職る人たち—つかさどるひとたち—

これからの暮らしを彩る、
ものづくりの若い力

ALART(アルアート)アルミ染色職人  千田 真大  × 三菱電機 静岡製作所(群馬工場内)ルームエアコン製造部給湯品質管理課  稲村 聡

#09 TSUKASADORU HITOTACHI

対談篇 後篇品質を支える
地道な積み重ね

(対談篇 後篇)

ものづくりの過程で生じる課題との向き合い方について、2人の対談は続きます。

試行錯誤が導く
最適解への道のり

工房での作業も拝見させていただいて、アルミ染色には「感覚的な部分」が多いと感じました。

千田

確かに色の違いを言葉で説明するのは難しく、記録を残しても毎回同じように染まるとは限らないです。だからこそ、試行錯誤しながら最適な色を見つける必要があります。染色を始めた頃、例えばムラになってしまったものに対しても、その時の自分は対処法がよくわからなかったので、1つ1つ潰していくしかありませんでした。時間はかかりましたが、自分の良くない部分を1つずつ細かく潰していった結果、うまくいく方法を見つけることができました。

稲村

私たちも新しい機能を加える時、設計や評価の基準が明確に決まっていないことがあります。例えば、お風呂のお湯を除菌する機能は本当に初めてだったので、どのような評価をするのか、どのような部品が良いのか何もない状態で、自分たちで仕様を1つ1つ決めていく必要がありました。その中でやはり課題が出てしまって、そういうところも千田さんがお話したように、1つ1つ解決していってようやく実現させることができました。

品質管理のエンジニアとして、アルミ染色の職人として、お二人は組織の中でどのように課題解決しているのでしょうか。

稲村

まずチームメンバーからこういう課題がありますという報告を受けて、詳細を一緒に確認します。そして、設計部門やソフトウェア開発部門などを交えて打ち合わせを重ね、解決方法を詰めていきます。三菱電機の中でも群馬工場はすごく小さな工場で、一致団結して乗り越えていくチームワークは良いと思います。

千田

アルミ染色の工程は基本ひとりで行いますが、作業の質と効率を高めるために他の工程の方と相談することはありますね。例えば染色の前にアルマイト処理を施す工程があり、治具という枠に部品を固定するのですが、いちばん被膜のつき方が良い固定方法を相談して、何度か試した上で決めるようにしています。

今回の工房訪問や対談を通じて、他にどのような気づきや発見がありましたでしょうか。

稲村

三菱 エコキュートはステンレス製のタンクなので素材は違いますが、スポット溶接も使われていますし、プレス機を使って鏡板と呼ばれる部分を作っているので、とても興味深く拝見させていただきました。独自の金属加工技術を有しているところも同じで、共通点が多かったなという印象です。

千田

自分が思っているよりも、エコキュートは見えない部分の進化が凄いと感じました。特に災害時のことまで考えて使いやすさを追求したことは、今回初めて知りました。ちなみにタンクはステンレスとのことですが、アルミが使われている箇所はあるのですか?

稲村

室外機の熱交換器の部分に熱伝導性の高いアルミのフィンが使われています。

お客様と品質を第一に
考えたものづくりを実現する

さらなる進化を目指して
―それぞれの展望

最後に、お二人の今後の目標についてお聞かせいただけますでしょうか。

千田

現在は別の担当が仕上げたデザインに対して、自分が染色をするという形が多いのですが、今後は、自分自身の対応の幅を広げていって、自ら発信していく存在になりたいと思っています。グラデーションの模様も、今までにない新しい見せ方ができるように、技術をこれからも磨いていきたいです。

稲村

お客様と品質を第一に考えたものづくりを実現するため、品質を確保するために必要な技術や知識をさらに身に付けたいと考えています。今後は「カーボンニュートラル社会」の実現とともに、「安全性」や「人々がすこやかに暮らせる社会」を未来に届ける活動、給湯事業のスローガンでもある<お湯で未来を沸かす>を、会社の仲間と共に進めていきたいと思っています。

本日はどうもありがとうございました。

美容師から染色職人へ。開発者から評価者へ。
異なる道を歩んできたお二人ですが、
前職の経験を糧にしながら、
品質を追求する姿勢は変わりません。
印象的だったのは、常に使用者の立場で考え、
目の前の課題に丁寧に向き合う姿です。
職人とエンジニア、立場は異なれど、
ものづくりへの真摯な思いは通じていました。
染め上がったアルミの美しさに見入る千田さん。
開発した製品が喜ばれた時の嬉しさを語る稲村さん。
技術の先にある、人々の暮らしを豊かにする誇りが、
お二人の言葉の端々から感じられる対談でした。