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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.101

冬の天体ショー ふたご座流星群を眺めよう

寒い冬の星空に流れ星がきらめく。そんな流れ星が多く見えるのが、毎年12月中旬。ふたご座流星群である。夏のペルセウス座流星群、お正月のしぶんぎ座流星群と並ぶ、三大流星群のひとつである。三大流星群の中でも、特にお薦めの流星群といえるだろう。

その理由は三つある。ひとつは、他の流星群とは異なり、ほぼ一晩中、流れ星が飛ぶことである。夏のペルセウス座流星群の場合、その放射点(流れ星がそこから放射状に流れるように見える収束点)が地平線高く上ってくるのが深夜過ぎになるので、主に後半夜が観察好機である。夕方、暗くなってしばらくは、ペルセウス座流星群の流星は出現しない。したがって、観察するのはかなりの夜更かしをする必要がある。一方、ふたご座流星群は、冬の星座であるふたご座に放射点がある。ふたご座は日没後すぐに東の空に現れて、明け方に西の空に沈むので、ほぼ一晩中、流星を楽しむことができるのである。特に夜更かしはなかなか厳しい小さなお子さんの場合は、夕方すぐに観察できるのは有利である。

お薦めするもうひとつの理由は、なんといっても数の多さだ。空の条件が良ければ、一時間に数十個、極大に近いと100個を超える出現を楽しむことができる。一分間に一個の割合で流れ星が舞うのである。

さらに三つ目の理由は、毎年の出現数がほぼ一定であることだ。11月の中旬から下旬に出現するしし座流星群は、33年ごとに周期的に数が大きく増減する性質がある。流れ星となる砂粒をまき散らす母親の彗星が太陽に近づく前後に出現が活発になるのである。これは砂粒がまだ母親を余り離れておらず、母親にくっついてまわっているからだ。その意味では、しし座流星群はまだ「若い流星群」である。一方、ふたご座流星群の場合は、母親とされる天体も、公転周期が1.4年ほどと極めて短く、すでに軌道上にほぼ均一に砂粒が分布していると考えられている。つまり「古い流星群」といえる。そのために、ほぼ毎年、同じような数の流星が流れるわけだ。その意味で、三大流星群の中でも安心して観察をお薦めできる流星群なのである。

岡山天体物理観測所で撮影されたふたご座流星群の流星。撮影日時:2014年12月15日午前1時47分頃(提供:TODA.H & OAO/NAOJ)

中でも、今年に限って、特にお薦めの条件がもう二つ加わっている。流星群は、一般に空の良い場所、つまり星がよく見える場所でないと楽しむことができない。その意味では、月明かりがあると暗い流星が見にくくなってしまい、その数も激減する。その点、今年は特に、このふたご座流星群の極大時期が新月の時期と重なるため、月明かりがない暗い夜空の元で観察できるのである。また、極大の時間帯が日本の夜に当たることも特筆すべきである。今年のふたご座流星群の活動の極大時刻は、日本時間12月15日午前3時頃と予想されている。日本では、ふたご座は、ほぼ天頂付近にあるため、流星群としては理想的な観察条件なのである。実は、この極大予想時刻が日本の夜であることと、月明かりが無いことの両者の条件が満たされるという意味では、今年2015年は前後10年ほどの間で、最もよい条件といえるのだ。

出現数そのものは14日から15日にかけてが最も多くなると予想されるが、その前後の夜でもかなりの数の流星が見られるので、諦めずに眺めてみよう。

国立天文台では、多くの人に、この夜空のショーを眺めてもらうために、「ふたご座流星群を眺めて、みんなで報告しよう」というキャンペーンを行う予定である。実際に夜空を見上げ、流星数を数えてもらって、インターネットや携帯電話で報告してもらうというものだ。ぜひ参加してみて欲しい。詳細は国立天文台ホームページのキャンペーンサイトで。観察の仕方や報告の仕方も詳しく載っているので参考にして欲しい。