このページの本文へ

ここから本文

Journals

2024.09.20

活力とゆとりある社会を目指し、「Serendie™」で
新たな価値を共創するDICの挑戦

  • #ピックアップ
  • #インタビュー
  • #共創
  • #神奈川
  • #Serendie
活力とゆとりある社会を目指し、「Serendie™」で新たな価値を共創するDICの挑戦 活力とゆとりある社会を目指し、「Serendie™」で新たな価値を共創するDICの挑戦

三菱電機が展開する、電力、鉄道、空調、工場自動化など、多岐にわたる事業。そこで得られるデータを集約・分析し、事業横断型のサービスを創出するためのデジタル基盤「Serendie™(セレンディ)」の構築が発表された。同時に、三菱電機のDXイノベーションセンター(以下、DIC)では「Serendie」を活用した価値共創プログラムを始動。データと最先端の技術、スペシャリストの創造力が巡り合うことによる、新たな価値の創出を目指している。

今回は、DICの千葉清香(さやか)さんを聞き手に迎え、DICセンター長・朝日宣雄(のぶお)さんと共に「Serendie」がかなえる未来をひも解いていこう。

朝日宣雄(左)千葉清香(右)
  • INTERVIEWEE

    三菱電機 執行役員 DXイノベーションセンター センター長朝日 宣雄(写真左)

    1988年入社。2008年、営業本部 戦略事業開発室長に就任。リビング・デジタルメディア事業本部にて太陽光発電システム事業部 計画部長、リビング・デジタルメディア技術部長などを歴任。2020年、IoT・ライフソリューション新事業推進センター長に就任。2023年4月より現職。

  • INTERVIEWER

    三菱電機 DXイノベーションセンター システム連携企画部千葉 清香(写真右)

    2010年入社。入社時より北海道支社、電力システム製作所、本社にて国内原子力事業の営業を担当。2019年本社異動後は核融合や研究用加速器事業も担当。2021年に営業本部に異動後、デジタルマーケティングの全社推進を担当。2024年より現職。

次世代に向け、今こそDXの推進を

千葉:2022年、三菱電機は「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」を目指すと発表しました。朝日さんは、この構想をどのように受け止められましたか?

朝日:私は1980年代の第2次AIブームの頃に三菱電機に入社し、今でいうDX推進に向けて様々な事業に取り組んできました。2013年にはホームエナジーマネジメントシステム(HEMS)に携わり、スマート事業を推進する初代“スマート部長”に就任し、2020年には、リビング・デジタルメディア事業本部でIoT・ライフソリューション新事業推進センターを立ち上げました。

このセンターを立ち上げるまで、例えばエアコンを製造・販売しても、どこでどのように使われているか分かりませんでした。ですが、IoT技術の進化に伴い、どのモードをどの季節に使っているのか、深夜にはどう使われているのかなど、データを取得できるようになりました。そして、集めたデータがより良い製品開発、新たなソリューション提案にもつながっていきました。

こうした中、お客様のデータを集積し、三菱電機グループが連携して技術と知見を活かして社会課題を解決する、循環型 デジタル・エンジニアリング企業を目指すという指針が2022年に打ち出されました。それはまさにこれまで私たちが続けてきたことで、培ってきた経験を全社展開できることはとても良いと感じましたし、DIC初代センター長に就任したからには、それまでの知見を全て出し切ろうと思いました。

千葉:私は2022年の発表当時、全社に対してデジタルマーケティングを推進する部署に在籍していました。デジタルマーケティングは、デジタル上のデータやツールを活用しながらオフライン/オンライン共にお客様との継続的な関係性を築くためのものです。循環型 デジタル・エンジニアリング企業の理念とも近く、デジタル上で得られるデータを活用していくということに大きな意義を感じました。

ただ、従来型の対面に重きを置く商慣習が定着している事業領域に、オンライン上のデータを活用するデジタルマーケティングを浸透させていくには大きな障壁があったのも事実です。朝日さんも、社内外に循環型 デジタル・エンジニアリング企業の理念を知っていただくのは苦労されたのではないでしょうか。

朝日:そうですね。確かにこうした変革には困難が伴います。ただグローバルな視点で見ると、日本の、そして三菱電機のDXは遅れを取っています。三菱電機は2021年に創立100周年を迎えましたが、これまでの体制やルールを大きく変えなければ、近い将来厳しい状況になるでしょう。

世代によって受け止め方は違うと思いますが、DX推進は喫緊の課題です。社員一人ひとりが変革の必要性を理解し、自分ごととして活動に参画していただきたいですね。

「どう作るか」ではなく「何を作るか」に集中する

千葉:循環型 デジタル・エンジニアリング企業への変革を加速させるため、デジタル基盤「Serendie」を構築しました。具体的にどのようなものか想像できない方もいらっしゃると思うのですが、こちらはどういうものなのでしょうか。

朝日:「Serendie」は4つの技術基盤と、共創基盤、人財基盤、プロジェクト推進基盤から成るプラットフォームです。

各事業本部が循環型 デジタル・エンジニアリング企業を実現するために、それぞれが自前でツールを用意することもできるでしょう。ただ、それでは縦割り構造から脱却できません。そこでデータ集積や分析ツール、WebAPIを共通化したのが、「Serendie」最大の特徴です。

千葉:「Serendie」は、どのような発想から生まれたのでしょうか。

朝日:循環型 デジタル・エンジニアリング企業の命題は、縦割り組織に起こりがちなサイロ化を排除し、みんなの知識を寄せ集めて新しいソリューションを生み出すことです。その際、陥りがちなのが「どのように実現するか」、つまり“How”を起点とした考え方です。

どのようにデータを集めて分析するのか。どのようにソフトウェアを作るのか。こうした“How”を解決するには時間がかかります。そこで「Serendie」では「How=どう作るか」の手段として汎用ツールを作ることにしました。

共通で使える手段を用意できたので、皆さんは「何を作るか」に集中できる。また、「何を作るか」を考える際には、みんなの知恵を借りればいい。こうした新たな価値の共創を目指して「Serendie」を構築しました。

千葉:昨今、様々な企業でもデジタルデータを集約し活用するソリューションサービスの開発は進んでいます。「Serendie」独自の強みは、どこにあるのでしょうか。

朝日:技術基盤には世界中で使われている汎用ツールを使用するため、大きな差別化はできないかもしれません。ですが、三菱電機は広い領域で事業を展開するコングロマリット企業なので、そこに強みがあると考えています。三菱電機の事業ドメインは多岐にわたり、各領域で高い技術力や知見を有しています。しかも、パートナー企業とのネットワークも緊密です。

そのため、「この事業とこの事業を組み合わせたら、面白いことができるかもしれない」という可能性も無限にあります。こうした事業領域の多角性、ネットワークの広さが三菱電機の独自性であり、「Serendie」による価値共創でも大きなストロングポイントになると考えています。

千葉:社内外から「Serendie」を活用したいという声が上がると思います。その場合、どのようなステップを踏めばいいのでしょうか。

朝日:ステップと言えるほどのものはありません。まずは、「Serendie Street」へお越しください。「人、データ、技術との偶発的な出会いから熱量が生まれ、未知なる価値を創出する実験とひらめきの共創空間」を「Serendie Street(横浜の拠点はSerendie Street Yokohama)」と定義しています。当社・お客様・パートナーの皆さまとの共創を推進していくための場である「Serendie Street」にお越しいただき、何を作るかについて話しましょう。ワークフローなど、面倒なことは何も要りません(笑)。

DXは楽をするための技術

千葉:「Serendie」を提供することで、社会にどのような貢献ができると考えられていますか?

朝日:健康でありたい、おいしいものを食べたい、趣味を楽しみたい。皆さんには、いろいろな願いがあると思います。そのような中で、私たちが抱える最大の問題は「時間がない」ことではないでしょうか。

今、世の中が複雑化したことで様々な仕事が増えています。さらに、先進国を中心に少子化が進み、労働人口も減っています。だからこそ、生成AI、ロボット、コンピュータなどによる自動化の推進が、豊かな生活、より良い社会につながると私は考えています。

日本人はみんな真面目ですよね。少し極端な言い方ですが、DXはサボるための技術だと私は思っています。これまでの手作業はコンピュータに任せ、とにかく楽をする。「Serendie」も含め、DXイノベーションを通じて、人が気楽に生きられる世界を作りたい、というのが私の本音です。

千葉:DXにより今抱えている仕事に追加で負荷がかかるように感じる方もいますが、そうではなく任せていくことで、先々まで見据えれば必ず楽になる。「DXが楽をするための技術」というのは、納得感がありますね。こうした取り組みを進める上で、朝日さんご自身が日々意識していることはありますか?

朝日:現在のAIは、とにかくたくさんの知識を学ばせることで賢くなっていきます。このアルゴリズムは、人間の脳とほぼ同じです。「Serendie」では、データと技術力、創造力の偶発的な出会いから新たな価値を生み出しますが、われわれ人間もインプットが多い方が良い知恵が生まれます。私もできる限りインプットを豊富にしようと努力しています。

また、DICセンター長としては、できるだけフラットに皆さんと議論したいと考えています。ストーリー作りから技術面のアドバイスまで幅広く行う、“歌って踊れるセンター長”を目指しています(笑)。

DICの活動は未来へのバトン

DIC内に掲示されている「DIC Principles」

千葉:DICでは、共通の文化を醸成していくことを目的に、行動・タスク・目標・組織理念に関する指針として、DICメンバーで議論して設定した12の「DIC Principles」を掲げていますが、その中で、朝日さんがお好きな言葉はありますか?

朝日:仲間を信じ、仲間を裏切らない」です。これまで様々な新組織の立ち上げに関わってきましたが、やはりメンバーの能力、人柄を信じることが最も重要でした。

千葉:私は「プロフェッショナルであることを常に意識する」という言葉にハッとしました。組織に甘えるのではなく、一人ひとりがプロだと意識することの大切さを改めて感じました。

  • 様々なエリアが存在するSerendie Street Yokohama内。「STADIUM」は、お客様も集まる打ち合わせスペース
  • スクラム活動を行う共創エリア「CHIGASAKI」

朝日:だからこそ、仲間を信じられるんですよね。究極を言えば、DICに限らず、「Serendie Street」を訪れた方々、三菱電機グループやパートナー企業の皆さん、お客様も仲間です。それぞれが自分の能力を活かせるよう、やりがいのある仕事を作っていきたいですし、それがより良い社会づくりにつながっていくのではないでしょうか。

「Serendie」は、おそらくこの先何十年も続いていくものではないと思っています。大事なのは、関わったメンバーにここでの記憶が残れば、次世代にバトンとして渡すことができるということです。この経験を活かせば、常に時代に即した新しいアクティビティを起こし、全社、グループを束ねるような形で発展させていけると思っています。

掲載されている情報は、2024年7月時点のものです。

制作: Our Stories編集チーム

この記事をシェア