コラム
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2005年 1月分 vol.1
汚れた雪球・彗星の正体を探る。ディープ・インパクト打ち上げ
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


テンペル1彗星にインパクターが打ち込まれるのは2005年7月4日。テンペル1彗星は1867年にドイツのテンペルが発見。公転周期5年半の彗星。(NASA/JPL)  明けましておめでとうございます。年明け早々、マックホルツ彗星の接近が話題ですね。夜空にふらりと現れ、尾をたなびかせて去っていく天空の放浪者・彗星は、約45億年前に太陽系ができたころの状態を留めているタイムカプセル。また彗星に含まれる有機物は地球生命の誕生に重要な役割を果たしたかもしれないという。だがその正体はまだよくわかっていない。そこで彗星に接近し、衝撃弾を撃ち込み内部を見ようという大胆なミッションが1月12日に発進する。その名もディープ・インパクト。

 1月12日(アメリカ東部時間)に米フロリダ州ケープカナベラル基地を飛び立つ予定のNASA彗星探査機ディープ・インパクトは、約6ヶ月の飛行のあと7月4日(アメリカの独立記念日)、テンペル1彗星の頭(核)に重さ約372kgの銅製の「インパクター」を衝突させる。彗星に大爆発が起こり、クレーターができる様子は探査機のカメラだけでなく、宇宙を飛ぶNASAのハッブル宇宙望遠鏡、X線天文衛星チャンドラ、宇宙赤外線望遠鏡スピッツァー、そして地上の望遠鏡が観測。私達は初めて、彗星の核の内部を見ることになる。

 ガリレイの時代には、彗星は大気現象だと思われていた。宇宙の彼方からやってきた天体だとは考えられていなかったのだ。彗星が天体だと証明したのはニュートン。そして彗星の研究に革命をもたらしたのはフレッド・ホイップル。6個の彗星の発見者でもあるホイップルは1950~1951年に、彗星はチリのまじった氷だとの仮説を出し、新聞記者が「汚れた雪球」と名づけた。雪の少ないところで雪だるまを作ると、土がついて黒く汚れてしまう。あの黒っぽい雪だるまが彗星の正体だと考えればいい。

 1986年にハレー彗星が接近した際、日米欧露の探査機が観測。ヨーロッパの探査機ジオットが中心核を撮影した結果、ハレー彗星の中心核はたしかに真黒な雪球のようであり、ホイップルの仮説は証明された。しかし、真黒な塵に覆われた彗星の核内部の様子はほとんどわかっていない。ディープ・インパクトが今回初めて明らかにする彗星の内部の様子は、太陽系や私達の起源について、大きなインパクトをもたらすかもしれない。


締め切り迫る! 彗星「突入」の旅。(2004年 1月コラム)

NASAディープ・インパクト(アニメーションも見られます)
http://deepimpact.jpl.nasa.gov/index.html