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2024.06.17

世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で三菱電機が示した進むべき道

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世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で三菱電機が示した進むべき道 世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で三菱電機が示した進むべき道

毎年1月に、米国・ラスベガスで開催されているテクノロジーの見本市「CES」。最先端の技術が披露される世界最大級のイベントに、三菱電機は3年前から全社総合展示として参画し、2024年も三菱電機が持つ最新技術や統合ソリューションを紹介した。その裏にある知られざる苦労や挑戦、そこで得た経験について、社内事務局の三菱電機 国際本部の山本実紀さんと、米国ボストンにある研究開発拠点 Mitsubishi Electric Research Laboratories(MERL)のPhilip V. Orlikさんに伺った。

各国のメディアが注目する最先端の見本市

CESの展示ブースにて。左から、三菱電機 山本実紀さんとMERL Philip V. Orlikさん

ー まずはじめに、CESとはどのようなイベントなのかを教えてください。

Orlik:CESは世界最大級のテクノロジー関連の見本市で、毎年1月、消費者向けに様々な革新的な技術が披露されるイベントです。会場はメインとなるコンベンションセンターのほか、ラスベガス市内各所の施設が会場として使われていて、出展社も来場者も世界各国からやってきます。

ー 展示内容は、製品以外にも技術やサービスなどにも及ぶということでしょうか?

Orlik:そうです。「消費者向け」の見本市なので、私たちの実生活をよりよくするものが出展されているのも特徴です。日本でもそうだと思いますが、米国でも注目度は非常に高く、会期中はテレビやインターネットをはじめ、SNSでも盛んに情報が発信されています。

ー 国際総合展示会のトレンドの起点とも言われているCESですが、三菱電機にとってはどういった位置付けの展示会なのでしょうか?

山本:三菱電機は現在、グループ内外の知見の融合と共創により、進化した統合ソリューションを提供する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革に取り組んでいるところです。CESではそうした当社の最先端技術とソリューションのメッセージを、多くのステークホルダーへ発信する絶好の機会だと捉えています。

ー お二人はどのようにCESの運営に携わっていたのでしょうか?

山本:私は主に運営における日本側の社内調整を担当しました。コンセプトやテーマの立案、ブースレイアウトや展示アイテム選定の議論にも参加しました。

Orlik:私は山本さんをはじめとした日本チームと展示アイテムの会議を行ったり、三菱電機が出展した日本での展示会を訪れ議論を深めたりと、内容は多岐に渡りました。

日米スタッフがともに作り上げた展示会

ー CESは日本と米国のメンバーが共同で作りあげていったと伺いました。その中で意識したことや苦労したことがあればお聞かせください。

Orlik:三菱電機は非常に多様な会社で、日本を含めて様々な国で幅広い製品が作られています。米国だけでも電力流通システムや一般消費者向けの空調機器、自動車などのソリューションや製品があります。その中で、どのようなものを展示し、世の中に驚きを届けられるかの議論には特に力を入れました。

山本:基本的に米国側のスタッフとの会議はオンラインで行われました。ただ、展示アイテムを選定する時は、なるべく日本側米国側双方の意見を取り入れようと心がけました。Philipさんには昨年のCESが終わった2023年春頃から会議に参加していただき、どうすれば当社の思いが最適に届けられるか意見を共有していただいていました。Philipさんは米国在住で、かつ研究者でもあるので、その目線での意見は私たち日本側にとっても新鮮なことが多く、MERLでの研究や米国側の製品や事情を知る良い機会にもなりました。

Orlik:私もできる限り、いまの米国の事情や空気を知ってもらいたいと思っていたので、米国の西海岸や東海岸にある複数の拠点メンバーと一緒にプロジェクトを進めました。

ー CESのブース設計なども、日本のチームは課題に直面することもあったかと思います。そこはどのように解消していったのでしょうか?

山本:今回初めて、ブース施工を担当していただく米国の制作会社の方を日本にお招きし、当社が2023年10月に出展したCEATECやMEToA Ginzaでの展示を見ていただきました。さらに、日本側制作会社含め関係者全員が一堂に会し、打ち合わせを実施することでCESではどのような製品を、どのような表現で伝えたいかというイメージを細かく共有することができ、認識の齟齬を最小限に抑えられました。

Orlik:そうでしたね。コミュニケーションを取り合って進めていましたが、日本と米国のチーム全員がフェイス・トゥ・フェイスで会えたのはCESの開催直前だったので、みんなが一堂に会した瞬間は感動的でしたね。

山本:時差、言語、感覚もギャップがあり、それをどう埋めて、良いものを作り上げるかは、日本のプロジェクトメンバーで色々考えました。Philipさんたちに会えたこともそうですが、CES関係者全員の力の結集によって完成したブースを見た時は心の底からうれしかったです。自分たちが実現したかったことをしっかりと表現できていたと思いますし、大変だったからこそ達成感もひとしおでした。

CES会期直前に行われた懇親会での一コマ

日々の生活をより豊かにする三菱電機の先端技術

ー 次にCESでの展示内容について伺っていきたいのですが、まず、今回のCESで三菱電機はどのようなテーマを掲げていたのでしょうか?

山本:三菱電機が掲げた今年のテーマは「人、先端技術、環境が共栄するサステナブルなSmart Societyを創る」でした。その中で「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「安心・安全」「インクルージョン」「ウェルビーイング」という5つの課題領域に対していかに貢献するかという点にフォーカスしています。当社のどういった技術や製品がCESに適しているかを検討、選定していきました。

Orlik:私は山本さんとは違い研究者なので、そのテーマを受けて「『Smart Societyを創る』とはどういうことか?」という根本的な問いからはじまりました。テーマはあくまで概念や考え方なので、それが伝わるように展示で表現するためには、メッセージをしっかりと理解し、自分の中に落とし込まなければいけません。そこから考えをめぐらし、未来への可能性を見せられるような展示アイテムを提案していきました。

ー そして今年の1月にCESが開催されましたが、特に印象深い展示アイテムがあれば教えてください。あわせて来場者の方々の反応もお聞きしたいです。

二人のうしろに映る「リサイクルDISCO」の展示

山本:出展アイテムは全部で17つでしたが、中でも見どころの一つとしてあげた「リサイクルDISCO」は連日大盛況でした。当社の最先端技術であるプラスチックリサイクル選別技術を、ダンスや音楽を使って体を動かしながら理解していただく仕組みにしました。技術は複雑ですが、体験型の展示にすることで触れやすくゲーム感覚で仕組みを理解して頂くことができます。この展示は国を問わず、多くの来場者の方に興味を持っていただけたと実感しています。

Orlik:カーボンニュートラルの領域に関しては、当社の高効率ヒートポンプ技術を披露しました。ランニングコストの削減につながる上に、環境への影響を少なくできる技術は、多くの人に共感いただけました。ほかにも、三菱電機の技術パートナーと一緒に開発した「Kumo Cloud® + SPAN Smart Panel Integration」という、電力使用の負荷状況に応じて電気を賢く分配するスマートパネルの評判もよかったです。これまでは、家庭でいろいろな電化製品を同時に使うとブレーカーが落ちてしまうようなことがありましたが、このスマートパネルを導入することで、必要なところに無駄なく電気が分配されるようになります。その結果、電気を上手に使うことができ、余った分で電気自動車まで家庭で充電できるようになるんです。

ー 自動車といえば、バイクの展示も話題を呼んでいましたよね?

Orlikさんが跨るLiveWire®社の電動バイク

Orlik:はい。三菱電機の半導体が使われたLiveWire®社製の電動バイクも関心が高かったように思います。エネルギー効率がよく、かつ環境への負荷が少ない移動手段は、私たちが思っているよりも、ずっと早く実現できるはずです。

Changes for the Betterを世界に向けて発信していく意義

ー ほかにも、印象的だった展示やエピソードがあれば教えていただきたいです。

CES会場でのRulerless®の展示

山本:一部のiPhoneシリーズに搭載されているLiDARを使った「Rulerless®」という3 次元計測アプリを展示しました。このアプリはもともと自然災害現場での活用を想定し開発され、その空間を3Dで認識して被害状況を正確かつ簡単に計測できることが特徴です。関心を持っていただいた来場者の方からもコメントや使い方をご提案いただいたことで、「Rulerless®」の可能性が広がったように感じます。

LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、照射したレーザーが跳ね返るまでの時間により対象物までの距離や形状を計測する技術。

ー そうした来場者の方のやりとりの中にも、今後の製品開発のヒントが眠っているわけですね。

Orlik:山本さんのお話のように、各製品に対して、こういったシステムの方がいいんじゃないか、こんな使い方もできるよね、といったフィードバックをいただくことができるんです。それを今後の製品作りに活かせるので、研究者としてもCESは非常に大切な場所だと考えています。

ー 実際にCESに参加してみての感想や手応えを、教えてください。

Orlik:来場された方々からはとてもポジティブな反応をいただきました。それは素直にうれしかったです。皆さまの反応を伺っていると、三菱電機が開発した日本発の技術が、米国、ヨーロッパをはじめとしてグローバルに展開され、循環していき、世界にChanges for the Betterをもたらしていけるのではと感じました

山本:来場者の一部の方は、当社がハードウエアの他にソフトウエア開発にも力を入れていることに対して意外性を持たれていました。ですが今回は幅広くソリューション提案をすることで、当社の新しい可能性を提示できたのではないかと感じています。

ー ありがとうございます。最後に、CESでの経験を、いかに日々の業務へ活かしていくかについて教えてください。

山本:今回のプロジェクトを通じて、各国の方々が注目し期待していることを感じました。ですので、今後もその意識を日常的に持ちながら、グローバル規模の社会課題を解決していけたらと考えています。加えて、こうした世界規模の展示会に総力で臨むことにより、より社内の横通しのコミュニケーションや結束力も強固なものになったと感じています。CESのプロジェクトは社外へのアピールのみならず、社内の環境においても良い効果をもたらしました。今回は国を越えた連携での展示ということで困難も多く、大変なこともありました。今後はグローバル規模でのコミュニケーションにも注力しながら、普段の業務でも人との意思疎通を大切に取り組んでいけたらと思います。

Orlik:米国で生まれ育った私が、なぜ23年間日本の企業である三菱電機で働き続けてきたのかというと、この会社が本当に社会をよくしたいと考え、働く従業員たちもその思いを強く持っているからなのです。CESでも、重要な社会課題に正面から向き合い、5つの課題領域で進むべき道を提示しました。利益だけではなく、世界や社会の発展に尽力する会社の姿勢に、改めて感動しました。これからもそんな会社の一員として、よりよい未来を築くために日々の研究に取り組んでいきたいと思います。

掲載されている情報は、2024年2月時点のものです。

制作: Our Stories編集チーム

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