各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進
生きものが来たくなる“よりみち緑地”を育成
静岡製作所の半径1km以内は、近年ではほとんどが工場や宅地となり、緑の多い土地は少なくなっています。しかし、製作所から離れると、東側の「有度山」や西側の「谷津山」「八幡山」のように、緑が多く、鳥類や昆虫類が利用している、自然豊かなエリアが残されています。
こうした環境を踏まえて、市街地によって分断された緑を飛び石のようにつなぐ“よりみち緑地”の整備に取り組んでいます。生きものがこの緑地を一時的に利用することで、緑の多いエリアを行き来しやすくなります。構内の生きものの状況を従業員が日々観察し、効果測定しながら、さらなる改善に取り組んでいます。また、鳥類が水飲み場などに利用できるよう、2024年6月に、工機工場北側のよりみち緑地にビオトープを造成しました。
同製作所では、この“よりみち緑地”をはじめ、構内で観察できた生きものをイントラネットで紹介しているほか、生きものに親しむイベントなどの開催にも注力。従業員に積極的に情報発信するとともに、生きものへの興味を喚起する取組みを続けています。
事業所所在地
〒422-8528 静岡県静岡市駿河区小鹿三丁目18番1号
主な取扱製品
冷凍冷蔵庫、ホームフリーザー、ルームエアコン、ハウジングエアコン、事務所・店舗用エアコン、空調・産業用コンプレッサー
主な取組テーマ
- ■“よりみち緑地”を整備 [B-4-(1)] [B-4-(2)]
- ■構内の生きものについて積極的に情報発信 [C-7-(1)]
[ ] 内は取組みテーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。
取組の特徴
- ■鳥類や昆虫類が、食事や休息などの際に一時利用できる機能緑地の整備を目指す
静岡製作所の活動テーマ
周辺の山々の緑をつなぐ“飛び石”のような機能を持った緑地を整備
静岡製作所は市街地の中に、古くからある工場で、構内緑地は広くありません。こうした環境下で、どうすれば生物多様性に寄与する活動ができるか検討し、地元静岡市の環境アセスメントセンター様に調査やアドバイスをいただいて、“よりみち緑地”を整備しています。
“よりみち緑地”とは、鳥類や昆虫類が、食事や休息などの際に一時利用できる機能緑地です。静岡製作所の東西にある山々は、市街地によって大きく分断されていることから、静岡製作所内の緑地を、周辺の山々の緑とつなぐ“飛び石”のような機能を持った“よりみち緑地”に整備することで、地域の生態系ネットワークの構築に貢献することを目指しています。
現在、構内の2か所に“よりみち緑地”を設置しています。いずれの緑地にも製作所周辺で生息が記録され、地域生態系を攪乱する恐れのない植物から、製作所内の環境に適した森林性・林縁性・草原性の植物、製作所内で生息を確認した植物や芽生え苗(幼木)を植栽しています。さらに、構外の土地の開発などで除伐されそうになった地域在来の植物を引き取り、導入しています。こうした工夫で周辺環境との連続性を持たせるとともに、在来植物の“避難所”の役割も持たせています。
よりみち緑地の機能を強化するビオトープを造成
2024年6月、よりみち緑地の機能を強化する目的で、工機工場北側の緑地内の約3×2mのエリアを掘削し、ビオトープを造成しました。造成に当たっては有識者のアドバイスも受け、場所によって水深に差をつける、形を均一にせず水の流れに起伏を生む、足場となるような小さな島を設けるといった工夫を盛り込んでいます。現時点では水棲生物などは導入せず、多様な鳥類が水飲み場や水浴びに利用できる場所として維持していく計画です。
また、池の造成に使用した石は静岡市内に所在する東海砿業株式会社様よりご提供いただいたものです。こうした地域企業のご協力もあってビオトープが完成しました。
池の周辺には新しく地域在来の樹木を植樹しました。これは、土地の開発に伴い伐採予定だった樹木の一部を譲り受けたものです。従業員とその家族の手で植樹するイベントも実施し、事業所内に取組みをアピールしました。
今後は定期的に専門家による調査と従業員による調査を行い、ビオトープを造成した効果を検証していきます。この一環として、ソーラー電力で稼働する自動撮影カメラも設置しました。
全社生物多様性保全ワーキンググループ
の開催と合わせて
ビオトープ開所式を実施
2024年6月、ビオトープ造成工事の完了に合わせて、年度中2回目となる生物多様性ワーキンググループ(WG)を静岡製作所内で開催しました。WGは各製作所から生物多様性保全活動を担当する従業員が参加し、優良事例などを共有するものです。今回はビオトープの完成記念セレモニーも実施し、取組みについて周知するとともに、そのねらいや工夫点などを発信しました。
当日は雨天となったため、最初に室内でテープカットを実施。その後WGにて、生物多様性活動の枠組みが世界的に「企業による価値創出」にシフトしつつある現状を踏まえ、三菱電機全体の取組みや今後の目標について意見を交換しました。
従業員が日々生きものを観察・記録して効果を検証
緑地の実際の利用状況を確かめるために、数年おきに外部専門家に生きもの調査を依頼するほか、従業員による調査を毎年実施しています。
自主調査の概要は以下の通りです。他の製作所の実績なども参考にしながら調査方法を考案し、チョウ類と野鳥について実施しています。調査時期は過年度の観察でもっとも個体数が多かった時期としており、今後も観察結果を踏まえて手法をブラッシュアップしていきます。
種類 | 調査時期 | 時間帯 | 調査方法 |
---|---|---|---|
チョウ類 | 10月 | 午前8時~11時 |
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野鳥 | 12月 |
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また、担当者たちが見かけた生きものについても随時記録しています。2021年4月からは、野鳥向けの水飲み場を設置し、モーションカメラでの記録も開始しました。今後も観察と記録を続け、設置の効果を検証しながら、より生きものが利用しやすい緑地づくりに向けて、適宜、改善を実施していきます。
希少種「マツバラン」の見守りを継続
2020年12月に実施した生きもの調査(植物調査)において、よりみち緑地内に、環境省レッドリスト2020で準絶滅危惧種に指定されている「マツバラン」が確認されました。事業所に飛来した鳥類などを介して、ここまで胞子が運ばれてきた可能性があります。
発見された場所の環境がマツバランの生育に適していると考えられたことから、これまで人の手を加えず見守ってきました。しかし、2023年10月に緑地近隣で工事が実施されることとなったため、これに先立って、比較的環境条件が近いと思われる場所へ植え替えました。
今後もマツバランの保護を継続していきます。
生きものへの興味を喚起する情報発信やイベントに注力
調査を通じて得られた情報は、他の環境関連のトピックとともに、従業員に積極的に発信しています。
構内で観察された生きものの種名や生態を「生きもの図鑑」としてまとめ、イントラネットで紹介しています。また、緑地関連の取組み内容を含むさまざまな環境トピックも発信しており、その記事の中では、構内で実施した環境イベントでのアンケート結果を掲載し、担当者からコメントを発信するなど、コミュニケーションの場としても活用しています。
こうした情報発信に加え、従業員が自ら参加し、楽しみながら生きものへの興味を育てられるような取組みにも注力しています。
2023年度は前年度に引き続き、「よりみち緑地」で収穫した植物の種を従業員に配布しました。また、5月には、静岡製作所の近隣住民を招いて行うイベント「サンサンフェスタ」でのイートインコーナーでも種を配布し、計80袋を持ち帰ってもらいました。これらの種をご自宅の花壇などに蒔いてもらうことで、よりみち緑地の輪を広げていきたいと考えています。
6月には前年度に引き続き3回目のクイズラリーを開催しました。前回開催時にアンケートで寄せられた意見を踏まえて、クイズラリーシートを紙媒体とWebフォームの2種類用意したところ、230名と、前年度(160名)を大きく上回る参加がありました。参加者からは「生き物や植物に興味がわいた」「緑地に行く機会が増えた」「今後もぜひ続けてほしいです」などの声があり、楽しく生きものについて学んでもらっています。
また、これまでクイズラリーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から個人単位で行ってきましたが、11月には、数年ぶりの実地開催イベント「よりみち緑地クイズラリーと秋の簡単工作」も実施しました。従業員とその家族を招いて、生物多様性について学んでもらったあと、緑地に出向いてクイズを解き、生物多様性への意識を深めてもらいました。このクイズラリーで緑地を散策する際、併せて工作に使用できそうな木の葉や枝を集めてもらい、終了後はそれらの素材を用いて、ランタンや写真フレームなどのお土産を作成してもらいました。参加者からは「子供たちが満足していてよかった」「またぜひ参加したい」などの声が寄せられました。
今後も、緑地を活用したイベントの開催を継続していきます。
マネジメントの声
よりみち緑地の取組みは、身近なところの自然を意識して何らかの関係性を持つという意味で、従業員にも良いきっかけになっていると思います。私自身も以前は草むらだったと聞いている場所に鳥がやってきているのを見れば感慨深いですし、自然に親しんでもらう目的で実施しているクイズラリーなどの参加者も年々増えており、着実に取組みは浸透しています。
ネイチャーポジティブ(自然再興:環境の回復・再生や環境との共生)などへの意識が高まるなか、世間と認識をあわせる意味でも意識啓発は不可欠です。三菱電機として30by30アライアンス※の自然共生サイトへの登録も目指しているところですから、目標達成に静岡製作所として貢献していくことも重要なテーマです。また、こうした外部の評価を得ることが、環境活動の進化や事業の拡大に向けた投資などを行う際の後押しにもなると考えています。今後も着実に活動を続けていきたいと思います。
静岡製作所 所長 小野 達生(写真左)
新型コロナウイルスの感染拡大で滞っていた従業員・地域住民参加型のイベントを2023年度から復活させることができました。特に子どもたちを招いて実施するイベントは、子どものうちから自然に触れていただくという観点で意義も大きい取組みですので、引き続き注力していく予定です。
さらに2024年度は、新たな取組みとしてビオトープを造成しました。よりみち緑地への取組みはもともと「環境保全」の意味合いが強いものでしたが、今後はこのビオトープを通じて、いわゆるネイチャーポジティブの実践にも貢献していきたいと考えています。よりみち緑地は緑地としては小規模ですが、だからこそ、小さなスペースでいかに緑地の質を高めていくかという点で貢献できることがあると考えています。
今回の植樹において伐採予定の地域在来種を移植するというアイデアは、専門家の協力も得て、従業員から寄せられたものです。今後も一人ひとりが「自然共生」という観点から何ができるかを考え、行動できるようになってほしいと思います。そのためにもタイムリーな情報発信を続け、興味の持続につなげていきたいと考えています。
製造管理部 部長 北村 幸弘(写真右)
当社グループでは、事業所の生物多様性保全の活動により、次世代に引継ぐ地域の環境及び人づくりの推進を目指しています。そこで当製作所は、構内にとどまらず周辺地域の環境に貢献することを意識し、周辺の山々の緑を飛び石的につなぐ機能緑地として“よりみち緑地”を整備してきました。
2016年に活動を開始してから、従来は見かけることがなかった鳥や蝶を構内で目にすることも増え、多少なりとも地域に貢献できているのではないかと自負しています。"よりみち緑地"で育った在来種の種が採取できるまでになり、その種を従業員が自宅で育てる活動が広がっています。
これからも地域への貢献を意識した活動を推進していくことはもちろん、より多くの人に生物多様性保全の輪を広げていきます。
製造管理部 環境工務課 課長 片瀬 憲一
※30by30アライアンス:2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するというG7目標の達成に向けて、環境省が事務局となって立ち上げたアライアンス。企業や団体によって生物多様性への保全が図られている土地をOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として認定し、国際データベースに登録する事業も推進している。
フォトギャラリー
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ヒヨドリ在来種
(2021年12月11日撮影)
ヒヨドリ在来種 -
ムクドリ 在来種
(2022年2月16日撮影)
ムクドリ在来種 -
ハクセキレイ 在来種
(2022年12月19日撮影)
ハクセキレイ在来種 -
メジロ 在来種
(2022年3月24日撮影)
メジロ在来種 -
ウラナミシジミ在来種
(2023年10月1日撮影)
ウラナミシジミシジミチョウ科シジミチョウ科在来種 -
ベニシジミ在来種
(2018年10月20日撮影)
ベニシジミシジミチョウ科シジミチョウ科在来種 -
ツバメシジミ 在来種
(2022年6月16日撮影)
ツバメシジミ在来種 -
ナミアゲハ在来種
(2021年7月12日撮影)
ナミアゲハ在来種 -
アオスジアゲハ在来種
(2019年5月9日撮影)
アオスジアゲハアゲハチョウ科アゲハチョウ科在来種 -
ヤブカンゾウ在来種
(2021年6月30日撮影)
ヤブカンゾウ在来種 -
ヤマハギ在来種
(2021年9月27日撮影)
ヤマハギ在来種 -
ムラサキシキブ在来種
(2021年12月3日撮影)
ムラサキシキブ在来種 -
マンリョウ在来種
(2021年12月3日撮影)
マンリョウ在来種 -
マツバラン在来種
(2023年2月22日撮影)
マツバランマツバラン科マツバラン科在来種 -
ノコンギク在来種
(2021年11月11日撮影)
ノコンギク在来種