打ち上げ延期の間に行ったインタビュー第二弾は「こうのとり」広報官の内川英明さんです。宇宙に荷物を届けるための準備とは。そして打ち上げを見るときの気持ちは・・??
- 打ち上げが延期になりましたが、荷物への影響はありませんか?生鮮食料品を積み直したりしないのですか?という質問がDSPACEに寄せられていますが・・
内川:はい。宇宙飛行士の食料品は、常温で長期間もつものなので影響はありません。今回は種子島の水も積んでいますが、ヨウ素で殺菌して1年もちます。
- 「こうのとり」広報官の内川英明さん。HTVプロジェクトチームの主任開発員。
- 打ち上げは遅れても、ドッキングの日は変わらないんですね。
内川:はい。国際宇宙ステーションに7日間で近づく予定でしたが前半の日程を詰めます。打ち上げ後に「こうのとり」の飛行を監視し、コントロールするつくばの運用チームが少し大変になりますが、何度も訓練しているしやる気満々ですね。
- 頼もしいですね。ところで内川さんはいつ種子島に?
内川:約1週間前の1月11日です。「こうのとり」への最後の荷物の詰め込みがありました。私は去年の7月末から、1ヶ月の半分から三分の一は種子島に来て、組み立て作業や荷物の詰め込み作業を行ってきました。
- 最後の詰め込みって何を詰め込むんですか?
内川:たとえば、先に詰め込む予定が間に合わなかったものとか、生ものですね。生ものといっても生鮮食料品ではなくて、実験用の植物の種などです。今回、マレーシアやインドネシアなどアジア各国の種を積み込みますが、早く積み込みすぎると発芽してしまうので、ギリギリに詰めるんです。
- 先ほど、「種子島の水」の話が出ましたが、飲みましたか?
内川:ちょろっと舐める程度に(笑)。
- ホントですか!味はどうでした?
内川:ヨウ素が入っているのでうがい薬をものすごく薄めた感じ。昔の薬品くさい水道の水みたいですね(編集部注:宇宙で飲むときはヨウ素は濾過するので薬品の味はしないそうです)
- さて、打ち上げ後の「こうのとり」のみどころはなんでしょうか?
内川:一番の見どころはやはりドッキングです。それから今回、各国の貨物船が勢揃いします。ロシアの補給船プログレス、ヨーロッパの貨物船ATVが次々に到着する予定です。さらにスペースシャトルが予定通り2月25日(日本時間)に打ち上がると、日本の「こうのとり」と米国のシャトル、欧州のATV、ロシアのプログレスが一緒に国際宇宙ステーションにいる絵が見られる。ただ、誰がどうやって写真をとるかが問題ですけどね。
- スペースシャトル、こうのとり2号、ロシア、ヨーロッパの貨物船がドッキングしたときのISS(提供:NASA)
- それはスゴイ!楽しみですね。
内川:楽しみですが、宇宙ステーションが非常に混雑するのでNASAの仕切りが大変になる。みんな予定通り打ちあがるわけではなくて、遅れたりすると色々と作業が複雑になるんです。特に「こうのとり」の運用にはスペースシャトルが大きく関わってきます。
- どう関わるんですか?
内川:シャトルが予定通り打ち上がれば「こうのとり」のドッキング場所を宇宙ステーションの下側(地球側)から上側(天頂側)に移動します。シャトルの貨物室から荷物を取り出しやすくするためです。またシャトルの作業で出たゴミを「こうのとり」に積んで、大気圏で燃やします。ISSは廃棄物がすぐにたまりますからね。もしシャトルの打ち上げが大幅に遅れたら、「こうのとり」は先にISSから離れます。
- なるほど。ところで「こうのとり」3号の準備は進んでいますか?
内川:はい。もう製造が始まっています。これから1年に1回のペースで打ち上げます。
- 打ち上げの時ってどんな気持ちですか?
内川:初号機も種子島で見ていましたが怖かったですね。あれだけ大きいモノが載っているので、本当に飛んでいくのかなと。今回もきっとドキドキすると思います。