三菱電機グループの知的財産活動

戦略的知財活動

知的財産権の適切な保護は、技術の進歩や健全な競争を促し、豊かな暮らしと社会の発展に寄与します。三菱電機グループでは、知的財産を将来にわたる重要な経営資源と位置づけています。事業活動・研究開発活動・知的財産活動を一体として捉え、三菱電機グループ事業の成長戦略と連動し、事業や社会に貢献するグローバルな知的財産力を強化すると共に、知的財産権の保護に積極的に取り組んでいます。

知的財産部門の組織

三菱電機グループの知的財産部門は、本社知的財産部門と各製作所・研究所・関係会社知的財産部門から構成され、知的財産担当執行役のもと、知的財産活動を展開しています。本社知的財産部門は、全社戦略の立案、重点プロジェクトの推進、特許庁など外部機関への対応、知的財産渉外活動を担当し、各製作所・研究所・関係会社の知的財産部門は、全社戦略に基づく個別戦略の推進を担当しています。これらの知的財産部門は相互に連携、融合することで、より効果的な活動を展開しています。

事業・研究開発活動と知的財産活動をリンク事業・研究開発活動と知的財産活動をリンク

グローバル知的財産戦略

三菱電機グループでは、重点事業や重要研究開発プロジェクトと連携して知的財産の重点プロジェクトを設定し、今後の事業拡大が予想される新興国へも事業展開に先行して出願することで、知的財産活動のグローバル化を加速しています。また、米国、欧州、中国及び東南アジアの各拠点には知的財産活動を担う駐在員を置き、各国の事業拠点、研究所、関係会社の知的財産力を強化しています。こうした取組により、グローバルで強力な特許網の構築を目指しています。

三菱電機グループの知的財産力と知的財産活動のグローバル化を示すものとして、当社は、特許庁(JPO)発表の特許登録件数(2022年)で国内第2位に、世界知的所有権機関(WIPO)発表の国際出願上位出願人(2022年)で世界第4位にランキングされています。

この他、三菱電機グループでは、技術を機能とデザインの両面から保護するため、特許網の構築に併せ、国内外での意匠権取得活動を積極的に推進しています。

国際出願上位出願人(2022年公開出願件数)

順位 出願人 国名 件数
1 ファーウェイ 中国 7,689
2 サムソン 韓国 4,387
3 クアルコム 米国 3,855
4 三菱電機 日本 2,320
5 エリクソン 米国 2,158

(WIPO)

2022年特許登録件数(日本)

順位 出願人 件数
1 トヨタ自動車 4,559
2 三菱電機 3,692
3 キヤノン 3,382
4 デンソー 2,919
5 パナソニック 2,856

(特許庁)

三菱電機 海外特許出願の年次推移三菱電機 海外特許出願の年次推移

グローバル知的財産力の一層の強化グローバル知的財産力の一層の強化

Open Technology Bank活動

三菱電機グループは、サステナブルな未来の実現に向けて、知的財産を起点に社内外連携を推進する「Open Technology Bank(オープンテクノロジーバンク)」活動を2021年度より開始しました。従前は企業間の「競争」(独占実施、模倣防止、他社への権利行使等)のために知的財産を活用することが主でしたが、今後は社内外での「共創」推進ツールとしても知的財産を積極的に活用します。

■ 社外連携の推進

三菱電機グループは、家電から宇宙まで幅広い分野にわたり豊富に技術資産(特許、ノウハウ等)を保有しています。Open Technology Bank活動では、多様化する社会課題の解決に貢献する三菱電機の技術資産のライセンス提供を通じて、パートナー企業の新製品・新サービスの開発を支援し、三菱電機とパートナー企業との技術やアイデアの「掛け算」による新たな価値とビジネスの創出を目指します。脱炭素社会の実現、自然災害への備えといった各種課題の解決に貢献する技術をさまざまな業種・領域にライセンス提供することで、知的財産を起点に社外との「共創」を積極的に推進し、サステナブルな未来の実現に貢献します。

■ 社内連携の強化

積極的な知的財産活動の展開により、三菱電機グループの特許出願・保有件数は国内外で高い水準を維持しています。一方で、これまで各特許の実施は当該特許を出願した製作所に閉じているケースが多く、特許技術の社内横展開が十分とまではいえませんでした。そこで、部門の垣根を超えた技術活用を促進し、総合電機メーカーとしてのシナジーを創出するべく、当社特許を技術軸・社会課題軸で分類・可視化した技術マップを社内公開しました。このマップは、各特許の概要や発明者の所属部門・氏名などを参照できるように設計しており、この照会先情報を元に部署の垣根を超えた社内連携を推進します。

標準知的財産戦略

三菱電機グループは、グローバル市場における事業拡大に向けて国際標準化を進めています。国際標準化活動と連携した知的財産活動として、国際標準を支える特許(標準必須特許)の取得活動を推進しています。デジタル放送、MPEG、HEVC、ブルーレイディスク™※2、移動体通信では、標準必須特許ライセンスを一括管理する団体であるパテントプールに加盟しており、その標準必須特許群から得られる知的財産収入は事業収益の改善・拡大に貢献しています。また、国際標準を取り巻く競争領域における特許取得活動も併せて強化することにより、国際標準に基づく製品の競争力向上とシェア拡大に貢献する知的財産活動を進めています。将来普及が見込まれる第5世代移動通信システム分野では標準必須特許取得活動に加えて、技術利活用の視点から製品力を高める知的財産活動を併せて推進しています。

※2ブルーレイディスク™はブルーレイディスク アソシエーションの商標です。

知的財産権の尊重

三菱電機グループでは、自社の知的財産だけでなく、他者の知的財産も含め、お互いに認め、尊重しあう姿勢が必要であることを「倫理・遵法行動規範」に明記し、実践しています。他者の知的財産権を侵害すると「倫理・遵法行動規範」に反するだけでなく、高額なライセンス料の支払いや該当する製品の製造中止といった事業継続の上で大きなダメージを受ける恐れがあります。

三菱電機グループでは、他者権利の侵害を防止するため、技術者、知的財産実務担当者を中心に各種教育施策を実施し、他者権利尊重の意識を高め、製品の開発から販売に至るまでの各段階に応じ他者特許調査を実施する等の対応をルール化し、徹底しています。また、他者からの侵害防止活動についても積極的に取り組んでおり、特に模倣品対策では、社内での活動に加え、関係業界団体との連携、国内外の政府機関への働きかけ等、多様な活動を展開しています。

知的財産政策への協力

特許審査の迅速化・効率化、国際標準化活動、模倣品・海賊版対策や世界特許システムの構築といった知的財産政策は、公正な競争を促すと共に、豊かな暮らしや社会の発展に貢献します。

そのため三菱電機では、知的財産戦略本部や特許庁の政府機関、一般社団法人日本経済団体連合会や一般社団法人日本知的財産協会等の業界団体との活動を通じ、知的財産政策や関連法改正に関して産業界の立場から各種提言を行っています。また、経済のグローバル化がますます進展する現在において三菱電機は、世界知的所有権機関(WIPO)、海外の特許庁との積極的な意見交換や情報収集を通じ、よりグローバルな視点からの知的財産政策の確立に協力しています。