三菱電機株式会社は、がん治療に使用される粒子線治療装置において、一つの照射ノズル※1 でブロードビーム・積層原体・スキャニングの3種類の粒子線ビームを短時間に切り替えて照射できる「多機能照射ノズル」を開発しました。これにより、ひとつの治療室で患部の位置や形状に合わせた短時間かつ高精度な照射による治療が可能になり、患者の負担を軽減することができます。
- ※1:加速した粒子を患部に対して照射する設備
照射法 | 説明 |
ブロードビーム | 患部の形状に成形した粒子線ビームを一括で照射 |
積層原体 | 患部の形状に成形した粒子線ビームを深さ方向に分割し、層状に重ねて照射 |
スキャニング | 粒子線ビームをペンシル状に細く絞り、患部に走査して照射 |
開発の特長
- 一つの照射ノズルで3種類の照射ができることで、患者の負担を軽減
- ・一つの照射ノズルで、ブロードビーム・積層原体・スキャニング照射の3種類の粒子線ビームを短時間に切り替えて照射が可能
- ・照射ノズルの迅速な切り替えに加えて、一つの治療室で患部の位置や形状に合わせた治療が可能となり、患者の身体的負担を軽減
- 患部形状に合わせた短時間かつ高精度な照射を実現
- ・「多機能照射ノズル」によりブロードビーム・積層原体照射にスキャニング照射で用いる高速走査電磁石を適用することで、ビーム走査速度を従来比5倍※2 とし、照射時間を従来比で最大約3分の1に短縮※3
- ・スキャニング照射に、ブロードビーム照射と積層原体照射で用いるマルチリーフコリメータ※4 を適用することで、より複雑な標的へ的確なビーム照射が可能
- ※2:当社従来粒子線治療装置(陽子タイプ)との比較。毎ミリ秒20mmから毎ミリ秒100mmに高速化
- ※3:当社従来粒子線治療装置(陽子タイプ)におけるブロードビーム照射および積層原体照射時間との比較
- ※4:患部だけに照射するように照射範囲を制限する医療器具
開発の概要
一つの照射ノズルによる照射法 | ビーム走査速度 | |
今回 | 3種類(高線量ブロードビーム、積層原体、スキャニング) | 毎ミリ秒100mm (ミリ秒は1000分の1秒) |
当社 従来技術 |
2種類(ブロードビーム・積層原体)または1種類(スキャニング) | 毎ミリ秒20mm (ミリ秒は1000分の1秒) |
今後の展開
「多機能照射ノズル」は2016年度から運用を開始する陽子タイプの施設に適用の予定です。
なお、薬事申請が必要な「多機能照射ノズル」を用いた粒子線治療装置について、早期の申請を行います。