収賄や横領など、公正な取引に反する行動がないよう、行動指針やチェックシートを使用した指導・教育、調達業務に携わる現地従業員などを対象にした調達関連コンプライアンス教育などを行っています。加えて、各事業所活動情報・指導情報の共有、調達部門従業員向けサステナブル調達教育などを定例で開催し、サステナブル調達への取組みを一層強化しています。
