過去の火星は「ずぶぬれ」だった?
2004年1月25日(日本時間)、火星の赤道直下のメリディニアニ平原に着陸したNASAの火星ローバー「オポチュニティ」。約1ヶ月足らずの観測の結果、NASAの科学者達は3月3日、「メリディアニ平原は過去に『ずぶぬれ』の時期があった」と発表した。
メリディアニ平原が着陸地に選ばれたのは、水があってできる「ヘマタイト(赤鉄鉱)」が広い範囲にわたって露出しているから。「水」に関する情報が得られることが期待される場所なのだ。別名ロボット地質学者といわれるオポチュニティは岩石の成分を調べる観測機器、アームの先の顕微鏡カメラなど9つのカメラ、掘削機まで多彩なツールをもつ。
さっそくオポチュニティは「硫酸塩があること」、地形の特徴として「くぼみ」「BB弾のような小さな球」を発見。(BB弾って公園によく落ちているオモチャの鉄砲玉ですよね。NASAの発表文のBBsという文字に米国製? とビックリ)
硫酸塩のように大量の塩分を含む岩石は、地球上では水の中か、長い間水に晒される環境で作られる。さらに鉄と硫酸塩を含む「ジャロサイト」も見つかったことで、このあたりが酸性の湖か酸性の温泉のような環境であった可能性も。火星人が温泉につかっていたかも・・・。
そしてユニークな形。オポチュニティは2月末に「エル・キャピタン」という岩を徹底的に調査。見えてきたのは「くぼみ」と「BB弾」。まず、くぼみ。エル・キャピタンには深さ1cm、幅2.5mmぐらいの穴がランダムな方向を向いて一面に広がっていた。塩分を含む鉱物の結晶があったのに侵食か溶けたかして無くなってしまった、その跡が穴になったと考えられている。
そして「BB弾」。NASAではブルーベリーとも呼ばれている直径数mmの小さな球。地球上では火山の爆発や隕石の衝突、又は水分が多く穴だらけの岩石から溶けた鉱物が集まってできている。オポチュニティがこれまで調べたところでは特定の地層だけに「BB弾」があるわけではなく、火山噴火や隕石衝突が原因とは考えにくい。だから水分が関わっている可能性もあるのだけれど、まだどうやってできたかはっきりとはわからないらしい。
他にも水が流れてできるような地層も見つかっている。メリディアニ平原に水があったとしたら、「いつ」「どのくらいの期間」「湖だったのか海だったのか」「深さは」など新しい疑問が次々とわいてくる。オポチュニティは文字通り少ない機会で最大限の力を発揮している。3月4日には火星の月、ダイモスが太陽を横切る日食を撮影する予定。火星の1年(687日)で2度しか起こらない珍しい現象。どんな写真が送られてくるか、お楽しみに。