DXイノベーションを推進する共創空間「Serendie Street Yokohama」を横浜・みなとみらいに新設。
顧客・パートナーとオープニングイベントを開催
2025.03.12
三菱電機株式会社は2025年1月17日、横浜アイマークプレイス内に従業員と顧客・パートナー企業が共同で利用できる共創空間「Serendie Street Yokohama」をオープンした。同社の新たなデジタル基盤「Serendie®」を推進する一環との位置づけだ。Serendie Street Yokohamaのオープニングイベントで行われた多数のセッションと多彩な展示から、Serendie®事業の道筋が見えてきた。
「アイデアを持ち寄って新しい価値を作る場に」
「我々のビジネスモデル変革の象徴としてSerendie Street Yokohamaの共創空間を開設しました。実際に見ていただいて、何を狙っているのかを感じとってほしいと思います」。三菱電機 常務執行役 CDOの武田聡氏はオープニングイベントの冒頭でこう語りました。
事業活動ではさまざまなデータが生まれます。三菱電機では、これらを分析して、課題を発見し、付加価値として現場にフィードバックしていく「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革に舵を切っています。とはいえ、複雑化が進む現代では三菱電機が単体でソリューションを作り上げていくことは難しく、データや現場を持つ顧客やパートナー企業と共創する必要性が高まっています。そうした共創へと社内外のマインドセットを変革するために整備して新しくオープンしたのが、Serendie Street Yokohamaという共創空間です。
事業活動ではさまざまなデータが生まれます。三菱電機では、これらを分析して、課題を発見し、付加価値として現場にフィードバックしていく「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革に舵を切っています。とはいえ、複雑化が進む現代では三菱電機が単体でソリューションを作り上げていくことは難しく、データや現場を持つ顧客やパートナー企業と共創する必要性が高まっています。そうした共創へと社内外のマインドセットを変革するために整備して新しくオープンしたのが、Serendie Street Yokohamaという共創空間です。

三菱電機の武田聡・常務執行役 CDO
「Serendie Street Yokohamaには、いろいろな人が出会って会話をしやすいようなコンセプトが散りばめられています。三菱電機の社員だけでなく、パートナーやお客様がアイデアを持ち寄って新しい価値を作る場にしたいと考えています。Serendie®の語源の1つでもあるセレンディピティ(偶然の出会い)によるインスピレーションから、新しいひらめきが生まれることを期待しています」(武田氏)
Serendie Street Yokohamaは、三菱電機の一般的なイメージとは少し異なったデザインを採用。明るくオープンな雰囲気を持つ共創空間やプロジェクトルームを設けています。そうした新しい空間で顧客やパートナーと共創を加速することで、「三菱電機のマインドセットを早く変えていきたいと思っています」(武田氏)と意気込みを語りました。
Serendie Street Yokohamaは、三菱電機の一般的なイメージとは少し異なったデザインを採用。明るくオープンな雰囲気を持つ共創空間やプロジェクトルームを設けています。そうした新しい空間で顧客やパートナーと共創を加速することで、「三菱電機のマインドセットを早く変えていきたいと思っています」(武田氏)と意気込みを語りました。
「思い描いていた共創空間が完成した」
本イベントは報道関係者向けの前半、顧客・パートナー企業を招待した後半の2部制で実施。第2部の冒頭では、三菱電機 執行役員 DXイノベーションセンター(DIC) センター長の朝日宣雄氏が、「私たちが思い描いていた共創空間が今日完成しました。皆さんにご活用いただいて、新しい未来を作っていただきたいです」と語りかけました。

三菱電機の朝日宣雄・執行役員 DXイノベーションセンター長
2023年4月にデジタルソリューション事業を創出・推進するため、DICが設置されてから約2年。共創の思いを具体化する空間を、顧客やパートナー企業にもうまく活用してもらいたいという願いが込められています。DICではオフィススペースなどにすでに共創のためのデザインを採り入れていて、「空間が変わると、人々の発言が変わることを実感しています」(朝日氏)というように、その変化を顧客やパートナー企業にも体感してもらいたいとの考えです。
「マインドセットが変わる空間に」
空間をデザインしたKESIKI Inc.から代表取締役CDOの石川俊祐氏が登壇し、トークセッションも行われました。「偶然に出会えるYOKOCHO、自由自在に創作と展示ができるGARAGE、皆さんの出会いを促すCIRCLE、事業のタネを伸ばすFIELDという4つの空間を設けました。見た目のデザインを作るだけでなく、Serendie®の活動が社内外に浸透するためのアイデンティティを示し、多様な人々のコラボレーションを象徴し、場における人と人の出会いを促す仕掛けとしてのデザインを考案しました」(石川氏)

Serendie Street Yokohamaのフロアマップ
三菱電機 DIC副センター長の竹田昌弘氏は、「人と人が出会える場が、オフィスの中にあると良いと思っていました。KESIKIの皆さんとはヨーロッパで数十にも上るオフィスの見学をしに行き、印象に残ったオフィスのいいとこ取りをさせてもらったのが今回の共創空間です」と経緯を振り返りました。
石川氏も欧州視察からインスピレーションを得たようで「デンマークのインキュベーション施設で、定期的にエントランスのアート作品の展示を入れ替え、エントランス空間を変化させていく取り組みが印象的でした。マインドセットをリセットする方法としての環境の変化に注目しました」(石川氏)。その考え方はSerendie Street YokohamaのGARAGEエリアにおいて、展示を自由に組み替えられる仕組みに反映されています。
石川氏も欧州視察からインスピレーションを得たようで「デンマークのインキュベーション施設で、定期的にエントランスのアート作品の展示を入れ替え、エントランス空間を変化させていく取り組みが印象的でした。マインドセットをリセットする方法としての環境の変化に注目しました」(石川氏)。その考え方はSerendie Street YokohamaのGARAGEエリアにおいて、展示を自由に組み替えられる仕組みに反映されています。

KESIKIの石川俊祐・代表取締役CDO(左)、三菱電機の飯澤大介・DICシステム連携企画部 次長
DICシステム連携企画部 次長の飯澤大介氏も、「いろんなアプローチを採って、入った瞬間に居心地が良いと感じる空間を作ったつもりです。ここに来るとマインドセットが変わるということが大事です。お風呂で思わず鼻歌が出て新しいことを思いつくように、ここに来た人に普段できないことが起こるような空間になるといいと思っています」と、Serendie Street Yokohamaが提供する価値に大きく期待しています。
全国に広がるSerendie®のFA事業。データ収集→可視化→データ利活用で好循環に
Serendie Street Yokohamaがオープンする1年ほど前から、Serendie®の取り組みは進められてきました。その成果について、FAシステム事業本部 FA本DX推進プロジェクトグループマネージャーの冨永博之氏と現場担当者らが登壇し説明しました。

三菱電機の冨永博之・FAシステム事業本部 FA本DX推進プロジェクトグループマネージャー
「ファクトリーオートメーション(FA)分野で本当に使えるデータ利活用ソリューションはこれまでありませんでした。ですから、現場側の視点から自分たちで作ることにしました。データを構造化データとして徹底的に標準化し、可視化、データ活用につなげています。すでに三菱電機の全国の生産現場での活用が広がっています」(富永氏)
FAのデータ化の課題として富永氏は、これまで業務ごとに個別最適化したシステムが出来上がり、サイロ化していたことを指摘。これでは会社としての生産活動の改善につながらないので、データ収集から蓄積、利活用までをワンストップで実現できるソリューションを開発したのです。さらに富永氏は、「検討から導入まで、早くても3カ月かかるようなソリューションの導入が、1時間といった短時間で実現できることも評価されています。可視化、分析ツールを使うことでお客様からは自分たちで気づかなかったことが簡単に見つけられたという声が上がっています」と成果を強調しました。
FAのデータ化の課題として富永氏は、これまで業務ごとに個別最適化したシステムが出来上がり、サイロ化していたことを指摘。これでは会社としての生産活動の改善につながらないので、データ収集から蓄積、利活用までをワンストップで実現できるソリューションを開発したのです。さらに富永氏は、「検討から導入まで、早くても3カ月かかるようなソリューションの導入が、1時間といった短時間で実現できることも評価されています。可視化、分析ツールを使うことでお客様からは自分たちで気づかなかったことが簡単に見つけられたという声が上がっています」と成果を強調しました。
AI、下水処理、自動運転、翻訳サイネージなど研究開発が続々と
研究開発の事例紹介もありました。上席執行役員で開発本部長の岡徹氏は「三菱電機には幅広い事業があり、多くの技術アセットがあります。しかし社会課題の解決には1社だけでは限界があり、パートナーやお客様と共創することで新しい価値を生み出していきたいです」と抱負を語りました。

研究開発の取り組みを紹介する三菱電機の岡徹・上席執行役員 開発本部長
岡氏は、研究開発の結果として、4つの事例を紹介しました。
1つ目が「教師データの作成が不要な行動分析AI」です。現場作業の改善に用いるもので、AIモデル作成時の教師データ作成を不要にする仕組みを採り入れることで、「分析時間を最大99%短縮できました」(岡氏)といいます。
2つ目は「AIを用いた下水処理場の運転操作支援」で、下水処理場の最適なオペレーションについて熟練操作員のノウハウを学習したAIを活用します。
3つ目は、「物流向けの自動運転ソリューション Hub Pilot」。物流の人手不足に対応するための自動運転ソリューションをバーチャル空間上のデジタルツインで検証可能にし、システム開発を加速させます。
最後に紹介したのが「生産現場向けソリューション」です。母語が異なる従業員が多い現場での円滑なコミュニケーションを目的とし、デザイン思考の取り組みで課題探索のエスノグラフィーを実施。UI/UXデザインを工夫し、多言語の翻訳、表示が可能な「翻訳サイネージ」の開発につなげました。
岡氏は、「Serendie Street Yokohamaを活用して、技術と出会いから生まれる共創により、より高い価値を目指していきます」と、今後の研究開発の方針を語りました。
1つ目が「教師データの作成が不要な行動分析AI」です。現場作業の改善に用いるもので、AIモデル作成時の教師データ作成を不要にする仕組みを採り入れることで、「分析時間を最大99%短縮できました」(岡氏)といいます。
2つ目は「AIを用いた下水処理場の運転操作支援」で、下水処理場の最適なオペレーションについて熟練操作員のノウハウを学習したAIを活用します。
3つ目は、「物流向けの自動運転ソリューション Hub Pilot」。物流の人手不足に対応するための自動運転ソリューションをバーチャル空間上のデジタルツインで検証可能にし、システム開発を加速させます。
最後に紹介したのが「生産現場向けソリューション」です。母語が異なる従業員が多い現場での円滑なコミュニケーションを目的とし、デザイン思考の取り組みで課題探索のエスノグラフィーを実施。UI/UXデザインを工夫し、多言語の翻訳、表示が可能な「翻訳サイネージ」の開発につなげました。
岡氏は、「Serendie Street Yokohamaを活用して、技術と出会いから生まれる共創により、より高い価値を目指していきます」と、今後の研究開発の方針を語りました。
Serendie®を通じ、電力・CO₂の大幅な削減に成功した東京メトロ
「Serendie®の共創により、CO₂削減にもつながり、CO₂ゼロチャレンジに大きく寄与できるソリューションができました」。こう語るのは、顧客の代表として登壇した東京地下鉄株式会社(東京メトロ) 鉄道本部 電気部 プロジェクト設計担当部長の横田政明氏です。
東京メトロではCO₂ゼロチャレンジに向けて、「変電所電圧変更による回生電力有効活用」の実現を目指してきました。回生電力とは、電車が減速するときにモーターをブレーキとして使うことで発生する電力のことで、電車線に戻して、他の電車の走行のための電力として用います。
東京メトロではCO₂ゼロチャレンジに向けて、「変電所電圧変更による回生電力有効活用」の実現を目指してきました。回生電力とは、電車が減速するときにモーターをブレーキとして使うことで発生する電力のことで、電車線に戻して、他の電車の走行のための電力として用います。

東京メトロの横田政明・鉄道本部 電気部 プロジェクト設計担当部長
電車線では、力行(りっこう)や回生の影響で電圧が変動するなか、1,500Vを中心とした一定の幅に制御する必要があります。しかし在線パターンは無数にあるため、電車線電圧の分布幅を測定することはできませんでした。
「三菱電機の『車両情報監視・分析システム(TIMA)』により電車線電圧データの取得が可能になり、さらにSerendie®を活用しデータ分析を行うことで、エネルギーロスが発生している部分や、電圧を下げる余地がある部分を可視化することができました」(横田氏)
当初、有楽町線でデータ分析をしたところ、目論見通りに電圧状況が可視化できたといいます。「可視化した結果を分析し、三菱電機と協力して変電所の運用方法を変えることで、年間87万kWh、約2,700万円の削減効果が得られました」と横田氏は成果を説明します。この後、その他の路線でもデータ分析と対策を施すことで、「年間487万kWh、1億4,000万円ほどの電力削減効果が得られ、結果としてCO₂削減に貢献できています」(横田氏)。今後も、三菱電機との共創により社会課題の解決に力を入れていきたい意向です。
「三菱電機の『車両情報監視・分析システム(TIMA)』により電車線電圧データの取得が可能になり、さらにSerendie®を活用しデータ分析を行うことで、エネルギーロスが発生している部分や、電圧を下げる余地がある部分を可視化することができました」(横田氏)
当初、有楽町線でデータ分析をしたところ、目論見通りに電圧状況が可視化できたといいます。「可視化した結果を分析し、三菱電機と協力して変電所の運用方法を変えることで、年間87万kWh、約2,700万円の削減効果が得られました」と横田氏は成果を説明します。この後、その他の路線でもデータ分析と対策を施すことで、「年間487万kWh、1億4,000万円ほどの電力削減効果が得られ、結果としてCO₂削減に貢献できています」(横田氏)。今後も、三菱電機との共創により社会課題の解決に力を入れていきたい意向です。
「ここからがSerendie®の本格的なスタート」など、期待が込められた祝辞
Serendie®を共に推進するパートナー企業は、どのように新しい共創空間を受け入れているのでしょうか。アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS) エンタープライズ事業統括本部 ハイテク・製造・自動車産業 営業本部 製造営業部 部長の小川達郎氏は、「2019年に(現DICセンター長の)朝日さんにAWSのイベントに登壇してもらい、AWSと一緒にビジネスを推進していくと発信してもらいました。その時から、会社を超えた共創の場があるといいと話をしてきましたが、6年越しでその思いが具体化したこの場に立ち会えてうれしく思っています」と胸の内を明かしました。「ここからがSerendie®の本格的なスタートだと思うので、今後も三菱電機のビジネスを支援していきたいと思います」(小川氏)

AWSの小川達郎・エンタープライズ事業統括本部 ハイテク・製造・自動車産業 営業本部 製造営業部 部長
ソニー株式会社 インキュベーションセンター インキュベーション推進部門 事業インキュベーション部 統括部長の金丸将宏氏は、「ソニーは、この場所のすぐ近くに横浜オフィスを設けています。今後三菱電機と連携を深められるように、接点を持たせてもらった格好です。まだ三菱電機と連携したインキュベーション案件はありませんが、ハードルが低くコミュニケーションできる場所ができたことは大切だと思います」とSerendie Street Yokohamaの印象を述べます。さらに、「インキュベーションするときに、チームメンバーの力が重要です。熱い思いがあるDICの皆さんとソニーが連携できるネタを考えて、この共創空間に来る理由をどんどん作っていきたいと思います」(金丸氏)と活用の推進を誓いました。

ソニーの金丸将宏・インキュベーションセンター インキュベーション推進部門 事業インキュベーション部 統括部長
KDDIでアジャイル開発を推進してきた部隊がスピンオフして設立した、KDDIアジャイル開発センター株式会社で開発戦略本部 副本部長を務める田原裕宣氏はこう語りました。「DX推進で、三菱電機には価値創出の支援をさせてもらっています。すでに名古屋製作所ではエンジニアの育成などについて協業していて、横浜でも協働が始まっています。DXを始めるという三菱電機の熱い思いや刺激をもらいながら、エキサイティングな日々を過ごしています」。そうした伴走の経験からも「Serendie Street Yokohamaが日本のDXや共創の聖地と呼ばれるようになることを願っています」(田原氏)と三菱電機にエールを送りました。

KDDIアジャイル開発センターの田原裕宣・開発戦略本部 副本部長
横浜から世界へ、DXによるイノベーションを届ける決意
イベントは、CIRCLEのステージを中心に、実験とアイデア展示の空間であるGARAGEまで広げて行われました。CIRCLEでは、顧客やパートナー企業の来場者と共創へと歩き出した三菱電機の社員が所狭しと歓談し、新しい異文化交流の場を楽しんでいました。

Serendie®に関わる展示物が並べられたGARAGE。事業説明を通してアイデア創出などの会話が弾んだ

大勢の来場者でにぎわうCIRCLE
GARAGEには、これまでの共創活動で生み出されてきたソリューションなどの成果を、パネルや実物で展示。YOKOCHOの一角には、研究開発の1つとして説明があった「翻訳サイネージ」も並べられていました。デモとして、その場で話した内容を音声認識して指定した多言語に翻訳。すぐにサイネージ上に表示して、言語の異なる話者とのスムーズなコミュニケーションが体験できました。

小上がりの茶室の前に展示された「翻訳サイネージ」
イベントの合間には、テープカットや鏡開きなど、Serendie Street Yokohamaのオープニングを記念するセレモニーも行われました。

テープカットの模様。左から、三菱電機の岡徹・上席執行役員 開発本部長、武田聡・常務執行役 CDO、東京メトロの横田政明・鉄道本部 電気部 プロジェクト設計担当部長、AWSの堤浩幸・常務執行役員 エンタープライズ事業統括本部長

鏡開きも実施。左から、三菱電機の朝日宣雄・執行役員 DXイノベーションセンター長、AWSの堤浩幸・常務執行役員 エンタープライズ事業統括本部長、横浜みなとみらい21の漆原順一・理事長、日本マイクロソフトの岡嵜禎・執行役員 常務 クラウド&AI ソリューション事業本部長、三菱電機の武田聡・常務執行役 CDO
イベントの最後には、三菱電機 DIC副センター長の竹田昌弘氏が来場者へあいさつ。「三菱電機も、Serendie Street Yokohamaから世界へ、お客様やパートナー、地域の方々、学生の皆さんなどと協力して、イノベーションをグローバルに展開していけるように頑張っていきたいと思います」と語り、Serendie Street Yokohamaが世界に羽ばたくイノベーションの拠点になることを誓いました。