ケミカルリサイクルの従来方式との比較

三菱電機株式会社は、プラスチックのケミカルリサイクルに使用されるマイクロ波加熱において、効率的に加熱処理する制御技術を開発しました。マイクロ波を特定領域へ集中照射し、その領域内で均一に加熱する本技術により、加熱時間を約3分の1に短縮※1し、効率よく再生原料を取り出すことが可能になります。

プラスチックのリサイクル方法には、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルがあります。日本ではプラスチックを燃料として燃やし、その熱を利用するサーマルリサイクルが主流となっていますが、サーキュラーエコノミーの観点から、プラスチックを製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの重要性が高まっています。しかし、選別工程が多く処理可能なプラスチックの種類が限られるマテリアルリサイクルは、プラスチック以外の素材が混在している場合でのリサイクルが困難で、リサイクルしても強度や色調などの品質が低下するため、リサイクル後の用途が限られています。一方、ケミカルリサイクルは化学的に分解するため、異なる素材が混在したプラスチックのリサイクルが可能で品質も維持されますが、他のプラスチックリサイクル方法と同様、加工には大量の電力が必要になります。また、ケミカルリサイクルの従来技術には、電気炉などの外部の反応器※2から熱伝導で加熱する外部加熱方式がありますが、炉全体を温める必要があるため加熱効率が悪いという課題がありました。これに対して、マイクロ波加熱は、直接プラスチックにマイクロ波を当てるため、外部加熱方式に比べて加熱効率は良くなりますが、加熱炉内で生じる反射波が干渉することにより、照射されるマイクロ波が均一ではないため、加熱ムラが発生するという課題がありました。

当社が今回開発した制御技術は、金属で囲まれた狭い空間におけるマイクロ波の強さと広がりを調整することで、特定領域へのマイクロ波の集中照射と、その領域内での均一加熱を可能にしました。これにより、加熱ムラがなくなり、外部加熱方式や従来のマイクロ波加熱に比べて約3分の1の加熱時間で、効率的に再生原料を取り出すことが可能になります。また、電磁波吸収板への世界初※3の独自構造の採用による電磁波吸収板の経年劣化の抑制や、反射波の影響を低減する回路の開発によるプラスチックリサイクルの低消費電力化により、カーボンニュートラルの実現に貢献します。さらに、プラスチックリサイクルの効率化は、新たな原料の採掘などを不要とするため、非再生可能エネルギーを使用する採掘設備でのCO2排出量の削減に加え、資源を有効活用し廃棄物を削減するサーキュラーエコノミーの実現が期待できます。

本技術の詳細は「マイクロウェーブ展2024(MWE2024)」(11月27日~29日、於:パシフィコ横浜)に出展します。



  • ※1

    外部加熱方式や従来のマイクロ波加熱との比較において

  • ※2

    化学物質の製造過程において、化学反応を行うための装置

  • ※3

    2024年11月21日現在、当社調べ