和食シリーズ企画第3弾

これからの和食を考える。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。

第11回 きゅうり
須賀川市民は260年続く
「きうり天王祭」で
夏本番を迎えます

福島県須賀川市で行われる「きうり天王祭」。
人口7万7000人の須賀川市で、
毎年6万人以上の人出がある、大きな祭りです。
地域の人たちにとって大切なこの行事に編集部一同で参加してきました。

「きうり天王祭」とは?

全国でも珍しいきゅうりの祭り、「きうり天王祭」。実行委員会代表の渡邉達雄さんは「私たちにとって、夏を迎える大切な祭り」だと言います。いったいどんな祭りなのか、そして須賀川市民にとって、きゅうりとはどんな野菜なのでしょう。祭りを通してきゅうりという身近な野菜を見直してみます。

「きうり天王祭」は「天王様」にきゅうりを2本供え、おはらいを受けた別のきゅうりを1本いただく。そのきゅうりを食べれば1年間無病息災で過ごすことができるー。そんな言い伝えがある祭りなのだとか。祭りの起源はどんなものだったのでしょう。

「いまから約260年前、江戸時代の宝暦年間に始まった祭りだと言われています。ある年にはやり病が起き、畑で獲れたきゅうりを神前に供えて祈願したところ、はやり病はおさまった。この故事にならってきゅうりを供える祭りが行われるようになったんだそうです。昔はこの日、奉納するまできゅうりを食べませんでした」
(きうり天王祭実行委員会代表渡邉さん)

「天王様」とは祇園精舎の守護神とも言われる「牛頭(ごず)天王」のこと。災厄よけの神様で、明治時代の神仏分離まで長くスサノオノミコトと同一だとされてきました。渡邉さんによると「きゅうりを輪切りにした形が天王様の御紋に似ているから」という説もあるのだとか。

きうり天王祭が行われるのは毎年7月14日。平日も週末も関係なく、毎年この日と決められています。平日に行われる年は、みなさん学校や仕事を終えてから祭りに参加します。

日が傾きかけた頃、市の内外から続々と人が集まってきます。きゅうりを供える「仮屋(かりや)」前から約1kmに渡って、町の目抜き通りが歩行者天国に。通りの両側にはおよそ180の露店が軒を連ねて大賑わい。

仮屋の前には子どもからお年寄りまで、きゅうりを2本持った参拝客が列をなしています。仮屋で2本きゅうりをおさめたら、おはらいを受けたきゅうりをいただきます。

夏の須賀川はきゅうり一色。市内にあるJAの直売所「はたけんぼ」の店頭にもずらりときゅうりが並び、市内はもちろん郡山など他市からも買い物客がたくさん訪れるのだとか。きゅうりが主役という伝統の祭りが、今も地域に深く根付いていることを感じる伝統の祭りでした。

2017.09.04