Vol.114
元旦に海王星を探してみよう
2017年の天文現象は、元旦から「超」のつくイベントではじまる。この日、火星と海王星が接近するのだが、それもきわめて近づく「超」接近である。最接近時の両者のみかけの距離は、角度でいえば1分30秒(1分は角度の1度の60分の一)ほど。これは地球から眺めたときの月表面に見える、大きめのクレーターの直径ほどだ。惑星はどれも黄道上を動くので、しばしば相互に接近するのだが、これだけ近づくのは珍しい。
ただ、実際に両者が最も接近するのは、日本ではまだ日が沈まない時間帯である。その後、少しずつ離れていき、夕刻に火星が輝くような時間帯になると、その距離は4分を超えてしまう。とはいっても、まだまだ十分に近い。
これは大きなチャンスである。というのも、実際に惑星の中で肉眼で見えるのは土星までで、天王星や海王星は天体望遠鏡がないと一般的には観察は難しい。特に海王星は明るさが8等級なので、天体望遠鏡があれば、すぐに探せるという明るさではない。かなり慣れた人でないと、星座の中で当たりをつけて、天体望遠鏡に導入することはできない。ところが、今回は、火星が海王星の目印となってくれるのである。
火星は2015年5月に地球に接近した後、次第に地球から離れながらも、地球をずっと追いかけながら、宵の西空にしつこく輝き続けている。かなり遠くなったといっても、まだ1等星の明るさを保っているのだ。つまり、元旦の夕刻、火星に天体望遠鏡を向ければ、その同じ視野に輝いているのが海王星なのだ。
また、火星の探し方も簡単だ。この元旦の夕刻は月齢3.1の細い月が地平線上に輝いている。その左上にひときわ輝くのが宵の明星・金星である。さらに、その左上を眺めると、赤く輝く火星を見つけることができる。肉眼でも、この月ー金星ー火星の並びは、それだけで美しいだろう。いずれにしろ、こうして火星を見つけたら、その火星に望遠鏡を向けてみよう。同じ視野に、火星に寄り添うように浮かぶ海王星の姿を認めることができるはずだ。
海王星は、いまでは太陽系最遠の惑星である。大きめの天体望遠鏡だと、その青みがかった色もわかるかもしれない。海王星の大気には赤色を吸収するメタンが含まれていて、赤色以外の太陽の光を反射しているからだ。そのため、青い海の神様であるネプチューンと命名され、漢字でも「海王星」となったのである。
惑星は現在、冥王星を除いて8つあるが、天文ファンなら一度は全部見てみたいと思うに違いない。水星から土星までは肉眼で見えるので簡単だが、天王星や海王星は、こうした他の明るい惑星などへの接近時に眺めるのが手間が少なくてすむはずだ。ただし、この手が使えるのは元旦の夜だけ。翌日になると、もう火星は大きく離れてしまうので、目印になりにくい。ぜひ、2017年の天体観察ことはじめを、元旦の夜の海王星からにしてはどうだろう。