2011年1月 vol.01
宇宙への貨物便「こうのとり」2号機打ち上げ、ココに注目
2011年1月7日。種子島宇宙センターでロケットの先端部フェアリング(白いカバー)の中に「こうのとり」2号機が格納された。(提供:JAXA)
2011年、ロケット打ち上げの話題でコラムをスタートできるとは何とも嬉しい。しかも日本が世界に誇るハイテク宇宙船「こうのとり」の打ち上げだ。地上400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)に5.3トンの荷物を運ぶ。ロケットは、日本で一番力持ちのH-IIBロケット。やや繊細なイメージを受けたH-IIAより直径も太い「グラマラスな」ロケットだ。DSPACEでは現地に打ち上げ取材に飛びます!そこで今回の打ち上げのポイントをご紹介。
その1・・パワフルなロケット「H-IIB」
宇宙ステーション補給機「こうのとり」は全質量約16トンにもなる。 これを打ち上げる力持ちロケットがH-IIBだ。昨年2009年9月11日の初打ち上げに続き今回が2回目のフライト。 将来、月探査にも使うことを視野に入れた大型ロケットである。第一段直径はH-IIAの4mから5.2mと太くなり、全長も3.6m長くなった。大きなボディを持ち上げるためにH-IIAロケット第一段のLE7AエンジンをH-ⅡBでは2機束ね、さらに固体ロケットブースタ4本が第一段の周りを取り囲む。大地を揺るがし轟音を轟かせて飛び立つに違いない。打ち上げ後の見どころは、固体ロケット第一ペア分離が2分6秒後、第二ペア分離が2分9秒後、フェアリング(衛星を覆うカバー)分離が3分40秒後。第一段分離が5 分54秒と続く。初号機は打ち上げ後すぐに雲の中に入ってしまった。今回はいったいどこまで目視できるのか。天気が気になるところだ。また初号機との違いでは、燃焼が終わった第二段ロケットを狙った所に落下させる制御落下実験も行う予定。これは、より安全にデブリ(宇宙ゴミ)を処置することを目的としたものだ。
その2・・・「こうのとり」・・アジア諸国の種、種子島の水を宇宙へ
初号機でNASA関係者も驚くほど完ぺきな成功を収めたのが、貨物便「こうのとり」(参照:2010年11月コラム「宇宙への貨物便「こうのとり」2号機打ち上げへ」)。わかりやすく言えば、ISSに荷物を運ぶトラック。荷物を積む場所が外気に野ざらしの「荷台」と空調付きの「部屋」の二つがある。初号機は合計4.5トンの荷物を運んだが、今回はラックの隙間にも荷物を詰めて5.3トンの荷物を運ぶ。2トントラック約3台分ってわけですね。「きぼう」で使われる実験ラック、5月からISSに長期滞在する古川聡宇宙飛行士が実験で使う試料、宇宙食、そして「種子島の水」も初めて宇宙へ。「こうのとり」内の照明には、初めて日本産のLED照明が使われることにも注目。もちろん「こうのとり」は日本だけでなく、NASAやヨーロッパなど他国の荷物も運ぶ。そしてアジア諸国との協力ミッションも。マレーシア、タイのトウガラシ、インドネシアのトマト、ホウセンカ、ベトナムのサルビア、キンギョソウの種を運び、「きぼう」で保管。スペースシャトルで帰還させて、アジア諸国で教育や科学分析に利用される。
その3・・・「こうのとり」運用管制は筑波から。「静止の技」に注目
2010年11月30日、HTV運用管制室でのシミュレーション。フライトディレクタの前田真紀さん。(提供:JAXA)
H-IIBロケットから15分11秒後に「こうのとり」は分離され、ここから1週間かけてISSにドッキングする。分離された「こうのとり」は自動的に姿勢を安定させ、異常の有無を点検。その後NASAのデータ中継衛星との通信を確立して、つくばにある運用室との通信を開始する。「こうのとり」でよくある質問が「ISSに直接ドッキングしないの?」ってこと。実は「こうのとり」は10m真下に近づいた場所で「静止」し、宇宙飛行士にロボットアームで捕獲してもらう。そのほうがドッキング口を大きくとることができて、大きな荷物を運べる。ただし、高速で飛んでいるISSの真下にピタッと相対的に静止させるのは難しい。走る新幹線同士が速度を合わせて窓を開けて握手するようなもの(有り得ないけど)。初号機は「1秒に1ミリもずれなかった」ほどだが、機器の温度が上昇するトラブルがあった。このあたりがうまくいくかどうかが見どころ。筑波宇宙センターのHTV運用管制室では約20数名の管制官らが60回以上ものシミュレーション訓練を繰り返している。
打ち上げ予定は1月20日午後15時29分の予定(正式な時刻は前日に決定される)。打ち上げ場所はJAXA種子島宇宙センター大型ロケット発射場第2射点 。打ち上げの様子はネットで中継される予定。ぜひご注目を。