行政が提供する市民サービスは多岐にわたりますが、一人ひとり異なる多様な人々に向けて情報をわかりやすく発信し、サービスをストレスなく利用してもらうことは、どの自治体にとっても課題となっています。
兵庫県伊丹市では2019年から「Smart Itami宣言」のもと、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。「デジタルがつなぐ 人にやさしいまち スマートいたみ」を目指して各種申請のデジタル化、オンライン化を進め、2022年11月に開庁した新庁舎においてはセンシング技術を活用した省エネ(ZEB)化、全国的に例の少ないスマート窓口の導入、デジタルサイネージによるユーザビリティ向上などに努めてきました。
この“スマート市役所化”の動きの中で、「てらすガイド」はどのように活用され、市民の利便性向上にどう役立っているのでしょうか。
導入ソリューション
- 1てらすガイド(計3台)
導入の経緯・背景 伊丹市 総務部総務室 庁舎・周辺整備担当 中西 寛様にお伺いしました。
てらすガイド導入に至った経緯について教えてください。
2019年に市長が行った「Smart Itami宣言」を受けて、市民サービスと職員の業務においてデジタル化を推進してきました。それを背景に2022年秋の移転を予定していた新庁舎では、市民の皆様にポジティブな期待や驚きを抱いていただけるような「未来型のスマート市役所」を目指し、整備を進めました。
市民の皆様にとって市役所の“顔”となるのが、窓口の対応であり、庁舎内の様々な案内表示です。このうち案内について検討を進めている中で新型コロナウイルスが発生し、感染症対策も考慮したうえで来庁される市民を案内できるデジタルソリューションを模索していたところ、「てらすガイド」に出会いました。
活用方法について
どのように活用されていますか?
現在は1階の正面玄関と市民ロビー、2階市民ロビーの3カ所に設置しています。
最初に導入したのが正面玄関で、デジタルサイネージのすぐ脇に「てらすガイド」の案内を映し出しています。サイネージはより詳しい情報を望む市民が利用するのに向いている一方、「てらすガイド」は案内を一目で視認でき、目的とする場所が直感的にわかるという特性の違いがあり、使い分けています。
当初は入り口付近ではなくもっと奥に設置しようというアイデアもありましたが、実際に試してみたところ、案内表示にあまり気づかれないことがわかりました。それに対して入口のサイネージ脇なら庁舎に入った瞬間、パッと目に入るので、そこで運用をスタートしました。
2階の入口では来庁された市民が窓口の整理番号を取得する発券機の存在に気づかず、直接窓口へ向かってしまう方が多くいました。そこで発券機の横に「てらすガイド」を設置したところ、案内表示が目に入りやすいのはもちろん、表示自体が注意を引くため、横に発券機があることに気づいていただけるようになり、トラブルなく利用していただけるという思わぬ効果もありました。
新型コロナウイルスのワクチン接種会場として会議室を利用することになった時には、会場を案内するために急きょそちらに設置しました。移動が簡単で臨機応変に対応できるので、開庁式典時の案内表示など突発的なイベントの際にも役立っています。
てらすガイドとは?
視認性の高い光のアニメーションを用いたサインを床面に表示。直感的で分かりやすい案内や
注意喚起を行い、多様な施設利用者の円滑な移動を支援します。
イベントや状況・時間に応じて表示の切り替えが可能で、施設管理者の業務効率化に貢献します。
導入の成果と今後の展開
導入によりどのような効果がありましたか?
まず、職員の働き方の面で効果を感じています。これまで臨時窓口を設置するケースでは、床面にテープを貼って矢印を作ったり、プリントアウトした文字を貼りつけたり、あるいは立て看板を設置して案内していました。床に表示を貼るのは大変な作業ですし、当然ですが多くの人に踏まれて劣化するので貼り替えが必要になります。立て看板も、お年寄りや障害のある方にとっては通行の妨げになることもあります。
「てらすガイド」の導入で、職員の労力が大きく軽減しました。それだけでなく、床に貼った表示がはがれると見た目もよくないものですが、導入後は市民の方から「きれいで気持ちがいい」という声もいただきました。
運用面では、タブレット端末から簡単に設定でき、直感的に操作できるので、誰でも簡単に使える点を評価しています。機器自体も小さく、台車一つあれば一人でどこへでも移動できるため、臨機応変な対応が可能な点もありがたく感じています。
想定外の気づきもありました。家族で来庁したお客さまで、お子さんが1階正面で真っ先に「てらすガイド」の表示に興味を持ち、座り込んで指さしたりするのですが、その様子を見て親御さんが関心を持ちます。すると、お子さんと親御さんが一緒に見ている姿を周りにいるお年寄りが見て、興味を持ったりします。
「デジタル」には様々なことが便利になるというポジティブなイメージがある一方、デジタルデバイドという言葉があるように、お年寄りをはじめデジタルが不得手な方にはネガティブなイメージで捉えられやすいものです。その点、家族が楽しそうに眺めているのを見ると、無機質ではなく人の温度感を感じられます。「てらすガイド」は、デジタルが明るい未来づくりにつながるイメージを市民の皆様にお知らせする、一つの契機にもなるのではないかと考えています。
来庁されるお客様の声などありましたらご紹介ください。
市民の方からは、やはり「表示がパッと目に飛び込むのでわかりやすい」「アニメーションの誘導が理解しやすい」「立て看板のようにぶつかることがないので安全・安心」といった声を多くいただきます。視覚的にわかりやすくなったおかげで、これまでは例えば「税のフロアはどこですか」と尋ねられることが多かったのですが、「税のフロアはあちらですか」というように質問の形が変わってきたことも実感しています。
また、ミュージアムや演劇ホールといった庁外施設の職員から、自施設にも「てらすガイド」を導入したいとの声が多く上がっています。
(中西様)「他の自治体や民間企業から新庁舎視察にお越しになった方が『てらすガイド』を目にしてご興味を持ち、ご質問やその後のお問い合わせをいただくことも多くあります」
今後、どのように活用していきたいとお考えでしょうか。
庁舎運営において様々な有効性があることは実感できたので、次は選挙の期日前投票や納税相談、臨時交付金受付といったイベントの際にも活用していきたいと考えています。
将来的には、「てらすガイド」が庁舎の防災システムと連動し、災害発生時にアニメーションが避難誘導に切り替わる仕組みであったり、センサーによる音声誘導と組み合わせた仕組みを実現できれば、防災面や福祉面など、有効活用できる範囲はさらに広がると期待しています。
2年後、隣接している旧庁舎を解体した跡地に市民広場をつくります。伊丹市は市内に多くの公園が点在し、その公園を結ぶ形で緑道を整備しているのですが、その緑道の終着点が市民広場のある市役所庁舎にしようというのが新庁舎設計の大きなコンセプトになっています。その際、市役所の中から広場へ案内するサインとして「てらすガイド」を活用できるかもしれません。そうなれば市役所の外と中はもちろん、人と人との“つながり”も伝えるメディアとして、重要な役割を果たすようになるのではないでしょうか。
導入に関するご相談・ご質問などございましたら
三菱電機ビルソリューションズ株式会社
ビルマネジメントシステムウェブサイトよりお問合せください。