2013年11月28日
「幸せを呼ぶ」月虹(ムーンボウ)、あなたも見られる!その条件は?
ネットでなんでもみられる時代になったからこそ、いつ、どこで見られるか予測不能で「見られたら超ラッキー」という現象に猛烈に心惹かれる。その一つが「月夜の虹」だ。
夜、月の光で見える虹は「ムーンボウ」とも呼ばれ、滅多に見られず「幸せを呼ぶ」とされる。ハワイでは「この世の最高の祝福」であり、「見た人にとって大きな変化の前触れ」と捉えられてきたと、夜の虹の写真を撮り続ける高砂淳二さんが著書「夜の虹の向こうへ」で書かれている。高砂さんの幻想的なムーンボウの写真を見ながら「きっと不思議な光景に違いない」と想像し、自分の目で見たいと願い続けていた。そのためには、「虹の州」と呼ばれるほど頻繁に虹が出る、ハワイに行かなければ、と思いこんでいた。
ところが。2012年1月7日、石垣島天文台で「月虹」が観測されたというニュースが飛び込んできた!
2012年1月7日、石垣島天文台の西側に出現した月虹(提供:石垣島天文台/撮影:花山秀和さん)
この夜は小雨が降ったりやんだりで、東の空には雲間から月齢13.7の明るい月が時々顔を見せていたそう。「午後7時過ぎから水平線上に白いアーチが現れ、30分ほど見えていた。肉眼では薄白く見えたもののカメラでとらえた画像では7色の虹がはっきりと確認できた」とのこと。
でも、このニュースを見ても「石垣島だから見えるんだ」とハワイ、石垣島という「南の島でムーンボウ」(雨が降ったり、カラっと晴れたりという気候条件がある)のイメージを勝手に膨らませていた。
それが、、その後、どうやら日本各地でも月の虹が見られることがわかってきたのだ。たとえば岡山県の美星天文台では2012年9月30日に観測されている。
2012年9月30日、中秋の名月の夜に見えた虹。かんむり座の星なども写っている。(提供:井原市美星天文台)
撮影した技師の前野将太さんによると、「その日はちょうど、天文台で中秋の名月のイベントをしていました。霧雨がパラパラ降っていましたね。そのイベント中に『アーチ状に白い光が見える』と近くにいた方が教えてくれたんです。
実は石垣島天文台の月虹の画像を見ていて、いつか見たいと思っていたので、『あれが月虹に違いない』と急いで写真に撮りました。5分~10分ぐらいで消えてしまいましたが、幻想的でした。月を見に来たお客様も『珍しいものが見えた』と喜んでおられました」
そして、2013年10月16日にはぐんま天文台でも観測されている。
10月16日18時20分頃。60秒の露出ではっきりと虹が!(提供:ぐんま天文台)
撮影した指導主事の倉林勉さんは、「台風26号が去ったあとの冬型の天候で、晴れてはいるものの強風で雨が飛んでくる状況でした。空には満月少し前の月齢11の月があり、飛んできた雨に月明かりが当たって虹が現れたものと思われます。肉眼ではうっすらと白っぽいアーチ状にしか見えませんでしたが、長時間露光ではっきりと虹が写りました。
ぐんま天文台では、2006年10月7日にも月光虹が観測されており、今回も、同じような気圧配置でしたので、もしかしたらと期待していました」とコメントを寄せてくださった。
これだけ日本でも観測されているということは、私達にも見るチャンスがある、ということだろうか。どんな条件でなら見られるか、石垣島天文台の宮地竹史所長にお聞きした。
「月の明かりは光量が少ないので、一番明るく輝く満月とその前後の夜で、小雨程度の雨(水滴)があればチャンスですね。そして、虹の出る側の空が暗いことが必須です。街の灯りで雲が見えていると難しいです」とのこと。
つまり
1.満月前後の夜
2.小雨程度の雨、または水滴があること
3.虹の出る側の空が暗いこと
が条件だ。ただし、今まで日本で観測された月の虹は肉眼では白いアーチ状に見えることがほとんどで、虹色には見えない。写真に撮って初めて虹の七色が浮かび上がってくるようだ。だから、見逃さないように注意する必要がある(ハワイなどでは一見、白っぽいがよく見ると7色がうっすらと感じられ色も変化するようだ)
日本人は月が大好き。夜空にぽっかりとお月様が出ると、つい月に見入ってしまうけれど、もし霧雨がさっと降ったりしたら月に背を向けてみましょう。もしかしたらそこに「月の虹」が現れているかもしれませんよ!