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2011.1.22種子島 こうのとり2号機打ち上げレポート 2011年1月22日、H-IIB2号機ロケットが、こうのとり2号機を載せて種子島から宇宙へと飛び立ちました。絶好の打ち上げ日和となったこの日を迎えるまでに、種子島現地取材に赴いたDSPACE取材班にも様々なドラマが!

03 センターの歴史と地元の協力の巻

 種子島宇宙センターに打ち上げ取材に来るたびに気になるモノがあった。それはさびついたロケット施設。海に囲まれたセンターは潮風に晒され、水洗いなどのメンテナンスを欠かした途端、鉄は赤くさびついてしまう。だが、それらの施設は種子島の宇宙への挑戦の歴史を刻んでいる。「種子島を愛する男」、前所長の園田昭眞さんに案内して頂いた。

「種子島の歴史はここから始まった」小型ロケット発射場

 最初に訪れたのは、プレスセンターから近い「小型ロケット発射場」。種子島宇宙センターには3つの発射場がある。小型、中型。そして大型ロケット発射場だ(現在使われているのは大型)。種子島初のロケットが打ち上げられたのは小型発射場。1968年9月、気象観測用SBロケットだった。しかし現在残っているのは長さ約50mのレールと小さなブロックハウスだけ。なぜロケットなのにレール?「組み立てたロケットを移動発射体に乗せて射点まで運んでいくときに使ったものです」(園田さん)。このレールに乗ってLS-C型ロケット(技術開発ロケット)が射点に運ばれ、1968年から8機打ち上げられた。

小型ロケット発射場から1980年に打ち上げられたLS-Cロケット。
(提供:JAXA)

 少し離れたところに赤い発射台が見える(右段上から2点目) 。微少重力実験用小型ロケットTR-1Aの発射台だ。見学用に綺麗に塗装されている。斜めの発射台の角度を変える運転席つきだ。JCRロケット、TR-1ロケットもここから打ち上げられ、後のロケット用の技術データを取得した。

 園田さんが種子島で仕事を始めたのは1971年。小型ロケット発射時は小高い山に光学追跡(カメラ撮影)の施設があり、山道を約30分歩いて上った。だがロケットは一瞬で打ちあがり、園田さんは「初めての時は煙しか写らず失敗した」そう。ここは誰でも見学できる。倉庫には打ち上げられなかったJ-1ロケット2号機が今も眠っている(J-Iロケットの見学は残念ながらNG)。

日本初の実用衛星打ち上げー中型ロケット発射場

 次に訪れたのは中型ロケット発射場だ。日本で初めて「実用衛星を」「垂直に」打ち上げた場所。初打ち上げは1975年9月9日。技術試験衛星「きく1号」を積んだN-1ロケットだ。さらにN-II、H-I、J-1ロケットが飛び立った。その移動式組立棟が今も残っている。「NASDA」(JAXAの前身、宇宙開発事業団)の文字が残り、鉄の柱は赤くさび付いている。「使っている間は1年に三分の一ずつさびを落としてペンキを塗っていました。点検のため自分でも鳶職のように足場にあがったよ」と園田さん。廃墟のように見える組立棟、実は50年使えるよう基礎はしっかりつくられている。あと14年は使える計算だが・・。

中型ロケット発射場。奥が移動式の組立棟。手前の地面の円い跡は1974年、75年に打ち上げられたQ’ロケットの発射台跡。

 

打ち上げ前のN-1ロケット1号機。右に見えるのが移動式組立棟。発射前に組立棟が移動して 、ロケットが姿を表す。(提供:JAXA)

 園田さんは1999年3月まで所長を務め、退職された後も種子島に住んでいる。「熊本出身だけどここは第2の故郷。人もいいし気候もいい。ここから有人ロケットが打ちあがるのを見るのが夢。20年以内に実現するんじゃないかな」とその日を楽しみにしている。

打ち上げを支える地元の熱い協力者たち。

 さて、打ち上げ延期が決まった夜、取材班は南種子町の『伝説の店』を訪れた。宇宙関係者御用達の店、その名は「ジョイフル」。南種子町中心街から路地を一本入ったところにある。役場の石堂裕司さんに案内してもらい、木の扉を開けると、優しい笑顔のママさんが迎えてくれた。歴史を感じさせる店内の壁にはロケットのポスターがずらり。近寄って見ると「やったー!」「成功ばんざい!」などぎっしり喜びの声が書き込まれている。「打ち上げ成功の夜は貸し切り状態になります」とママさん。代々のロケット打ち上げ責任者が愛した店らしい。「では失敗したときは?」と恐る恐る訪ねると「ぱったりと来なくなって寂しいよ〜」とのこと。

お話を伺った石堂さん。南種子役場には、H-IIBロケットの成功を祈願した垂れ幕が掲げられています。

 ここで、石堂さんの話を聞く。南種子町の役場は毎回、打ち上げ時は忙しい。町とJAXAとで南種子町宇宙開発推進協力会をつくり、交通安全ボランティアや警察官と協力して見学場所の駐車場の整備をしたり打ち上げ中継の音声を流したりして見学客が楽しめる環境作りをしているのだ。2010年9月の「みちびき」打ち上げ時は長谷展望公園など3カ所の見学場所に4000人以上の見学客が訪れ、帰りは大渋滞になったそうだ。実は石堂さん、家で寝ころんでロケット打ち上げを見るのが一番好きらしい。ふすまを開けるとロケットが飛び立っていくのが見えるという。羨ましすぎる!