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- 各地の月見だんごを追え
旧暦(太陰太陽暦)の8月15日の夜の「中秋の名月」に、
秋を象徴するすすきの向こうにぼうっときらめく満月を愛でる。
日本の伝統的な秋の風物詩「お月見」には月見だんごが欠かせません。
実はその月見だんご、地方によってさまざまな様式があるのです。
秋の澄み切った夜空の月明かりの下でひととき、美しい名月に見惚れる。
時代を越えて、そんな風流は人の心をつかむものです。平安時代にはこんな和歌が詠まれています。
秋風に
たなびく雲の
絶え間より
もれ出づる月の
影のさやけさ
読み手は左京大夫顕輔。
「秋風に吹かれてたなびく雲の切れ間から、漏れ出る月の光の澄み渡る美しさと言ったら」という意味のこの歌は小倉百人一首にも選ばれています。
お月見において欠かせないのが、枯れすすき、そして月見だんごですが、実は地域によってそのスタイルは少しずつ異なっています。
大正時代から昭和初期の各都道府県の暮らしをまとめた、農文協の「聞き書」シリーズで、十五夜の月見だんごについて記述があるのは、北は福島県あたりから関東、中部地方、岡山県、愛媛県、沖縄県あたり。今回は3つの地方の詳細を見ていきましょう。
「縁側や2階の窓際など、お月さまのよく見えるところに卓を置き、すすきを飾って、月見だんごを中心に、きぬかつぎ、かぼちゃ、栗などを供える。月見だんごは新粉を丸めて、ゆでたもの。直径一寸くらいの大きさ」(東京)
「供えただんごはあとで焼いて甘から醤油をつけ、家のみんなで食べる。しかし十五夜にはまったく何もしない家もある」(東京)
「お供えしてから砂糖やきな粉などをつけて食べる」(栃木)
材料(直径3cmのだんご15個分)
- 上新粉120g
- 白玉粉40g
- 砂糖10g
- 水120~140ml
作り方
1.だんご生地を作る
ボウルに上新粉、白玉粉、砂糖を入れ、泡立て器で混ぜ合わせる。
水を少しずつ加えてその都度ゴムベラで混ぜ合わせ、途中でゴムベラから手に変え、生地をまとめながらこねる。
生地が耳たぶくらいの固さになったら水を加えるのを止め、仕上げによくこね合わせる。
2.ゆでる
だんご生地を15等分し(1個 約18g)、丸める。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、だんごを入れてゆでる。浮き上がってきたらさらに2分ほどゆでて中まで火を通し、冷水にとる。粗熱がとれたらザルなどにとり出して並べ、水気を切る。
3.盛る
器にだんごを下から順に9個、4個、2個の個数で積み重ねる。
ワンポイントアドバイス
・使用する上新粉や白玉粉によって水の適量が異なるため、少しずつ加えて水分量を加減するとよいです。
・冷水からとり出してすぐに積み重ねると水気ですべってしまうので、水気を切ってから積み重ねてみてください。
・上新粉は精白・水洗いしたうるち米を乾燥し、粉にしたもので、粘り気が無くこしがあって歯ざわりのよいだんごが作れます。
・白玉粉はもち米を精製し、水で挽き、沈殿物を乾燥させたもので、粒状をしています。もちもちとした食感のだんごが作れます。
「旧暦の8月15日にお月見をする。机に白い布を敷き、三方にお月見だんごをのせる。栗やさつまいもを盛ったかご、お月見だんご、すすきを生けた花びんを並べて中秋の名月をめでる。お月見だんごは上新粉で作った紡錘形のだんごを、ぐるっとこしあんでくるむ。雲の中から顔をのぞかせた月に見立ててある」(大阪)
材料(8個分※こしあんは作りやすい分量)
〈こしあん材料〉
- さらしあん75g
- 砂糖110g
- 塩少し
- 水1カップ
〈だんご材料〉
- 上新粉120g
- 白玉粉40g
- 砂糖10g
- 水120~140ml
作り方
1.こしあんを作る
鍋にこしあん材料をすべて入れ、よく混ぜ合わせる。
中火にかけ、焦げないよう木ベラを鍋底にあててときどき混ぜ合わせながら煮、ひと煮立ちしたら弱めの中火にしてさらに煮る。徐々にとろみがついてくるので火は止めずに練り続け、鍋底がみえるくらいまで煮詰めたら火を止め、バットなどに移して冷ます。
2.だんご生地を作る
ボウルに上新粉、白玉粉、砂糖を入れ、泡立て器で混ぜ合わせる。
水を少しずつ加えてその都度ゴムベラで混ぜ合わせ、途中でゴムベラから手に変え、生地をまとめながらこねる。
生地が耳たぶくらいの固さになったら水を加えるのを止め、仕上げによくこねる。
3.ゆでる
だんご生地を8等分し(1個 約35g)、里芋のような形(えび芋のようなしずく形)に形作る。
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、だんごを入れてゆでる。浮き上がってきたらさらに2~3分ゆでて中まで火を通し、冷水にとる。粗熱がとれたらザルなどにとり出して並べ、水気を切る。
4.盛る
ラップにこしあん20gほどをだ円形に広げ、だんご1個をのせて包む。残りも同様に作る。
器に盛る。
ワンポイントアドバイス
・使用する上新粉や白玉粉によって水の適量が異なるため、少しずつ加えて水分量を加減するとよいです。
・上新粉は精白・水洗いしたうるち米を乾燥し、粉にしたもので、粘り気が無くこしがあって歯ざわりのよいだんごが作れます。
・白玉粉はもち米を精製し、水で挽き、沈殿物を乾燥させたもので、粒状をしています。もちもちとした食感のだんごが作れます。
・さらしあんは小豆を煮て皮などを取り除いた生餡を乾燥させた粉末状のものです。スーパーでも乾物コーナーなどにあります。甘みが加えられていないので、お好みの甘さにできたり、お好みの砂糖(上白糖、きび砂糖、黒糖など)であんこを作ることもできます。
「8月15日は中秋の名月で、その日はふちゃぎ(おはぎ)をつくる。小豆は煮て、温かいうちに塩をふり、冷やしておく。手のひらくらいの大きさに丸めて蒸したむちを温かいうちに豆の上でころがし、むち全体に豆をつける。冷やして、十五夜のお月さまに供える」(沖縄)
材料(8個分)
〈ゆで小豆材料〉
- 小豆100g
- 水5カップ
〈もち材料〉
- もち粉180g
- 水140~150ml
作り方
1.小豆をゆでる
小豆はザルに入れてさっと洗い、小鍋に入れる。水2・1/2カップ分を入れて中火にかけ、ひと煮立ちしたら弱火にして2~3分ゆで、一度ゆでこぼす。
再び小豆を小鍋に入れ、水2・1/2カップ分を加えて中火にかけ、ひと煮立ちしたらアクをとり除いて弱火にし、途中アクをとり除きながら50~60分煮る。火からおろして粗熱がとれるまでそのまま置き、ザルに上げて水気を切る。
2.もち生地を作る
ボウルにもち粉を入れ、水を少しずつ加えてその都度ゴムベラで混ぜ合わせ、途中でゴムベラから手に変え、生地をまとめながらこねる。
生地が耳たぶくらいの固さになったら水を加えるのを止め、仕上げによくこねる。
3.ゆでる
もち生地を8等分し(1個 約40g)、楕円形に形作る。
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、もちを入れてゆでる。浮き上がってきたらさらに2分ほどゆでて中まで火を通し、ザルにあげて水気を切る。
4.盛る
もちが温かいうちにゆで小豆をまぶしつけ、器に盛る。
ワンポイントアドバイス
・使用するもち粉によって水の適量が異なるため、少しずつ加えて水分量を加減するとよいです。
・もち粉は、もち米を精白・水洗いし、粉にしてから乾燥させたもので、なめらかでもちもちと柔らかい食感のおだんごが作れます。
・小豆は品種、新豆か古い豆か、などによって柔らかくなる時間が異なります。ゆで時間は様子をみながら加減してください。
・小豆の品種の「大納言」は、大粒なだけでなく、煮たときに皮が破れにくい特徴があります。ふちゃぎ作りにもおすすめです。
・もち粉に紅芋パウダー(または紫芋パウダー)を1~3gお好みで加えてむらさき色のもちにアレンジすることもできます。
それぞれの地域で伝承され続けた月見だんごは、それぞれの形へとなっていきました。現代ではスーパーやコンビニでも今風にアレンジされた月見だんごも見かけるようになりました。
そもそも旧暦8月15日に月を愛でる月見は、中国の「仲秋節」が日本に伝わって始まったもの。そして近代のように供え物をするようになったのは室町時代以降のことで、だんごを供物として月を愛でるスタイルになったのは江戸期以降のことなのだとか。
ちなみに旧暦8月15日の「十五夜」が「芋名月(いもめいげつ)」と言われるのは、月見だんごとともに里芋やさつまいもを供えるところから。翌月の旧暦9月13日、「後の名月」と言われる「十三夜」は栗や豆を供えるので「栗名月」「豆名月」とも言われるようになりました。
昭和天皇は、お月見が大好きでいつも中秋の名月を楽しみにされておられたといいます。昭和63年、改元直前の十五夜にも月見だんごを召し上がられ、「十三夜はいつかね」と聞かれるほどの名月好きだったそう。
太陰太陽暦の8月15日は現代の暦では毎年違う日付になり、中秋の明月が見られるのは9月7日~10月8日あたり。中秋の名月で十五夜を堪能したら、翌月には栗や豆とともに十三夜を楽しむ――。
一人で見上げる月も、誰かと愛でる月も、見惚れるような美しさにひととき癒やされるはずです。
2024.09.02
レシピ:小西 君枝(こにしきみえ)さん料理家 / フードコンサルタント
女子栄養大学卒業。
企業での商品企画開発を経て料理家として独立。フードアドバイザー、企業や飲食店などの商品開発、イベント調理、料理教室なども行う。素材を生かし、シンプルな調味料とハーブやスパイス、素材の組合せでワクワクするような料理を得意とする。