Project 05
一歩先を見据えた研究開発で、
快適と省エネを両立した空間をつくる。
ATW事業で
「地球の明日」を
つくりたい
ATWとは“Air To Water”の頭文字をとったもので、空気の熱を利用して作った温水を通して
暖房・給湯するシステムのことです。
欧州各国で脱炭素の機運が高まる中、注目を集めているATW事業。
三菱電機は2006年よりATWの開発に着手し、環境に優しい暖房・給湯機などの開発を進めてきました。
従来の化石燃料に代わって「空気」を熱源にした新たな挑戦。
プロジェクトの第一線で活躍する営業担当と開発者、双方の視点から語ってもらいます。
化石燃料を燃やすのではなく、「空気」そのものを熱源にする。
CO2排出量を抑えながら、人々の温かい暮らしを支える新技術。
ATWの新機種「PUZ」
のココがポイント!
ATWのさらなる進化で業界トップクラスの
高温給湯を実現。
「音」の面でも改良し、より暮らしに寄り添う家電に。
2006年から開発に着手し、2007年からATW事業に参入した三菱電機。現在は、ATWの新機種「PUZ」の販売に向けて準備を進めている。「PUZ」のポイントのひとつは出湯温度の高さだ。ATW事業において業界トップクラスの出湯温度70度を達成し、外気温が-30度になる北欧でも有力な暖房として機能する。
さらにPUZでは、室外機のさらなる静音化に成功。欧州においては、隣地から測定した際の騒音を一定以下に抑える規制がある国も存在し、室外機の静かさが空調能力と同等に重視される傾向がある。その文化を踏まえ、海外の販売会社のニーズに応えた静音性を実現した。
Interview
社員インタビュー
世界的な環境意識の高まりに、
テクノロジーで応える。
常に挑戦心を持って、業界の“常識”を塗り替えたい。
「今日、欧州各国で環境に対する意識が大きく高まっています」
語り始めたのは営業部の渡邊だ。空調海外企画課として、海外にある販売会社と製作所の間に立ち、展開する製品の仕様などをまとめる業務を行っている。
「従来、欧州における空調の主流は、ガスボイラーやオイルボイラーなど化石燃料を燃焼させ、CO2の排出を伴うものが一般的でした。しかし現在は、ヨーロッパ各国における環境意識の高まりから、空調の分野でも化石燃料の使用が規制され始めています。そうした動きの中で、当社は環境負荷が小さいヒートポンプ方式の空調を展開し、欧州を中心に需要が伸びているのです」(渡邊)
製造部の外川が続ける。
「当社は、環境に優しく高性能な新機種投入によるラインアップ強化に努めています。ATWの供給力向上を図り、今後のさらなる需要増加に応えるため、ATWの新機種『PUZ』のプロジェクトに取組んでいます」(外川)
外川は技術第二課として、「PUZ」の設計・開発に携わっている。新機種のPUZの魅力は、ATW以外の側面でも環境に優しい構造を採用している。
「エアコンでは、温度調節のためにフロンなどの冷媒ガスを用います。ガスの圧力を上下させて状態を変化させることで、室内の空気の熱を奪ったり逆に与えたりする仕組みです。空調能力が高いエアコンほど多くの冷媒ガスを使用しますが、環境への負荷を考慮すると、冷媒ガスは可能な限り減らしたいところ。その点、「PUZ」は現行機種と比較して大幅な冷媒ガスの削減を実現し、他社製品と比べてもトップクラス。非常に環境に優しい機種なんです」(外川)
それぞれの文化にフィットする製品を開発したい。
日本とは異なる「音」へのこだわりを、
チームワークで乗り越えた。
プロジェクトの山場は「海外の販売会社のニーズに応えること」だった。特に難しかったのが、“静音性”の実現だ。
「PUD(PUZの前機種)の室外機が発する動作音を半分の音量にまで下げてほしいという販売会社からの要望がありました。さらに「音」は、机上で計算しづらい分野ですから、実機を組み立てて試験をしないと結果が分からないというハードルがあります。試験結果をもとに分析をし、また実機を組み直して改善して……という、非常に地道な努力が求められました。どの部分を改善すれば音が下がるのか、要因を分析するのに苦労しましたが、チーム内で多くの議論を重ね、なんとか乗り切ることができました」(外川)
「営業・設計・製造のチームが一丸となり、試行錯誤を行うことで市場ニーズにマッチした仕様を実現することができ、販売会社からの要望を満たす製品仕様にまとめることができたと感じています」(渡邊)
日本とは異なる「音」へのこだわり。文化は異なれど、一人ひとりのお客様の立場に立って製品開発に挑むのが三菱電機のスタンスだ。チームプレーで高いハードルを乗り越えた二人は、達成感あふれる笑みでお互いの健闘をたたえ合った。
一人ひとりの暮らしを変えれば、大きな課題も解決できる。
私たち三菱電機が誇る日本の技術で、一歩ずつ世界を変えていく。
ATW事業を通じて、環境問題という社会課題の解決に挑戦する三菱電機。その基盤には、「ATWを通じて、社会課題解決の一翼を担えることをうれしく思う」という社員たちの熱い思いとモチベーションがある。
環境問題を自分事として意識するようになったのは、三菱電機に入社し、ATW事業に携わってからだと言う。
「環境に優しい三菱電機のATWを市場に広めることが、温暖化を防ぐ鍵になる」と熱意を語った。(渡邊)
「三菱電機の製品を通じて世界規模の社会課題を解決し、世の中をより良くしていく。それが私たちの使命であり、誇りだと考えている」(外川)
最後に、これからの展望を聞いた。
「まずは、『PUZ』の市場投入をスムーズに立ち上げることが目先の目標です。そのために販促物制作や販売会社への製品情報提供等、販売に向けての準備を前もって進めることは、商品を広く使っていただくための重要なプロセスとなります。質の高い『PUZ』を提供することで、より多くの方に喜んでもらい、欧州でのマーケットシェアを高めたいと考えます」(渡邊)
「『PUZ』はこれまでの製品を圧倒できる性能を備えていると自負しています。『PUZ』で取り入れた技術を、ほかの製品にも展開していきたいです。そして、三菱電機のさらなる飛躍につなげたいと考えます」(外川)
環境問題の規模は大きく、解決は一気には進まない。しかし、世界中に暮らす一人ひとりの生活を少しずつ変えていくことで、その解決の糸口が見えてくるはずだ。三菱電機は環境に優しい製品の開発を通じ、それぞれの暮らしにアプローチし、世界規模での環境問題の解決を目指していく。
※記事、所属・役職及び写真は取材当時のものです。