先端技術総合研究所と研究者の活動を紹介します。

2025年

【広報発表】「世界初、システム操作ログからオペレーターのノウハウを可視化する技術を開発」の広報発表を行いました。

操作ログを活用したDXシステムの開発イメージ 従来と今回開発した操作ログドリブン技術との
DXシステム開発工程の比較
開発メンバー

システム操作ログからオペレーターの経験や知見に基づくノウハウを可視化し、共有化することで、システムの運転管理・維持管理を高度化するDXシステム開発に活用できる「操作ログドリブン開発技術」を世界で初めて※1開発しました。

今回、システムの操作ログを可視化し、オペレーターがシステム画面に表示している信号の関連性から「同じ目的の操作フェーズ」を自動で抽出・可視化することができる、「操作ログドリブン開発技術」を開発しました。この技術はヒアリングだけでは把握しきれない操作の実態を収集・解析し、暗黙知を可視化できるなどノウハウを共有しやすくなり、技術継承を効率化するとともに、DXシステムの要求分析をより的確かつ短期間で実現できます。

また、DXシステムのプロトタイプを早期に構築し、その操作ログを本技術で取得して改良を繰り返すことで効率的にブラッシュアップが可能となり、DXシステムの開発期間の大幅な短縮に貢献します。

◆開発者から◆
データ分析で見つかった新しい発見を報告すると、「どのような手順で発見したのか?どうやったら他の人も発見できるようになるのか?」とよく聞かれるのですが、自分自身でも覚えておらず答えられないということがありました。開発した『操作ログドリブン開発技術』で操作ログを取得しておけば、このような手順を蓄積・解析・共有でき、類似な事例に出会ったときに役立ちます。また、過去に誰かがチャレンジしてうまくいかなかった手順を蓄積しておけば、他の人が再度同じことをしてしまうことも防げるようになると考えています(うまくいった方法は報告書に残っているのですが、うまくいかなかった方法は残っていないことが多いです)。

【広報発表】「東京科学大学とケミカルループ方式によるCO2還元技術を開発、実証試験を開始」の広報発表を行いました。

CCUシステムと実証試験する
ケミカルループ方式CO2還元技術の概要
開発メンバー

国立大学法人東京科学大学※1(以下、Science Tokyo)の環境・社会理工学院 融合理工学系 エネルギー・情報コース 大友 順一郎教授らと共同で、二酸化炭素(CO2)を還元※2して資源として活用可能な一酸化炭素(CO)を生成する、ケミカルループ方式※3CO2還元技術の実証試験を2月19日に開始しました。

今回、当社が保有する水処理システムや産業システムなど幅広い分野で培ってきた高度なシステム設計・制御技術と、Science Tokyoが保有する化学プロセス技術を融合し、独自の酸素キャリア粒子を用いた、ケミカルループ方式によるCO2還元技術を開発しました。

今後、2027年3月(予定)までの実証試験で得られる成果を活用し、CO2の回収から利用まで一貫して実現するCCUシステムの構築を目指し、さらに当社が取り組むE&Fソリューション※4と組み合わせて、カーボンニュートラルの実現に向けた工場などにおけるCO2排出量の削減に取り組んでいきます。

◆開発者から◆
東京科学大学様と二人三脚で、最初はほんのわずかな酸素キャリア粒子を時間をかけて手作りするところからスタートして、徐々にスケールアップしながら実証試験に至ることができました。昨今の異常気象などを踏まえるとカーボンニュートラルの実現は重要な社会課題であり、早期の社会実装に向けて引き続き開発を推進していきます。

※1国立大学法人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学との統合により、2024年10月1日に設立

※2物質から酸素が奪われる化学反応

※3酸素キャリア(酸素を運ぶための媒体となる物質)を介して還元反応と酸化反応を別々に繰り返し行う方式

※4Energy&Facility(エネルギー&ファシリティ)ソリューションの略称

PDFが開きますニュースリリース 2025年02月19日
東京科学大学とケミカルループ方式によるCO2還元技術を開発、実証試験を開始(PDF:518KB)

【広報発表】「プラスチックリサイクル向け「スマート静電選別」技術を開発、検証実験を開始」の広報発表を行いました。

「スマート静電選別」検証機の外観 「スマート静電選別」検証機の構成図 開発メンバー

当社グループが家電リサイクル分野で長年培ってきたプラスチックの静電選別技術に、各種センサーを組み込み、AIを活用することで、混合プラスチック片の組成の変化に応じて種類ごとに自動選別できる世界初※1の「スマート静電選別」※2技術を開発し、検証実験を2月19日から開始しました。

今回、「スマート静電選別」のキー技術となる、プラスチック片の選別前・選別後組成識別センサーおよび識別アルゴリズムや、プラスチック片の比電荷※3をセンシング可能な独自の比電荷分布評価システム、センシング結果に応じて選別機を最適な条件に自動制御するAI技術を開発し、これらを搭載した検証機を製作しました。

今後、「スマート静電選別」の実用化と市場への投入を目指し、あらゆるプラスチックの組成に応じて、専門知識やオペレーションノウハウがなくても自動で高純度に選別に向け開発と検証を進め、高度選別技術の導入拡大を通じてプラスチックリサイクル率の向上に貢献していきます。

◆開発者から◆
チーム6名一丸となって開発を進めた結果、発案段階から私たちが手掛けたスマート静電選別という概念を、ようやくこの検証機という具体的なかたちにできワクワクしています。この検証機でスマート静電選別が机上の空論ではなく本当にできることを早く証明したいですし、早く製品化して世の中に出していきたいと思っています。

【広報発表】「わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発」の広報発表を行いました。

開発した電磁誘導発電モジュール そよ風での発電(Movie)

自然界のわずかな動きや人の動作で効率よく発電する電磁誘導発電モジュールを開発しました。そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなどを利用した発電を可能とし、本モジュールを低消費電力(数ミリワット程度)の無線ICと温度センサーなどと接続することで、配線と電池交換が不要なIoTセンサーとしての活用が期待できます。

また、この発電素子を用いて床板の上を人が通過した際に発電する「床発電装置」を試作しました(世界初※1)。従来の圧電素子を用いた床発電装置の100倍となる200mWの発電が可能で※2、温度センサーと無線式の通信モジュールを接続した実証実験を行ったところ、一回踏む際の発電量で温度データを送信できることを確認しました。床板と発電素子は非接触であるため、従来の圧電素子の課題であった、継続使用による劣化が発生しない世界初の床発電装置としての活用が期待できます。

今後は、発電素子の形状や磁気回路の最適化を進め、さらなる発電量の向上を目指します。また、発電した電力を高効率に蓄電する技術と組み合わせて、電源に乾電池などの一次電池を利用しているIoTセンサーへの適用を可能にすることで活用の幅をさらに広げるとともに、一次電池の廃棄量削減による循環型社会の実現への貢献を目指し、開発を進めていきます。

◆開発者から◆
この開発は2020年度から先端技術総合研究所の自主テーマとして続けてきました。本開発の将来性に期待頂き、開発の機会を与えてここまでご支援くださった皆様にまずは感謝申し上げます。具体的な社会実装に向けた開発はこれからになりますが、大きい社会課題となっている気候変動対策や農業活性化のためのDX化に”ものづくり”で貢献できる将来性のある開発だと考えています。ニュースリリースを読んで「こんなことに使えそう」というアイデアがありましたら是非一緒に議論させてください!よろしくお願いします。

※12025年2月12日現在、当社調べ

※2当社試算。歩行を想定して、1秒間に二回踏んだ際の発電量

ニュースリリース 2025年02月12日
わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発

MEMSセンシング&ネットワークシステム展2025に出展しました。

1月29日から1月31日まで東京ビッグサイトで開催されたMEMSセンシング&ネットワークシステム展に出展しました。この展示会は、車載・自動運転、ビッグデータ、AI、ロボット、健康・医療、環境・エネルギーの分野にわたり、次世代センサーに向けた要素技術が集結し、産学官・異分野融合のマッチングを加速させ、研究・開発/製造・設計者が集まる場となっています。

先端技術総合研究所からは、「MEMS超音波センサ技術」、「赤外線イメージセンサ技術」「グラフェン光検出器技術」の3つの技術をデモ機や紹介動画を交えて展示しました。3日間多くの方にお越しいただき、たくさんの質問やご意見を伺うことができました。

◆開発者から◆
半導体を用いたセンシングデバイスは、普段直接目にすることはあまりないかもしれませんが、人やモノの動きや状態を計測・検知するキーデバイスだと考えています。新しいデバイスの開発は試行錯誤の繰り返しですが、その成果を展示会で多くの方に見ていただき、コメントを頂くことを楽しみにしています。今後も、社会課題の解決に向けてインパクトのあるデバイス開発に挑戦していきたいと思います。