複数の量子コンピューターと従来の古典コンピューターが接続された将来の情報処理基盤のイメージ

三菱電機株式会社は、クオンティニュアム株式会社、慶應義塾大学、ソフトバンク株式会社、三井物産株式会社、国立大学法人横浜国立大学、LQUOM株式会社と7者共同で、拡張性の高い量子情報処理の実用化に向け、複数量子デバイスの実用環境下での接続実証に取り組む共同研究の契約を締結しました。

量子技術は、科学技術の進化の基盤である計算、通信、計測などの情報処理を大きく変革する技術として期待されています。特に計算分野においては、近い将来、有用な量子コンピューターが登場し、従来の古典コンピューターと共存して商業利用が始まる可能性が示唆されています。しかし、有用な量子コンピューターが現れたとしても、装置一台では処理能力に限りがあり、装置の不具合やメンテナンスによりサービスに支障が生じうることから、処理能力の拡張や柔軟な運用管理を可能にする複数装置の接続の実現が求められています。また、量子情報の伝達には微弱な光が用いられますが、装置間の距離が長くなるほど光が失われる確率が高まるため、遠距離間では量子中継と呼ばれる特殊な中継技術が必要といった課題があります。

本共同研究では、複数の量子コンピューターの接続をはじめとする、拡張性の高い量子情報処理技術の研究開発を行います。技術成熟に向けたステップとしては、①同一拠点内を想定した近場での接続、②近隣都市圏での接続、③全世界にわたる量子インターネットの3段階がありますが、本共同研究では、まず①と②の装置・システムの実現に注力します。離れた地点にある複数の量子コンピューターを接続するには、量子もつれ※1状態にあるペアの光子※2を配信し、量子コンピューター間で量子もつれを共有することが必要です。そのため、本共同研究では、量子状態を一定時間保存する量子メモリー※3、通信の長距離化に必要となる量子もつれの交換を行う量子中継装置、量子コンピューター内の量子状態と通信用の光子の高効率変換装置、光子を正確に伝えるための伝送路の安定化や乱れた量子状態の回復を行う装置、これらの量子情報処理装置間を高精度に連携させる制御システムを開発します。そして、各参画機関の強みを活かしながら複数量子コンピューター接続の実証を行い、技術成熟度の向上に取り組みます。②については実用環境のネットワークで評価する必要があることや、周辺地域の大学やスタートアップが保有するアカデミックな先進技術が必要となることから、川崎市、横浜市、神奈川県とも連携した取り組みを進めます。

本共同研究は、仮想的に大規模な量子コンピューターの構成、計算能力の融通と仮想化による量子コンピューターの高効率かつ安定的な稼働、計測情報をスムーズかつセキュアに量子コンピューターに受け渡して処理する総合的な量子情報基盤の構築の実現にそれぞれ結びつくことが期待できます。また、本共同研究を通じて、産学公エコシステムの強化にも貢献します。



  • ※1

    粒子同士に強い結びつきができる現象

  • ※2

    光の粒子で物理学における素粒子の一つ

  • ※3

    量子状態の保存が可能な装置やシステム

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