職る人たち—つかさどるひとたち—

これからの暮らしを彩る、
ものづくりの若い力

樽製造・荷師 横谷 哲矢×三菱液晶テレビ 映像技術者 松本 竜也

#04 TSUKASADORU HITOTACHI

対談篇 前篇理想のものづくりを追求する

(対談篇 前篇)

菰樽づくりの作業場を見学させていただいた一行。
引き続き岸本吉二商店の一角をお借りし、同社・横谷哲矢さんと三菱電機・松本竜也の対談を開催しました。

必ず“ものづくり”の仕事に就きたかった

横谷さんはなぜ、職人の道を志したのでしょうか。

横谷哲矢さん(以下、横谷)

子どもの頃から夏休みの自由研究やプラモデルなんかに熱中しがちだった私は「大人になったら必ず“ものづくり”の仕事に就きたい」と考えていました。他方で、プログラミングにも興味があり、高校卒業後には尼崎にある短期大学で情報技術を学んでいたんです。しかし、いざ就職活動が始まって卒業後の進路を考えたとき、プログラミングはどうも自分がイメージしていた「ものづくりの仕事」とは違っていた。そんな折、職業安定所の求人窓口で「伝統工芸に興味はないですか?」と尋ねられ、そのとき薦められたのが岸本吉二商店でした。当然そのとき「菰樽」のことは知りませんでしたが、調べていくうちに「これこそ自分がやりたかったものづくり」だと思い、入社を決意しました。

入社後、荷師になられるまでのご経緯は?

横谷

2013年に岸本吉二商店へ入社したとき、20代の社員は私ともう1人だけでしたが、そうした若手社員は研修として、今日ご覧いただいたような各部門を1つずつ周りながら、それぞれの道の先輩方から技術を習います。その後、正式な配属先を決めなければいけない段階となり、私は「手作業で、かつ、1つの製品をイチから組み立て、完成させる」という、私の理想のものづくりに最も近かった “巻き”(荷師)への配属を希望しまして、今に至ります。

松本さんが三菱電機に入社されたご経緯も教えてください。

松本竜也(以下、松本)

私も小さいころからものづくりに興味があり、高校生のころには「将来は家電をつくりたい」と考えるようになりました。家電量販店にずらりと新商品が並んでいるなか「これ、自分が作ったんだ」と言えるような商品づくりに携われれば幸せだと思い、大学は工学部に入学。ゼミでは映像関係の研究を専攻しました。

映像関係の仕事や会社が他にもあるなか、なぜ三菱電機だったのでしょうか。

松本

三菱電機の事業領域は、ご家庭で使われる生活家電から、大型望遠鏡・宇宙ステーション補給機・人工衛星といったスペーステクノロジーまで、実に多岐にわたっています。ここで働ければきっと人生に退屈しないと思い、また自分の可能性も拡げてくれると思いました。

入社後は現在も在籍される京都製作所(京都府長岡京市)のAVディスプレイ製造部に配属されました。京都製作所は三菱電機にとってどのような拠点なのでしょうか。

松本

1962年にテレビの部品工場として発足した京都製作所では、私が現在担当している液晶テレビのほか、業務用プリンター、レーザー光源、映像情報システム、パワーコンディショナ等の設計・製造を行っており、現在は録画テレビ「REAL 4K」の開発拠点でもあります。

京都製作所における光学設計・画質設計の仕事とは?

松本さんがご担当される光学設計・画質設計とはどんなお仕事なのでしょうか。

松本

一般的な液晶テレビのおおまかな構造を説明すると、パネル部分のオモテ側というのは、薄さ1~2ミリほどのガラス板です。そのガラスがパネルのウラ側にあるバックライト光源によって照らされています。そこになぜ映像が映るのかというと、パネルのなかの液晶分子がパネルの表面から出てくる光を調節するシャッターの役割を果たしていて、さらにその先にあるカラーフィルターで色を表現しているのです。
私が入社間もなく担当した「光学設計」というのは、光源にあるLEDの配置・色などの設計・調整を行うチームです。光のムラを抑えたり、あるいはきれいに光を拡散させたりして光源の品質向上を目指します。一方「画質設計」というのは、映像が映し出されるまでの信号処理・補正の過程を担当するチーム。例えばテレビ局で番組を制作した段階ではきれいな映像だったとしても、電波に乗ってご家庭まで届く過程でノイズが乗ることもある。それでもザラザラした映像にならないよう、ノイズ除去等を施します。あらゆる映像シーンを想定しながら、どんな映像でもきれいに映るようにさまざまな制御を行うのが私たちの仕事です。

どんな映像でも
きれいに映るようにする
それが私たちの仕事です

三菱電機では「4Kをこれ1台で見る、録る、残す。」をコンセプトとした録画テレビ「REAL 4K」を開発・販売しています。テレビの潮流は4K・8K時代へと移り変わりつつありますが、そもそも4Kとは、どんな点が優れているのでしょうか。

松本

2018年12月1日からBS/110度CSを使った4K・8K衛星放送がスタートし、4K対応のテレビと必要機器を揃えれば、どなたでも4K放送を視聴できるようになりました。4K放送はこれまでのハイビジョンに比べて4倍の解像度(3840×2160=約800万画素)を実現できるため、超高精細な映像をご視聴いただけます。三菱電機「REAL 4K」には「ダイヤモンドエンジン4K」という高性能エンジンが搭載されており、4K高精細の高画質を最大限に引き出すとともに、映像の明・暗の輝度の幅を拡げ、明るさの階調表現も豊かにするHDR(ハイダイナミックレンジ)にも対応します。さらにウルトラカラーマトリックスという技術によって、色の表現範囲も広範囲にします。ノイズも少なく、より臨場感のある映像を出力します。

横谷さんは4K放送にご興味はありますか?

横谷

私、野球観戦が趣味なんですよ。4K放送でプロ野球中継を観たら、より臨場感のある観戦が楽しめそうですよね。

松本

はい。三菱電機の液晶テレビは、実際のシーンを忠実に映像再現しますから、きっとスポーツ観戦もリアルにお楽しみいただけると思います。

横谷

REAL 4Kはレコーダーが内蔵されているんですよね。残念ながら私の家のテレビはまだ4K放送に対応していませんが、実家では内蔵型テレビを使っていて、いつも便利だと感じています。

松本

三菱液晶テレビの最たる強みを申し上げれば、レコーダー内蔵型であることです。こうした新しい家電が登場すると「自分が取り扱うには難しいかも」と敬遠される方も多いと思うのですが、REAL 4Kはすべてがテレビに内蔵されていますので、シームレスな操作体験が強みです。長らくお客様の生活に浸透してきたテレビという家電を、4Kという新たな技術のもとでもしっかりと使いこなしていただきたい。本製品には、そんな三菱電機の想いが詰まっています。(後篇へ続く)