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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

アウトサイドイン アウトサイドイン

世界的・社会的という「外部」(アウトサイド)の視点から将来のありたい姿や何が必要かについて検討し、それに基づいて目標を設定していく方法(アプローチ)を指します。一般的に企業が、顧客の求める価値の提供と同時に社会的課題の解決を目指すことを表します。

SDGs(持続可能な開発目標)を推進する企業の行動指針に記載されている公式用語でもあり、昨今では特に「社会課題の解決を起点にした事業創出」と定義されることが増えています。

これまでのビジネスアプローチでは、企業が自社の製品・サービスの強みを生かしてマーケットを開拓する「プロダクト・アウト」や、市場のニーズに合わせて製品・サービスを開発する「マーケット・イン」が主流でした。

しかし、現在および過去の業績を分析し、同業他社を基準に評価して将来の方向性を決めるだけでは、気候変動などグローバルな社会的、環境的な課題に十分に対処することはできません。そのため、これまでの積み重ねだけでなく、将来的な目標が社会的課題を解決するような、ある意味でダイナミックなアウトサイドからのアプローチが必要とされています。

*この記事は2023年1月の情報を元に掲載しています。

アウトサイド・インのアプローチ

実は古くからあった「アウトサイド・イン」アプローチ 実は古くからあった「アウトサイド・イン」アプローチ

SDGsの公式用語となり注目されているアウトサイド・インですが、考え方は古くからありました。例えば、スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料企業は、1866年、その頃欧州で深刻だった乳幼児の栄養不足を解決しようと、一人の薬剤師が母乳の替わりになる乳児用乳製品を開発したのがスタートでした。

一方、英ロンドンに本拠を置く世界有数の衛生・生活用品メーカーも、1884年国内の衛生状況を改善したいという思いから石鹸を開発、発売したことから始まります。その頃のイギリスは手洗いなどの生活習慣が普及しておらず、下痢や肺炎を患って亡くなる子どもが絶えなかったからです。

どちらも、衛生や栄養といった当時の人々の社会的課題を解決する製品や技術を開発することで、事業を創出したアウトサイド・イン型の創業だったのです。

事例から考えよう「アウトサイド・イン」 事例から考えよう「アウトサイド・イン」

現在も社会的課題を解決しながらビジネスとしても成功している企業は増えてきています。

1960年代の日本では日常的に注射器が使いまわされ、常に感染リスクと隣り合わせにあったことをとらえ、日本の大手医療機器メーカーが、ディスポーザブル(使い切り)注射器を開発しました。「感染リスクを低減する」という社会課題に挑戦したにもかかわらず、当初は専門家や現場に受け入れられませんでした。今では広く普及し、肝炎など注射による感染リスクを減らしています。これは社会課題の解決を起点に自社の技術を使って製品開発をしたケースと言えます。

日本の大手建設会社、電力会社、化学工業会社ら3社は、CO2(二酸化炭素)を吸収することで固まるコンクリートを開発しました。これによりセメントを製造する際に発生するCO2を最大限減らしています。これはいくつかの企業が連携して建設業の脱炭素化をはかり、地球温暖化や気候変動という課題に対して取り組んだ事例です。

身近な生活に関わる業種でもアウトサイド・インのアプローチが有効な場合があります。ある国内のコインランドリー企業の創業者は、3歳児の13%がアトピー性皮膚炎に罹っていることに衝撃を受けて、洗剤を使わずアルカリイオン電解水で洗うコインランドリーを開発しました。洗剤を使わないので節水にもつながり、環境問題に意識の高いホテルチェーンなども導入を始めています。

どの企業も、自社の強みを活かす、技術連携をする、新たな技術を開発するなど、アプローチは異なるものの社会課題への着目からスタートし、事業を創造しています。

ゲームで学ぶ「アウトサイド・イン」 ゲームで学ぶ「アウトサイド・イン」

アウトサイド・インを学び、アイデアを形にしていく方法としてゲーム「SDGsアウトサイドインカードゲーム」が開発されています。参加者は、“ある特定の事業に取り組む会社の従業員の一人”という設定で、事業を創造して会社を育てていきます。

参加者はまず自身が取り組みたいSDGsのゴールを設定して事業アイデアを考え、配られたゲーム内の資金やノウハウ、資源を活かして新規事業を創造し拡大していきます。ゲームで目指すのは社会課題を解決できる新規事業ですが、一方で利益を最大化していくことも目標とします。

ある大手インターネットサービス企業は、このゲームをさまざまな部署の従業員が参加してグループに分かれて行いました。実際に自社の強みとリスクを分析して取り組みたいSDGsのゴールを設定し、事業計画を考えるのです。ゲーム終了後はそれぞれのチームが成果を発表し、単なるゲームとしてだけでなく、企業の事業としても検討します。このように、ゲームをすることでアウトサイド・インの考え方が深まり、社内で対話が生まれ、新たなビジネスが生まれるきっかけにもなっています。

*参考
https://outside-in.jp/game-intro/