職る人たち—つかさどるひとたち—

これからの暮らしを彩る、
ものづくりの若い力

安藤商店・絵付け職人 河合 寛恵 安藤商店・貼り職人 浅野 絵理 × 三菱電機「ヘルスエアー® 機能」 搭載 循環ファン 設計者 袴田 浩之

#07 TSUKASADORU HITOTACHI

対談篇 前篇個人としての追求と
その繋がりが生みだすものづくり

(対談篇 前篇)

安藤商店が運営するギャラリー&和カフェ「川原町屋」にて、
同社・河合寛恵さん、浅野絵理さんと三菱電機・袴田浩之の対談を行いました。

経験と体験が “今” に繋がる

河合さん、浅野さんが安藤商店の職人になった経緯をお聞かせください。

河合寛恵さん(以下、河合)

私は美術大学の日本画を専攻していました。もともと物を作るのが好きなので、結婚後に子供が大きくなったタイミングで手を動かす仕事で伝統的な仕事、岐阜ならではの仕事を探していました。3年ほど前に安藤商店で提灯の家紋と雪洞の仕立てをしていることを知り、面白そうだなと思ったのが入社のきっかけです。

浅野絵理さん(以下、浅野)

私は学生時代に美術を専門に学んでいて、やはり自分の手で書いたりつくったりする仕事をしたいと思い、岐阜の伝統工芸である岐阜提灯に関心を持ち、安藤商店に入社しました。

袴田さんが三菱電機に入社した経緯をお聞かせいただけますか。

袴田浩之(以下、袴田)

大学では空気や水の流れを研究する流体工学を専攻していたので、空気の流れに関心がありました。大学時代に住んでいたアパートの部屋のニオイが気になり、空気環境が悪いと快適に過ごせないという体験をしました。その後、就職活動で三菱電機の工場見学をした際に、常に屋外から新鮮な空気を取り入れて一定の空気質を保つ24時間換気の存在を知り、換気によって室内環境の改善ができる換気扇の設計に携わりたいと思い入社しました。現在は18年目になります。

本日お持ちいただいた「ヘルスエアー®機能」搭載 循環ファンとは、どういうものなのでしょう。

袴田

空気中のさまざまな物質を抑制・除去し、さらにニオイを脱臭する製品です。
主な特長は3つありまして、1つ目は、当社独自の空気清浄技術である「ヘルスエアー®機能」を搭載していることです。これは電極間に高電圧を掛けて放電・電界空間を生成し、そこにさまざまな物質を通して抑制・除去する技術です。2つ目は、天井や壁に設置が可能なので床スペースの邪魔にならないことです。そして3つ目は、「ヘルスエアー®機能」ユニットや脱臭フィルターが、水洗いにより繰り返し使用できることです。ちなみに、本日お持ちした製品は10畳用です。

河合

こんなに小さいのに、10畳用なのですね。

袴田

はい。24時間ずっと使っていただいて、一定の空気質を保つことができるんです。

「ヘルスエアー®機能」搭載 循環ファンの製造における、袴田さんの役割を教えてください。

袴田

私は製品の企画や設計を担当しています。具体的には、製品の機能、性能、形状などの仕様を決めて、それを実現するための部品や構造を検討したり、強度計算や図面を作成したりするのが役割ですね。

こちらは特に思い入れのある製品と伺っています。その理由をお聞かせください。

袴田

入社5年目の頃、同世代のメンバーが集まって新しい製品を考えるプロジェクトがあり、その時にみんなでアイデアを出した製品なんです。世の中に必要とされるもの、自分たちが欲しいもの、つくりたいものを自分たちで考えて企画したのものが形になったので、とても思い入れがあるんです。

己を見つめ
仕事の質を高める

皆さんにお聞きします。つくり手としてこだわっている部分はありますか。

浅野

そうですね。雪洞は、美しいお雛様、お雛道具のセットの一部なので、「ホヤ」の貼りでは綺麗な形に仕上げることを大事にしています。作品ではなく製品なので、同じ品質で数を作れるように、できるだけ丁寧に、かつ早くできるようにすることを意識しています。

河合

先ほど袴田さんにも描いていただいた家紋って、普段は意識しないですよね。でも、お盆や節句の時に提灯に描かれた家の家紋を見ると、自分も先祖代々繋がっていくメンバーの1人なんだなと、ちょっと厳かな、少し凛とした気持ちになることがあると思うんです。その一助になれればと思って、綺麗な仕事、いい仕事っていうのを意識しています。

それと、古い提灯の修理をするときに、先達のすごく素晴らしい仕事に感心することが多々あるので、「自分はまだまだ」と思いながらやっています。やはり安藤商店に頼んで良かったと思っていただくために、ちょっとピリッとした気持ちになれるような製品をお届けできるように心がけています。

袴田

お客様にご満足いただくだけでなく、自分が使いたくなる、使ってみたいと思えるものづくりをしたいと思っています。「ヘルスエアー®機能」搭載 循環ファンは存在を主張する製品ではありませんので、デザインで言えば、変な目立ち方をしない、空間の邪魔をしないようなもの。それと、寝室で使っていただいた時に眠りの妨げにならない低騒音のものを目指しています。

先達の力を感じながら
「自分はまだまだ」と
思いながらやっています

工程を俯瞰して見ることで
自分の役割を再認識する

ものづくりの工程において意識していることは何ですか。

河合

昔は今より分業制で、紋描きなら紋描きのみ、貼りなら貼りのみだったのですが、最近は一連の仕事を体験させてもらいすべての工程を知っているので、次の作業に繋げるために、いかに自分が失敗をしないか、次の人がやりやすいように仕事をするかというのを意識しますね。

浅野

綺麗に素早く仕上げることで、次の工程の方もやりやすく、早く進めていけるので。

袴田

私たち電機メーカーは企画、設計から試作、評価と続き、そして金型をつくって量産して販売していくのですが、いろいろな部門と役割分担して一緒に作り上げていくのは同じですね。やはりそれぞれの立場をしっかり理解して、独りよがりな設計にならないように、工作や成形の方たちの意見を取り入れながら、いいものができるように力を合わせていく、ということを意識しています。