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様々な場所で目にすることの多くなった「薬膳料理」。季節や体調に合わせて食事をとるという考え方に基づいた料理です。
今回は、フードセラピストの石光映美子さんから、薬膳のキホンと冬におすすめのレシピを紹介していただきました。
まだまだ寒い日が続く季節に、見た目にもおいしい薬膳料理で、心と体をいたわってみませんか?
薬膳とは、「未病」(病気というほどではないが、少し体調がよくない状態)の段階で、心身の調子を整え、病気に至るのを防ぐという考え方から生まれた料理です。その発祥は、中国の伝統医学である中医学。発病後に症状を直接治療する西洋医学とは異なり、食習慣など、体調を左右する根本的な原因に目を向けるのが特徴です。中国では約3000年前から、日常のくらしに取り入れられてきました。現代においても、薬膳の考え方は体調を改善するヒントになっています。
自然の恵みを生かし、季節に合わせた食材や調理方法を取り入れる。こうした工夫をするのが、薬膳の基本となります。根底にある思想は「陰陽五行説」。これは、私たちをとりまく様々な現象を5つの要素に分類し、自然のめぐりや体のしくみなどを理解しようとするものです。それぞれの要素は、互いの性質を補い合ったり打ち消し合ったりしてバランスを保っています。
その関係を表したのが「五行色体表」(下図)です。
「春・夏・土用・秋・冬」の五季ごとに、弱りやすい臓器を「臓腑」として分類。季節に合わせた五味、五色を食事に取り入れると、臓腑の働きを助けてくれます。陰陽五行説は、人間も自然の一部ととらえ、自然の中の色や味、季節の循環を取り入れることによって、体質を改善しようとする考え方なのです。五季には厳密な期間の区切りがあるわけではありません。肌で感じる季節変化に合わせれば大丈夫です。
中医学では、冬の寒さで体が冷えると、腎臓と膀胱の調子が悪くなると伝えられています。そこで積極的に摂りたいのが「鹹味(かんみ)」です。これは、発酵食品や魚介類、海藻類などで感じられる、自然の塩辛さのこと。黒い色の食材もおすすめです。
これらは腎臓の働きを助けると伝えられています。黒ごまや黒豆、きのこ類、海苔がその一例です。砂糖を使う場合も、上白糖ではなく色に深みのあるきび糖や黒糖がいいでしょう。
日照時間の少なくなる冬の季節には、陽の光をたくさん浴びた食品を摂ることで、食事から太陽のパワーをもらうという考え方もあるとか。天日にあたった乾物は、その代表格です。そのほかにも、スパイスなど、体を温める素材を摂りましょう。
レシピのポイント
豆鼓(とうち)を使ったシチュー。黒豆を発酵した調味料である豆鼓は、最近少しずつ一般の食料品店でも手に入るようになってきました。風味は味噌に似ていますが、黒豆を使っているため深みがあります。高野豆腐も、このレシピの主役のひとつ。陰陽五行説では、乾物は天日を閉じ込めていると考えられており、冬に最適です。大根などの生食ができる食材も、このレシピではあえて煮ます。火を通すことで、体が冷えるのを防ぎ、消化もしやすくなるからです。トッピングの長葱がアクセントになる、冬にぴったりの一品です。
材料 たっぷり6人前
- ・生姜1片(みじん切り)
- ・ニンニク5片(みじん切り)
- ・油(あれば米油)大さじ2
- ・仕上げ用のごま油大さじ1
- ・舞茸1パック
- ・大根1/3本(厚さ1cmのいちょう切りにする)
- ・里芋5個(半分に切る)
- ・高野豆腐5個(湯戻しして2cmの角切りにする)
- ・水4カップ
- ・豆乳2カップ
- ・水溶き片栗粉片栗粉:大さじ3、水:大さじ3
- ・合わせ調味料
- 豆豉醬大さじ3
- 醤油小さじ2
- 塩小さじ2
- ・薬味
- 大根適量(あれば紅しぐれを使う。いちょう切りにして、スライスする)
- 塩少々
- 長葱適量(みじん切りにする)
- ごま油少々
作り方
- 1.鍋に油、生姜、ニンニク、舞茸を入れ弱火で香りが立つまでいためる
- 2.大根、里芋を加え油が全体にまわらせ水を入れてから30分ほど火が通るまで煮る
- 3.高野豆腐、豆乳、合わせ調味料を加えてひと煮立ちさせる
- 4.水溶き片栗粉を鍋にまわし入れ、とろみをつけて再び2分ほど沸騰させる
- 5.ごま油を入れる
- 6.お好みで薬味をのせてでき上がり
薬味の作り方
- 1.大根に塩を加え軽くもみしんなりさせる
- 2.長葱、ごま油を加えて混ぜ合わせる
レシピのポイント
小麦ではなく米粉を使ったマフィン。
もっちりとした食感になるだけでなく、胃腸にもやさしいのが特徴です。消化器官が弱っていると、小麦に含まれるグルテンによって負担がかかってしまうこともありますが、これなら安心です。ポイントは、すりおろした生姜とシナモンが入っていること。体をじんわりと温めてくれます。生姜はパウダーでも代用可能ですが、すりおろす際の香りやひと手間も楽しみたいもの。できれば生の生姜を買ってきて、すりおろすのがおすすめです。
材料 直径7cm×高さ3.5cmのマフィンカップ6個分
- ・米粉140g
- ・きび砂糖100g
- ・オイル(あれば米油)30g
- ・ベーキングパウダー3g
- ・豆乳2/3カップ
- ・シナモン小さじ1
- ・すりおろし生姜10g
- ・りんご1/4個(1cmの角切りにする)
- ・バニラエッセンス8滴
- ・卵2個
作り方
- 1.オーブンを180度に予熱する
- 2.大きめのボールに米粉、きび砂糖、オイル、ベーキングパウダー、シナモン、すりおろし生姜、バニラエッセンス、豆乳を入れホイッパーで混ぜる
- 3.2つのボールを用意し、卵白と卵黄をわける
- 4.卵白を角がたつまで泡立てる
- 5.卵白に卵黄を加えさらに3分ほど泡立てる
- 6.ゴムベラを用意し、2に5を加えさっくりと全体を混ぜ合わせる
- 7.型に8分目まで入れ、りんごを上に4〜5個のせる
- 8.予熱したオーブンを180度にして30分焼く
*お好みでホイップ、りんご、シナモンシュガーをのせてでき上がりです。
2022.02.03